第4話(累計 第50話) 委員長との邂逅。
「ふぁぁ。流石に暗殺には来なかったね」
「わたし、皆を守るもん!」
「ソファーで寝るのは流石に苦しかったぞ。まあ、ベットはレディ達に譲るのは当然だが」
暗殺や盗聴を嫌い、同じ部屋で全員寝た僕ら。
女の子達に用意されていた三つのベットは僕とリリで一つ、アカネさんとエヴァさんでそれぞれ使い、ソファーはレオンさんが使った。
……リリ、僕と一緒じゃなきゃ嫌だって文句を言ったのもあるんだけどね。男だけ、もう一つの部屋に行くことも考えたけど、安全を考えたらこうなるか。レオンさんも、リリやエヴァさんを敵に回す様なエロい事は絶対にしないだろうし。
リリやエヴァさんが防御結界を張ってくれていたのもあり、安全に朝を迎えられた。
「レオンさん、すいません。僕がベットを使ってしまって」
「なに、トシにはリリちゃんのエスコートって仕事があるからな。それじゃ、行動に移すぞ。俺はエヴァちゃんと一緒に委員長とやらに会いに行く。トシ、リリちゃん、アカネさんはヴィローのところに行って荷下ろしを頼む。皆、油断するんじゃねーぜ」
「おー!」
そして僕らは活動を開始した。
◆ ◇ ◆ ◇
「この度は、大量の水生成魔導具を販売頂き、ありがとうございます。レオン・エステバン様。これで我がカレリアも救われます」
「いえいえ、イグレシアス様。伯爵様も人々が渇き苦しむのを聞き、悲しんでいましたから」
レオンは、目の前の男に集中する。
彼こそが、カレリアを支配するカレリア民主労働党、中央委員長ラザーリ・イグレシアス。
眼鏡を掛けた線の細い優男ではあるが、その目にどこか狂気じみたものをレオンは感じた。
「
「私は商売人。政治には、とんと縁がございません。商品を買って頂ければ、何方にでもご奉仕いたします」
……こいつ、油断ならねぇ。流石に読心魔法まで使ってこないとは思うが、油断大敵。エヴァ嬢ちゃんが居てくれて助かるぜ。
レオンは、横にすまし顔で座っているエヴァの方を一瞬見る。
彼女は目立つ長い耳を編み込んだ金色の髪の中に隠し、貴族令嬢っぽく薄い笑みを浮かべている。
しかし、その内心で怒りが渦巻いているのが、付き合いは比較的短いレオンにも分かった。
……エヴァ嬢ちゃんって、案外と子供好きなんだよな。ラウドでもよく学校に遊びに行っていたし、妹のリリちゃんを無茶苦茶に可愛がるし。だから、子供を害するラザーリは最初から敵扱いなんだよ。
「そういえば、エステバン様の
「仕事だけの関係ですよ。まちがっても私の妻でも何でもないです。皆さん、優秀なので雇っているのです。こと、隣に居ますエヴァ嬢は、優秀な秘書ですから」
……早速探りを入れてきたか。まあ、嘘は言っていないよな、俺。
レオンはエヴァを褒めて反応を見る。
しかし、エヴァは二コリと冷たい視線でレオンの顔を一瞥した後、口を開いた。
「ご紹介にあずかりました。わたくし、エヴァ・ノルニルと申します。イグレシアス様、少々お尋ねいたしたいことがありますが、宜しいでしょうか?」
「ええ。美しい女性からの質問なら、喜んで」
……お、おっかねぇ。こりゃ、本気で怒ってるぞ、エヴァ嬢ちゃん。
レオンは、エヴァから立ち上る怒りのオーラに圧倒された。
しかし、それを気が付かないのか。
ラザーリは涼しい顔で、横に立つ少女メイドから茶を注いでもらっていた。
「では、お聞きしますが、どうして街には子供しかいないのでしょうか? 大人は貴方様くらいしか見ないのですが?」
エヴァは、ラザーリを睨みつける様に問いかけた。
「それはですね、子供はみんな純粋で美しいからです。大人共は皆汚れています。誰もが利権や権力に酔いしれ、汚い事をします。しかし、そんな世俗の垢とは子供たちは無縁です。だから、私はカレリアの運営を愛しい子供たちに任せる事にしたんです。薄汚れた大人達は浄化のために農園で農作業をしてもらってます」
まるで酔いしれる様に、子供たちへの「愛」を語るラザーリ。
その姿にレオンは、吐き気を覚えた。
……こいつ、マジでイカれてる! 子供たちだけで社会が維持できるはずないだろ。第一、子供たちを育てたり教育する大人が居なきゃ、子供はどうやって育てば良いのさ?
「そうですか。しかし、無垢なままではヒトは生きてはいけませんですの。例えばプラントを動かせなければ、この乾いた大地でヒトが生きるのは難しいですわ。今回、水生成の魔導具が必要になられましたのも、プラントの不調と聞きます。短期では問題無いかと思いますが、長期的にはプラントを稼働させられるようにした方が宜しいのでは?」
「確かにお嬢様がおっしゃるとおり。長期的には現場で学んだ子供たちがプラントを治してくれますでしょう。しかし、お嬢様は実に優秀ですし、まだとてもお若い。エステバン様ほか、キャラバンの方々も皆お若く、優秀。貴方がたなら、我が国に移住して頂き、是非に技術を伝授してもらいたいです」
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