第39話 日輪の戦士、マハー・ヴィローチャナ。
「もはや命乞いをしてもワレは聞かぬ。では、前回同様に全方位から切り刻んでやろうぞ。イシュー、『ラクタ・ビューハ』!」
ブラフマンが駆る神話級ギガス、イシュヴァーラ。
そして背中から伸びた六本分の副腕を切り離した。
「その技は、一度見た! ヴィロー。こちらも
【御意、マスター。空を駆けよ、我が腕よ】
ヴィローも四本の副腕を広げ、ワイヤーで繋がった前腕部を射出した。
「なにぃ! どうして、神の御業をオマエごときが真似する?」
「神も何も、同じギガスが使う技ならコピーも対応も出来るんだよ。お前は、前回手の内を見せすぎた!」
ブラフマンは驚きながらもイシューの主腕から高周波ワイヤーを伸ばすが、それも前回見た技。
ヴィローはイシュヴァーラが伸ばすワイヤーを刀で切り払いつつ、高速機動。
迫りくるイシュヴァーラの副腕を避ける。
「そこぉ!」
目の前を通り過ぎたイシューの副腕を、ヴィローの副腕が掴む。
「払いのけよ、イシュー。な、何ぃぃ。イシューが力負けするとはぁ!!」
「そっちは無線+貯蓄マナ可動。こっちは有線。動力差が出るんだよぉ」
有線稼働のヴィローの副腕は剛力を振り絞り、掴んだイシューの腕を握り潰した。
【グォォォ!】
「一個! そしてぇ、二個目!」
イシューが怯んだ隙を狙い、僕はヴィローの刀で空を飛ぶイシューの腕を叩き切った。
……前回、オマエらはヴィローに苦戦して手の内を見せ過ぎた。だったら、メタ張り出来るこっちが有利なんだよぉ!
「な、何故に同じ神話級機体とはいえ増幅者もいない雑魚に、増幅者二人のイシュヴァーラが力負けるのだぁ!」
「そんなの、お前の性能を上回る様に機体を改修してきたからに決まってるじゃないか! 性能差に胡坐をかいていたお前が悪いんだよぉ」
空を舞う腕の数は、既に同じ六本。
こうなれば、パワーが上回るヴィローの方が優位だ。
……でも、冷却能力やマナ制御を考えたら長期戦になったら、こっちの負け。このまま押し切るぞ。
無理やり魔力炉を同調タンデム装備。
骨格や冷却バイパスまで弄りまくった結果が、今のマハー・ヴィローチャナ。
以前よりも一回り半は機体ボリュームが大きくなり、スラスターも大型化。
単独飛行すら可能なほどのパワーと機動性を得たが、犠牲になっているのは継続戦闘能力。
慣性制御や反重力魔法、構造強化魔法を駆使しても、無理やり強大なパワーで振り回す関係で、機体劣化速度は速い。
更に廃熱機構、増えたパワーに比例する発熱には追いついておらず、いつかはオーバーヒートを起こす。
……リリが居てくれて機体制御をしてくれたら、もう少しマシなんだけど。無いものねだりはしてもしょうがない!
「成れば魔法戦だ! イシュー、腕を戻せ。更に高度を取るぞ!」
【イエス、マスター】
残った腕を引き戻し、更に高度を上げようとするイシュヴァーラ。
近距離戦主体のヴィローが苦手「だった」魔法砲撃戦闘に持ち込むつもりなのだろう。
「ヴィロー、こっちも飛ぶよ! 砲撃戦モードへ」
【御意! イシュヴァーラよ、私はもう飛べないアヒルで無く、空駆けるワシなのだ】
腰部と背中のスラスターから炎状になった加熱空気を吹き出し、空を舞うヴィロー。
反重力魔法により浮かぶイシュヴァーラとは違い、強引な方法での飛行だが、その分加速度が早い。
「オマエも飛ぶか!? だが、剣の間合いに入らねば攻撃は出来まい。魔力弾の雨に装甲を貫かれるが良い!」
空中に何個ものプラズマ光弾を作り上げ、ヴィローに向かって放つイシュヴァーラ。
「甘い! こっちにも手はあるんだよ」
しかし、こちらも広げた副腕から同じく魔力弾を打ち出す。
また主腕の内側に仕込んでた魔力ビーム砲で応戦した。
「ぐぅ。オマエ、こちらに人質がいるのを忘れたかぁ」
「声も聞かせず、姿も見せない人質を誰が信用するんだよぉ。どうせコクピットはこっちも狙わないから、撃墜してから考えるよ」
……気配からしてリリが乗っているのは間違いないけど、コクピットさえ破壊しなければ神話級ギガスなら、搭乗者は無事だろうしね。
「このぉ、物の道理を知らぬガキがぁ!」
「ジジィになっても卑怯な事をいう奴には言われたくないよ。あ、若返った時に脳みそが幼児にまで退化しちゃったのかな?」
攻撃が無効化され、徐々に距離を詰められてきたのが嫌そうなブラフマン。
僕との舌戦にも、怒りを隠しきれない。
「ちきしょぉぉ! このまま焼け死ねぇ!!」
頭上に全部の腕を掲げ、そこに巨大な火球を生み出すイシュヴァーラ。
しかし、全力で攻撃魔法に神経を使ったためか、動きが止まる。
「ヴィロー、一気に間合いを詰める。防御魔法全開にして、火球に突っ込むぞ」
【御意! ワクワクする猪突猛進。私、大好きですぞ】
白銀の機体全体を虹色の魔力光で満たすヴィロー。
両手に掲げた刀を前にイシュヴァーラに突撃した。
「うぉぉぉ!」
「馬鹿が! このまま死ねぇ」
巨大な火球がヴィローに向かって放たれるが、僕もヴィローも気にしない。
そのまま火球に突撃を敢行した。
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