KOUJI ~愛とすれ違いの日々~
2次創作「愛の滑落」 福山典雅著
「お前は俺だけのものだ」
僕は何度その言葉を飲み込んだ事だろう。愛と罪が同じなら、僕はその業火に焼かれてもいい。咎められるべき行為の果てには、何一つ確かなモノはない。わかっている、わかっているさ。許されざる愛の滑落が僕を捉えて離さない。
「先生、ちょっと」
歯科助手のキリコが、僅かに頬を上気させ僕を呼んだ。
「えっ、〇番のセメントじゃないの?」
「それ、使っていいやつでした?」
「ああ、あ~、ちょっと確認するね」
「私言いましたよね。△番の方だって」
「あれ?どうだったかな」
僕は批判がましい彼女の言葉をやんわりとかわす。その煮え切らない態度に業を煮やしたのか、彼女は僕の腕を取り懇願する様に小声で訴えた。
「わざとですか、あの女をまた治療に来させる気ですか!」
「……君には関係ない」
「いやです! もうおしまいにして下さい、私耐えられません!」
「何度も言わせるな、君には関係ない」
「先生は私の気持ちをご存知なくせに、なんで、なんであんな女を……あっ!」
咄嗟に僕はキリコの腕を強引に払い、その頬を激しく叩いた。
「君には関係ないと言っている」
冷たい響きが室内を凍らせた。床に突っ伏しすすり泣く彼女の声が、僕には霧雨の様にうっとおしく感じられた。
「仕事に戻るんだ」
キリコ対し、自分でも驚く程の冷酷な声で僕は命令した。
「……あの女のせいだ、あの女がいるから、全部あの女が悪いんだ、憎い、憎い、憎い、憎い……」
彼女が呪う様に呟く言葉を無視し、僕は再び治療室に戻った。
そこには僕の愛しい人が座っていた。午後の陽光が優しく降り注ぎ、そのきめ細かい肌が透き通る様に輝いて見える。ああ、この美しい女性と触れ合える日など来るはずがないのに、僕はまた馬鹿な罪を重ね様としている。人を不幸にするだけのこの想いを、何もかも失いかねない危ういこの想いを、僕は生涯を賭けてすら得難い愛だと感じていた。
だが、もう限界だ。別れの時は刻々と迫っていた。なのに僕の想いは日を追うごとに自制が効かなくなっている。それはまるで二度と這い上がる事が許されぬ深く険しい奈落の底へと落下する事なのに、僕にはどうしょうもなく止め難くそれを望んでいる自分を抑える事が出来なかった。絶望的なこの愛の滑落が僕を捉えて離さない。
なんか、すいません、つい……( ;∀;)
作者からの返信
ありがとうございます!
キリコ!!
腹抱えて笑いました。
KOUJI、意外と乱暴者!
皆様にご紹介したい!笑
にゅ〜ん🤣
作者からの返信
にゅ~ん、てほんとに言ったんですよ!
私も笑いを堪えるのが大変でした。