第3話 白銀之堕天使という女
昨日は延期された入学式が執り行われた。
一応、俺はその日も葉狼さんに話しかけようとはしたが、前と同じように女子バリアに守られており(なんなら増えてた)断念した。
女子の団結力、怖い。
そして今日からようやく授業の開始である。
ようやく、というには入学式から然程時間は立っていないが、密度の濃い二日間だったから、時間間隔がおかしくなっているようだ。
それにしても名門校の授業どんなもんかね……やっぱムズいよな。嫌だなぁ……
ま、それでも合格はしたんだしなんだかんだいけるっしょ!
……とまぁ、始まる前は余裕ぶっこいていた俺なわけだが、始まって分かった。
あ、だめだこりゃ。
いや、そもそも俺は地頭が良くないのだ。死ぬほど勉強して頭に詰め込んでようやく(おそらく最下位)受かったレベル。今もう一回受けてもう受かることはないだろう。
まぁ、つまり何が言いたいのかと言うと、
ついていけるわけがなかった。
やべぇ、やべぇよ!葉狼さんがどうこうとか言ってる場合じゃねぇ!
そもそも留年したらどうしようもない!
同じ学年、同じクラスでも話せていないのに、留年したら話せる確率は限りなくゼロに近づく。そ、それだけは避けなくては!!!
俺は先生の話に意識を集中させる。
わからん……でもわからねば!!!!……
キーンコーンカーンコーン♪
結局何もわからなかった。
もう駄目だぁ、お終いだぁ!(迫真)
「どうした、この世に絶望したような顔をしているぞ」
半ば放心状態にあった俺に声がかかる。どなた?自慢じゃないが今の俺はこのクラスに友達がいない。なんなら名前も覚えていないのだが……
「ゲッ」
その人は俺でも知ってる有名人だった。
「私の問いかけにその反応とはいい度胸だな。自己紹介を聞いていなかったのか?」
聞いていたからこの反応なんだよ、とは言えるわけもなく……
「えっと、
と全て言い終えるまえに手で口を塞がれる。
え、何、怖いんですけど……!!!
「その名で呼ぶなと言ったはずだ。私のことは
あ、はい。そうでした。すいません。
「えーと、じゃあプラチナさん」
「略すんじゃない!白銀之堕天使だ!!!」
くっ、駄目だったか!ぶっちゃけ白銀之堕天使って毎回言うのは怠い。しれっとあだ名で呼んでみたが駄目か……こうなれば
「白銀之堕天使さん、よく考えてほしい。お前は、闇の組織とかいう奴等とその名前で戦っているんだろう?」
「あぁ、それがどうかしたか?」
「もし、俺たちがお前の事を白銀之堕天使と呼んでいたら敵はどう思う?そう!白銀之堕天使の仲間だと思うだろう。そうなると、なんの罪もない生徒に闇の組織が危害を与えかねない」
峠崎さんがハッっとした表情になる。よし、もうひと押しだ。
「もうすでにやらかしてしまったことはしょうがない。だから、偽名の偽名を名乗らないか?」
「偽名の偽名、だと?」
「そうだ。真の姿の峠崎千波、闇の組織として戦うときの白銀之堕天使、後もう一つ生徒としての名前を作るんだ。そしたら、闇の組織にバレずに生徒になりきることができる」
「なるほど……それでプラチナか…ふむ……」
さて、やれることはやったぞ。これでどうなる……?
顎に手をあてて考えている峠崎さんを見て無駄に緊張する。なんだろう、作った料理を審査されているようなそんな感覚。
そして、暫くの時間が経過して、峠崎さんが口を開いた。
「
勝った!!!思わずガッツポーズを取りそうになる体を押さえつけて、表情を保つ。
良かった、峠崎さんはちょっとアホの子だ。扱いやすい。
「ふふふ、そうだろ?というわけで今度から俺はお前をプラチナさんと呼ぶけど良いか?」
「あぁ、あぁ!構わないとも立花。君のお陰で大切なことに気がつけた。感謝する」
「良いってことよ。プラチナさんはいつも頑張ってるからな」
何を頑張っているか知らないけど、取り敢えず適当を言っておくことにした。
「お礼がしたい。私にできることなら手伝おう」
え、えー。そんなこと言われても……この子が絡むともっと悪化しそうな気がしないでもないんですが……?
「い、いや、特に何もないですよ?」
「嘘をつけ。先程、なにかに絶望したような顔をしていたじゃないか。……もしや、闇の組織の被害にあったりしたのか!?」
「いや、違う違いますから!あんまり大声で叫ぶのはやめて!!」
周りの視線がこっちに向く。プラチナさんが闇の組織などと大声で言うものだから、俺まで
と、取り敢えず、ここは本当の事を言って話題を逸らすか……
「いや、な。俺勉強が苦手で、特に数学が苦手なんだが、今日の授業が理解できなかったんだよ。それで悩んでたんだ」
「何だそんなことか。早く言ってくれれば良いものを」
プラチナさんは自分の席からノートとペンを持ってくると俺の席に座った。
「プラチナさん?何してるの?」
「何って、立花に勉強を教えようと思ってな。安心しろ、魔術の研究をするためにある程度の勉強知識は頭に入っている」
「いや、それは流石に……」
正直言うと、プラチナさんが俺に勉強を教えられる気がしていなかった。そりゃそうだろ、根っからの厨二病で俺がさっきアホの子判定した子である。
俺、人を見る目には自信があるんだ(自分調べ)。
「なに、遠慮しなくて良い。ほんのお礼だ。それに教えることは理解を深めるという点で効率がいいからな。私にもメリットはある」
「え、う、うーん」
そういうことじゃないんだけどなぁ……
「さ、ぼさっと立っていないでこっちにこい。マウスでもわかるように教えてやる」
……ま、まぁ?教えてもらうだけならタダだ。取り敢えずお願いしてみるか……
俺は然程期待せずにプラチナさんの授業を受けた。
「やべぇ、めちゃくちゃ分かりやすい。まじでマウスでも分かるわ」
後日聞いたことだが、プラチナさんは入試で学年三位で数学はなんと学年トップの満点だったそうだ。
人は見た目によらないということが証明された瞬間だった。
ちなみに、プラチナさんとはなんだかんだ仲良くなり、また勉強を教えてもらえることになった。やったね。
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