第7話 帰宅後の作業

「戻りました〜」

もう夜中なので、帰りの挨拶は小声で。

部屋に戻っても良かったけど、普通にお腹が空いているのでそのまま食堂へ向かった。


「うーん、何もない……」

普段なら『おやつにどうぞ』みたいな感じでちょっとしたお菓子とか置いてあるのに。今日に限って残っていなかった。残念。


「うー、今から料理したく無いよぉ」

でも、出来合いのものが何も無い以上、自分で作るほか無い。

なるべく楽に作れるもの、匂いもあんまりないやつ。匂いを消す魔法もあるけど、面倒くさいし。

なにか無いかな?


「……あ」

余りのパン発見。もうバターでも乗っけて砂糖かけて焼くか?

でも、甘いもの食べる気分じゃ無いんだよな。

他に何か……。

「おー、パスタ」

良いかも。とはいえ、パスタだけあってもね。ソースとか具が無いと。

更に棚をゴソゴソ探してみると、なんとトマトを発見。

トマトは嫌いじゃないし、適当に潰してかけとけばいい感じになるだろう。


パスタと一緒にトマトを突っ込み、トマトを直ぐに引き上げて皮剥いて潰す。適当に塩とコンソメをぶち込み、茹で上がったパスタを湯切ること無くぶち込む。


「あ、美味い」

雑に作った割には意外と美味しかった。もう疲れて丁寧に食べるのも面倒臭くて、ズルズル啜って食べる。行儀が悪いとか知らん。一人だし。


「あ、なんか食べてる〜」

「うん、なんか食べてるよ〜」

匂いに釣られてユヅが起きてきた。

「うーん、姫様、帰ってくるのが遅いんですよぉ。せっかくお掃除したのに。何やってたんですかぁ〜」

「あはは、ごめん。革命者のことでね。明日からはかるーく勉強とか見てあげたり、魔法とか教えてあげるだけだから多分早いよ」

「ホントですかぁ〜?あ、一口ください」

「はいはい」

ユヅにひとくちパスタをあげて、さっさと食べ切ってしまう。


「あれ、姫様。まだ寝ないんですか?」

「うん。革命者……ことちゃんの杖作らないと。昨日はいっぱい寝たから大丈夫だよ」

皿は水につけておいた。元気になったら洗おう。


「よし、頑張るか!」

もう気合入れないとやってられない。


杖のベースの素材は魔石銅。軽い上に魔力伝導率が高い、初心者にはうってつけの素材だ。別にそこまで高く無いし。

後は魔石銅に錆止めを塗ったり、上手いこと加工したり魔石を埋め込んだり。色々やる事は多いけど、頑張るしか無いか。

素材とか工具とかを作業台に乗せ、いざ作業開始。


まずは魔石銅の形を決めるところから。

よく見るのは棒状だし、それがスタンダードな杖なんだけど。持ち手作ったほうが良いよね。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

うん、錆止め塗れた。乾くまで時間あるし、魔石加工しておこう。綺麗な宝石みたいにすれば、ちょっとはテンション上がるよね。


どういうカットにしよっかな?魔石は5、6個埋め込むつもりだし、バランス見て決めてけばいっか。

取り敢えず真ん中の一番大きいのはペアシェイプカットにして、周りを囲むようにラウンドブリリアントカットのやつを設置しよう。


魔石のカラーは透明だけど、地の魔石銅の色が綺麗な桃色になったからきっと可愛い。ついでに、貝殻シェルとか真珠パールとかも埋め込んでおこう。おまじないに効果あるし。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


杖を削って、魔石達を埋める。

杖の上部が、一気に華やかになった。

「うん、可愛い!」

杖の長さはだいたい60センチ。リボンとかかけちゃお。

ついでにクローバーと蔓の模様で魔法陣を彫って、完成!


「あー、頑張った!いい仕事した!お風呂は明日の朝で良いや!」

もう歯だけ磨いて寝よう。

そう決意して、ふらふらと作業場を後にした。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る