第5話 武の女神と神力

「連れてきたわ」


「おーう。なんか面白いことやろうとしてるらしいじゃねぇか」


 クロニア様が連れてきた人物が部屋の中に入ってくる。

 肩まで伸びた金髪ウェーブヘアーの美女。金色の瞳が僕を捉えていた。凄まじい胸部装甲だ。


「ログ君、紹介しよう。武の女神ウォーラだよ。戦いに関することであれば彼女にも加わってもらわないとと思ってね」


「ウォーラだ。よろしくな!ってさっきからどこ見てんだ?」


 ま、まずい!あまりにも見事過ぎてガン見していたようだ!


「ご、ごめんなさい!あまりにも見事なお胸様だったものでつい!」


「おお!?随分とストレートにいうやつだな?」


「ふふふ。わかる、わかるよログ君。ウォーラの胸は見事だよね!」


「男という生き物はなぜこう..」


 弁明するつもりがそのまま感想を述べてしまった。僕の言葉に同調したクレディオス様とそんな僕たちに首を振って呆れるクロニア様。


「正直な奴だな!よし。お前には私の胸様?をガン見する権利を与えようじゃないか」


「マジでありがとうございます」


 正直者は得をする。この女神様、大丈夫だろうか。やばい権利だけど超嬉しい。ガッツポーズだ。クレディオス様が羨ましそうに僕を見ている。


「馬鹿話はいいから続きを話しましょう。まったく..」


 クロニア様がジト目で睨んでくるではないか。


「そ、そうですね。最初から簡単に話していきましょうか」


「そ、そうだね。手間で申し訳ないけどウォーラにも理解してもらいたいからもう一度お願いしてもいいかな?ボクらも補足をしていこう」


 ということで、改めて僕はウォーラ様に自分の自己紹介をし、この時代にやってきたところから話始めることにした。



***



「私はやられちまったのか..マジかよ。魔神ってのはそんなに強えのか..」


 ウォーラ様は僕が話している間は特に口を挟むこともなく、真剣な顔で聞いてくれていた。一通りウォーラ様がくる前までの内容を話終えると俯いて、呟き始めた。

 ショックなんだろうな。武の女神というくらいだから責任を感じているのかもしれない。


「..いいね」


「はい?」


「滾る..滾るじゃねぇか!そんな強ぇやつが来んのか!」


「え」


 ゴオッ!とウォーラ様を包むように青白いオーラのようなものが迸っている。どうも責任を感じているわけではなく、昂ってらっしゃっただけらしい。某戦闘民族みたいな神だ。


「クレディオス様、なんかウォーラ様の周りに何か迸ってるんですが」


「そうそう。これがボク達がもつ神力だよ。説明が省けたね。まあ、普通はウォーラみたいにこんな迸るように周囲に放出なんてされないんだけどね」


 さすが武の女神である。この状態は普通ではないらしい。あとはこの神力という力が魔力のように身体能力に作用しているのかとかだよな。魔力は体に持っているだけで身体能力を底上げしていた。人族が魔人族に虐げられていたのも魔法だけでなく、そもそも魔力がないだけで身体能力で大きく劣っていたためだ。


「この神力は例えば身体能力を底上げするとか何か力として作用してるんですか?」


「そうだね。神力はいま君が言ったように身体能力を強化することができるよ。どれだけ神力を宿しているかで強化度合いも違うんだ」


 ばっちりだ。魔力と同じ仕組みだね。


「試しにログに神力を宿してみたらどう?体感出来るんじゃない?」


「確かに。ログ君、どうだい?」


 クロニア様がそう提案し、クレディオス様が聞いてきた。


「ぜひ!どんな感じになるのか、体験したいです」


「じゃあ、早速」


 クレディオス様はそういうと僕に近づき、おへその少し下あたりに掌を当てる。触れられた瞬間、温かい何かがお腹の中に入ってくるのを感じた。これが神力?温かい何かはおへその下を中心に全身を巡るように広がっていく。


「ねぇちょっと..クレディオス様?」


「よしっと。これでログ君も神力を扱えるはずだよ。『世界教典アカシックレコード』を使って一般的な事象とすることも出来るけどまずはログ君だけに施してみたよ」


「おお、なんかぐるぐると今まで感じたことのない感覚が身体中を巡ってます」


「それが神力さ。そうだな。試しにそれを足に集めることを意識してジャンプしてみなよ」


 クロニア様が何か呟いてたけど..とりあえず!僕は足に神力が集中するように意識する。熱が足に集まっているのを感じるぞ。屈むように体勢を落とし、膝に力を溜めて一気に真上に跳躍する。

 ドンという音と共に僕は自分の想像を超える高さまで一瞬で跳躍していることに気付いた。え?これ5m以上飛んでるよね!?


