第4話 異世界の知識

 現状の人族と『世界教典アカシックレコード』。未来を変えるには神様達に未来で起こることを伝えるだけでは不安だ。


「ほう!何かいい方法があるんだね?どんな方法なんだい?」


 クレディオス様が期待の眼差しを向けてくる。


「結論から先に言うと、人族に強くなってもらいたいです。これから起こることを神様達に伝えただけでは足りない気がするんです。まず悪魔達だけでもかなりの数が存在します」


 クレディオス様とクロニア様は真剣な顔になり、


「..そうだね。君に未来を教えてもらったとしても確実とは言えない。圧倒的に戦力が足りないと感じるね」


 やはり厳しいと感じられてらっしゃるようだ。


「最初に言っておくとボクの『世界教典アカシックレコード』は外部の世界の存在には直接影響を与えることは出来ない。あくまでもこの世界の環境を通じて間接的な形での抵抗になってしまう」


「魔神もおそらく自分の『世界教典アカシックレコード』を所持しているでしょうから環境だけではあまり有効な手立てではないでしょうね」


 クレディオス様とクロニア様が見解を教えてくれる。なるほど。やっぱり古文書で調べた歴史の分岐点を理解してそれを神様に伝えただけでは不安が残る。

 魔神と72名の悪魔達。多勢に無勢過ぎるんだ。この世界に多くいる人族に協力してもらい、みんなで対抗するしかない。


「やはり人族にも強くなってもらう必要がありますね。そこでです!僕にはまだお二人にお話ししていない事があるんです」


「ほう!非常に気になるね!ぜひ教えてほしいな」


「僕の事についてなのですが、実は僕にはこのウォンダで生まれてからの記憶以外にウォンダとは違う世界で生きていた時の記憶があるんです」


「「…..」」


 あ、まさか冗談と思われている!?確かに突拍子も無いことを言っているか..こんな話を信じるなん..


「..ちょっと一瞬驚いてしまったけど、そんな嘘をついても君に得はないよね」


「そうね、ログにメリットなんてないわね。信じましょう」


 よ、よかった。案外すぐに信じて頂けた。


「し、信じていただいてありがとうございます。実は僕、地球という星で生活していたんです。理由はわからないのですが、その世界で死に、気づいたらウォンダのログとして生きていました」


「なるほどね。神であるボクからすればそんな驚くことではないよ。そんなことも起こり得るんだろうと理解できる」


 さすが、創造神様。転生という事象は神様からすればそこまで珍しいものでは無いのかもしれない。まあ、ラノベとかでは転生させるのは神様というのが何かと鉄板だ。


「地球という所について、非常に興味をそそられるけど、まずは君の話の続きを聞きたいな」


「はい。僕のいた世界では色々な娯楽が発展してまして。その中で仮想環境の中で人を育てて敵と戦わせるといった遊戯があったんです。その遊戯で特徴的なのは効率的に人を強くする仕組みが取り入れられていることです」


 僕は早速、前世で好きだったRPGゲームについて、わかりやすい言葉で説明する。

 そう。僕はRPGゲームの要素をこの世界に取り入れてもらおうと考えている。


「この効率的に人を強くする仕組みとクレディオス様達と『世界教典アカシックレコード』の力があればウォンダに現実として取り入れることが出来るのではと」


「なるほど。どんな仕組みかはわからないけど、今のウォンダにいる人族達に力だけを授けてもしょうがないと」


「はい。必要のない力を与えても使う意味が今のウォンダには無いですよね?」


「今はないね」


「力だけあっても使わなければ戦う力は成長しないかと思います。これから先、魔神が攻めてくるから強くなりなさいといっても今の人族がどのような反応をするのか、そもそも理解をしてくれるのか、僕にはわからない。なので力を与えるにしても必然性がないとダメかと思いまして」


 今のウォンダは平和だとクレディオス様は言っていた。ということは人族にとって今以上の力は現状必要ないんだ。

 そんな状況の人族に目に見える目的もなく、力を突然与えたところで混乱が起こるだけではないだろうか。あまりにも効率的ではない。


「その仕組みは必然性も兼ねているわけだね」


「はい、元は遊戯の仕組みですから。人族にはこの仕組みに夢中になってもらい、自然と強くなってもらいます」


 クレディオス様とクロニア様は僕の説明に納得してくれるように相槌を打って聞いてくれている。


「と、ここまでで一旦お二人の意見を聞きたいです。ウォンダにこの仕組みを取り入れることについて、どうでしょうか」


 僕は一旦、クレディオス様とクロニア様の意思を確認することにした。考えは話始めているけど、ウォンダにこの仕組みを取り入れるには神様の協力が不可欠だ。


「そうだね。ボクに否はないよ。この世界を守るためにはよりよい方法を取りたいし、君の異世界の知識はボクらでは思いもつかない方法のようだ。何より楽しそうだよ!」


「クレディオス様、最後の本音が漏れているわよ..まったく。私も協力するわ。ログの考えには納得よ」


 クレディオス様とクロニア様が同意し、協力を申し出てくれた。よし!このウォンダの、神々と人族の未来を明るいものにするためにゲーム知識をフル導入してやる!


「クレディオス様、クロニア様、ありがとうございます!この仕組みは力の定義や法則を作り、それを活用することで得られる利益までを考えることが重要です」


 クレディオス様とクロニア様は頷く。


「なのでまずはどんな力を人族に与えるかを考えないとなのですが、今ウォンダには先ほど僕がお話した魔神や悪魔が扱う魔法を使うための力、魔力みたいなものは存在するのでしょうか?」


「んー。まったく同じものではないだろうけど、ボクたち神々がもつ神力がそれに当たるのかもしれないね。人族は有していないけれど、この神域には神力が満ちているんだ。ボク達神々の力の源だね」


 神力。なるほど。たしかに魔力のようなものかもしれない。これをベースに色々と考えていこうじゃないか。


「では、その神力を基本に法則を考えていきたいです」


「了解だよ。あ、話を進める前にあの子もここへ呼ぼう。クロニア、呼んできてもらえる?」


「そうね。戦う力ということであれば必要ね。ちょっと待っていて」


 クレディオス様がそう言うとクロニア様は誰かを呼びに部屋を出ていった。あの子か。戦う力に関係しているなら古文書にも記録されていたあの神様しかいないよな。


 僕はこれから邂逅する新たな神様を想像しながら、これからの構想を整理するのであった。

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