第2話 自己紹介と幼馴染
「こ、こほん。そ、それでは、気を取り直して、自己紹介でもしましょうか」
他のクラスがホームルームを終えて帰った頃、ようやく気絶していた人たちの目が覚めて、自己紹介が始まった。
「まず、私からですかね。1年4組の担任になりました。
先生がまず自己紹介をする。
自己紹介って最初にした人がテンプレートになりがちだよね。そういう点で先生が最初に自己紹介をしてくれたのはありがたい。変な無茶振り飛んでこないからな。
「それでは一番の人から順番に自己紹介をしてください。名前と趣味くらいで結構ですので」
そしてクラスメイトの自己紹介が始まった。まぁ、名前覚えるの苦手だからなんとなく聞いてた部分はあるが。
お、そろそろ次、俺の番かな。出席番号一個前の人のくらいちゃんと聞いとくか。
仲良くなれそうな人だと良いな。
「
部屋の空気が一瞬で冷えかえる。
いや、たしかにテンプレートには乗っ取って居るけれども!
それ以外の要素が強すぎるんだわ。後の俺の気持ちを考えて!?
馬鹿と天才は紙一重ってマジだったんだな……
それにしてもなんだよ、白銀之堕天使って。文字にしたときに読みづらいだろ。読者の気持ちを考えろってお母さんに習わなかったのか!?(習ってない)
極寒の空気の中、次の自己紹介は最悪なことに俺である。
「え、えー。
周りから一切の反応がない。そりゃこうなるよな。前の人やばかったもん。
それから、白銀之堕天使(峠崎千波)の自己紹介インパクトを消しされるようなやつは誰もおらず。
冷えた空気を解消しようと一発ギャグをして撃沈していったやつもいた。南無南無……
地獄のような空気が流れる中、次に番が回ってきたのは……
「
空気は変わらず地獄のままだ。
本日三回目の葉狼さんのお話。流石にクラスメイトも慣れたか……?
「はわわわわわ、趣味まで素敵だなんて……」
「こんなに美しい声が何回も聞けるなんて、も、もしかして今日が命日…?」
「王子様が、私とお近づきになりたいって!い、いけませんそんなの、はわ、わわわわ……(昇天)」
と一瞬でも思った俺が馬鹿だった。このイケメンレベルに一日程度で慣れるわけなかったわ。何回食らっても即死である。
なんか凄い勘違いしているやつが居る気もするが、ま。気のせいだろう。
俺でさえ、一年くらいは脳焼かれ続けてたからな……流石に克服したけど。
そんなこんなでその後の自己紹介もある意味地獄だった。
冷え返った空気というのは改善されたが、
その後の自己紹介で「将来の夢は葉狼様のお嫁さんです」と言った人がなんと三人。
わー、モテモテで良かったね(棒)。流石の葉狼さんも苦笑いだった。
そうして、無事(?)に一日目の学校が終わったのである。
放課後。俺は葉狼さんに話しかけようとした。したさ、そりゃ。だって初恋の相手でここまで勉強頑張った要因だもの。
葉狼さんは中学受験したから学校が別だったし、「三年間どんなことしてたの?」とか聞きたかったさ。
でも無理だったの。周りに女子のバリケード出来てるから。
なんなら、他のクラスより圧倒的にホームルームは終わるの遅かったのに、どこで待ってたのやら他クラスの女子まで駆けつけてて、クラスがぎゅうぎゅうである。
明らかに定員オーバー。誰かが転んだら死ぬんじゃないかな。
……うん、今日は諦めよう。どうせ同じクラスなんだ。落ち着いたときにでも話せば良い。いつ落ち着くのか知らんけど。
俺はバックを背負って逃げるように教室から立ち去ることにした……
「もう遅かったじゃない。待ちくたびれたわ!!!」
昇降口に向かうと一人の女子が俺のことを待っていた。
「
「一緒に帰る約束してたのに、長かったから文句言ったんじゃない!何か言い訳はないわけ!?」
「いや、マジですまん」
俺は急いで愛彩に事の顛末を伝えることにした。
話し終えると愛彩の目の色は怒りから同情に変わっていた。
「来夏は相変わらずね……小学校の時と一ミリも変わってないじゃない」
俺と、葉狼来夏、そして
まぁ、葉狼さんとは然程親しかったわけではないが、元々家が近かったこともあって三人で遊んだりするくらいの仲ではあったのだ。
「引っ越してからしばらく会ってなかったから、少しは衰えてるかと思ったけど……王子様は健在ってわけね」
「う〜ん、寧ろ酷くなってたような気がする」
「そうね、入学式は正に地獄だったし。あたしなんて途中で体調悪くなって、外出てたんだから」
まぁ、うん。確かにあれは酷かった。ほぼライブだったもん。あてられて気分が悪くなったとしても仕方ない。
「というか、氷真的には大丈夫なの?来夏もっとモテモテになったってことはライバル多くてしんどくない?」
「ぶっちゃけしんどい。今日も近寄れなかったし」
「だろうね、ちなみにもうファンクラブ出来てるらしいよ」
「マジ?」
「まじまじ。これから過激派が増えたらもっと近づき辛くなるかもね」
「え、マジかよ!!!やばくないか!?折角入ったのに三年間話せずじまいなんて俺は嫌だぞ!!!」
「じゃー、頑張りなよ。ほんとにそうなっちゃうかもよ」
そう言って愛彩は歩き始める。
「ち、ちょっと、待ってよ。何かアドバイスとかないのか!!同じ幼馴染として」
愛彩は少し顎に手をあてて考える素振りを見せたが、
「やだね!教えてあげない」
「え!なんでだよ!!応援してくれるんじゃなかったのか!!」
「うん、まぁ、応援はしてたよ。馬鹿な氷真が勉強する気になってくれたからね。でも付き合わないほうがあたしにとって都合がいいんだ」
「どういう意味だよ」
愛彩はいたずらっ子のようにクスッと笑って、
「幼馴染二人がリア充で、あたしだけなんもないとか最悪じゃん?来夏はモテモテでどうせ引き止めるの無理だから、せめて氷真は道連れにしようと思って」
「なッ…!!」
「なんならあたしが来夏と付き合っちゃおうか。そしたら氷真がボッチだね」
「愛彩!!!!ひどいぞ!!!」
怒って拗ねる俺を愛彩はずっとおかしそうにケラケラ笑っていた。
後日、俺が愛彩にアイスを奢ってもらうと言うことで話は決着した。
その時、愛彩に
「アイス一本で機嫌治るとかちょろ!」
と言われ、また喧嘩になったことは別のお話。
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