「うおっ!?え?や、ばい!これ、どうやって着地をーー!?」


 想像していなかったことに落下しながら手足をばたつかせてしまう。この高さから落ちたらまずい!


「何やってんだまったく。しょーがねぇ奴だな」


 恐怖で目を瞑った瞬間、そんな声が聞こえ、目を開くと空中でウォーラ様が抱えてくれる。そのまま抱えられながら地面に着地した。


「こうやって神力を足に巡らせながら着地すれば衝撃なんて緩和出来るんだよ。覚えとけよ」


「あ、ありがとうございます..」


 ウォーラ様はそう僕をお姫様抱っこしながら説明してくれる。くれるのだがお胸様が僕の腹の上に乗ってるんですが。非常に情けない状況だけど、非常に嬉しい体験だ。


「ログ君、ごめんね。ボクらにとっては当たり前の感覚だったから説明が不十分だったよ」


 クレディオス様が心配そうに話しかけてくれる。ウォーラ様に地面へ降ろされながら僕は大丈夫ですと返事をした。


「これなら僕が考えている仕組みにバッチリ合います。クレディオス様、この力を人族も得られるようにしたいです。ただ、保有する量に法則を設けたいんです。まず、強さに段階を設けて成長出来る形に。あくまでも自然にこの力を浸透させるために生まれの強弱などはあってもいいと思います」


「ほうほう。段階をね。成長するというのがポイントだね?」


 僕はこの神力保有量にレベルの概念を加えたい。レベルで成長するっていうのはゲームのようだけどあくまでも絶大な効果を発揮する神力に関してのみの概念でいい。

 日々の努力を無かったものに出来るくらいの力が神力にはあることがわかった。人族に平等に同じ量の神力を与えるのは急激な変化すぎてよくない気がする。だから身体能力の成長やトレーニングによる強化と同じように段階を設けて成長する形がいいと思うんだ。


「はい。段階、階位と呼びましょうか。最高位を神様達の階位として定めて、そうですね。全部で十二階位とかどうでしょう。階位が上がるごとに下位で保有していた神力量の倍を保有出来るようになる。成長するかどうかは個人の行動次第という形にしたいんです。どうでしょうか?」


 僕は階位の考えを神様達に伝え、一度ここでクレディオス様、クロニア様、ウォーラ様に意見を聞いてみることにした。


「うん。いずれにしても人族にとっては大きな変化だからね。いいと思うよ」


「成長するというのはそれ以外にも目的があるのかしら?もともとはログの世界の遊戯から着想を得ているのでしょう?気になるけど、ひとまず私も賛成」


「直感だがお前と組んだら面白しれーこと出来そうだな。とりあえず手伝ってやるよ」


 よし。これでどんどん進めていけそうだ。


「ありがとうございます!まずは基本となる部分はこんな感じですかね。クレディオス様、これからどのように進めていけばいいでしょうか?」


「そうだね。『世界教典アカシックレコード』に事象として登録すればこの世界に反映されるよ。登録はボクを含め、その事象に関連する神達が行う必要があるんだ。だからこの先考えている仕組みがここにいる神以外の力が必要な場合は協力をお願いする必要がある。説得にはボクももちろん協力するけどね」


 たしかに。魔法のような力とかは別の神様の力が必要だよな。


「なるほど。じゃあ、『世界教典アカシックレコード』に登録する前に考えている仕組み全部を準備してから登録するほうが良さそうですね」


 完成途中で登録して、途中で出来ませんでした。では話にならないし。さーて次は定番、能力の可視化だな!

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