第10話 或る畜生乙女の独白 ④

 ようやっと、彼と結ばれる。

 彼はちょっとまだ乗り気でないようだけど……。

 そこはもう、男子のリビドーと自分の魅力を信じるしかない。

 ただ、どうしてもクリアーしなければいけない難題がある。

 正体を、見せる。

 正直、とても恐い。

 今まで何人かの男に見せたことがある。

 みんな、息をすることすら忘れたかのように、喘ぎながら全力ダッシュで逃げてった。

 同族のなかには、正体を隠したまま夫婦になるものもいると聞く。

 ホントはそれが賢いのかもね。

 けどバレたとき、悲劇が起きる確率は大だ。

 あたしはあくまでも、正体を知ってもらったうえで契りを交わしたい。

 それはあたしのどうしても譲れないプライド。

 それはいつだって悩みの種で、最後に残るジレンマ。

 凶と出るか、吉と出るか。

 やってみなければ。

 やってみなければ、幸せは手に入らない。

 あたしの本当の姿を見て、それでも愛してくれるなら、

 これ以上ない、幸福なのだから。


 ただ、あの女はどう処理しようか。

 散々、彼にちょっかいを出して、こともあろうにあたしより先に交わろうと目論んでいるようだ。

 憎らしい。鬱陶しい。

 早急に手を打たなければ。

 ……手段を選んではいられない。

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