第24話 リリの悲しみ、僕の告白。
朝日の中。
燃え盛る戦場の上空を舞う漆黒のギガス。
その周囲には小さな装甲板が沢山舞い、まるで邪神とその周囲を舞う悪鬼共にも見える。
「リリ、お前は古代人によって造られた人形。生きている『鍵』なのだよ」
そんなギガス「イーシュヴァラ」を駆るブラフマンが、リリの秘密を話してしまった。
「おにーちゃん、嘘だよね。わたしは普通の女の子だよね? ヴィローも嘘だと言ってよ!」
「真実をいつまで隠し通せるとでも思っていたか、愚か者よ。姿、形。そして圧倒的な魔力量。人形じみた美貌も可愛げな性格も全ては作り物。庇護本能をくすぐる様に造られたものに過ぎん」
僕が言葉を出せないと思ったのか、どんどんと酷い事を語るブラフマン。
残酷な言葉がどんどんリリを蝕んでいくのを見、僕は怒りの限界を超えた。
「黙れ!」
「なんだ、小僧。お前は神話級ギガスを貰い、その力に酔いしれていたのだろう? この間の戦いは酷いものであった。弱者をいたぶる様に戦い……」
「黙れって言ってんだよ、このクソガキが! 歳だけ取って、人の心も分からんのかよ! リリを泣かすオマエを僕は許さない」
「何だとぉ!? まだ二十年も生きておらぬガキが百数十年を生きてきたワレをクソガキだと?」
「おにーちゃん……」
……こんなクソガキが世界を苦しめていたのかよ? 貴族連合を作ったのなら、コイツこそが僕の仇だ!
言われ慣れていないのか、僕の煽りにえらく反応してくるブラフマン。
怒りで、リリへの侮辱する言葉を止められたのは幸いだ。
「リリ。黙っていてごめん。でも、僕がリリを大好きな気持ちは今も昔も変わらない。君がどんな存在でもそれは変わらないし、君を一生守るのも本当さ。リリ、君が僕を復讐の怨嗟から救ってくれたんだ」
僕は振り返り、高い位置にある後部座席のリリに向かって顔を上げて話しかける。
「リリ。僕は君を一生愛します。僕と結婚してください。もちろん、僕もリリもまだまだ子供。本当の結婚は、リリが運命から解き放たれてから。僕はリリと一生ずっと一緒に居るから」
「……ホント、おにーちゃん? わたし、人間じゃないらしいんだけど、本当に良いの?」
恐々と僕に尋ねてくるリリ。
いきなり自らの秘密を暴露され、あまつさえヒトでは無いとまで言われたので怖いのだろう。
「そんなの当たり前だよ。リリはリリ。僕が大好きで一緒にずっと居たいのは、天然アホで優しすぎて可愛いリリなんだ」
「……おにーちゃん。わたし、嬉しいのぉ! はい、リリはトシおにーちゃんのお嫁さんになります」
「わっはは! 何を言い出すかと思えば、ブラフマンとやらは名通りの賢者では無いのぉ。トシ殿、リリちゃん。ワシは今ほど、貴族連合に見切りをつけたのを嬉しく思わう時はないぞ。若者の希望を壊し、リリちゃんをイジメる奴に正義など無い。のぉ。我が騎士団よ!」
「おー! リリちゃんの為なら我ら騎士団は無敵なり!」
僕の一生一大の告白に、リリは答えてくれた。
そして伯爵様や騎士団のお兄さん方も僕たちを祝福してくれた。
「……馬鹿どもめ。黙って聞いておれば、ワレを侮辱するだけでなく人形風情を崇めるとは! では、全員死ね」
「お前がな!」
僕はモニターへと振り返り、操縦桿を握る。
リリを泣かし、多くの人々を傷つけ、僕の両親の仇。
ブラフマンが何もであろうと、彼の操るギガスがナニモノであろうとも。
絶対に倒す!
僕は一気に敵、イーシュヴァラへと飛びかかる。
「常時飛行できぬオマエに何が出来る。ん? ちぃ!」
「飛べないと思うのが甘いんだぁ!」
【ええ! 私は飛ぶことも可能なのです!】
例えオーバーヒートになろうとも。
スラスターが溶けようとも、こいつだけは許せない。
僕はヴィローを駆り、スラスターを全開にして空を舞う。
そして両手の刀で切り付け、突く。
連続飛行しながらの同時攻撃。
刀だけでなく、
さしものイシュヴァーラも素手では攻撃を捌き切れないので、空中から三叉槍を読みだして、槍で剣戟を受け止めてくる。
「このしつこい! 死ねぇ」
焦れたイシュヴァーラが槍での突きを魔力の渦と共にで叩き込んでくるが、それを僕はスラスターを止めて落下で逃げる。
「甘い!」
「おにーちゃん、タイミングぴったり」
「おぉぉ! 当たれー」
僕が拾っておいた
僕が射線からずれたのを確認して、イシュヴァーラ目がけて撃ってくれた。
【「ぐぉぉぉ!」】
ブラフマンとイシュヴァーラが同時に叫ぶ。
槍の前に魔法シールドを展開するが、分解光線砲の一撃は重い。
受け止めるのがやっとで、ヴィローが視界から完全に外れている。
「ダメ押しでふっとべー!
六本の腕、そして左右の胸部、腹部にある砲口から九個の瑠璃色なプラズマ光弾が生まれる
落下しながら砲口をイシュヴァーラに向けたヴィロー。
一気に光弾を全弾発射した。
これぞ、ヴィローチャナ最大の必殺技。
九個のプラズマで押しつぶし、敵を焼き尽くす。
「やったぁ!」
僕は落下しながら敵がプラズマ火球に巻き込まれた上に、破壊光線で貫かれたのを見た。
「あれ? おにーちゃん、気を付けて!」
【マスター! 敵はいまだ健在です】
ヴィローが着地する頃、空中で広がった爆炎が消える。
そこには浮遊装甲を全て失い、槍も折れながらも未だに健在な黒曜石色のギガスが居た。
「ゆるさんぞ。オマエら。エヴァ、最大出力だ」
「はい、マスター」
ものすごい殺気を放ちながら、地面に降りてくるイシュヴァーラ。
朝日をバックに迫りくるソレは、死神にも見えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます