裏設定など 岩戸邸の大人たち編

 といっても今の段階で語れることは少ないのですが、マサを中心に設定を綴っていこうと思います。

 岩戸邸の大人たちはドクター、マガミ、マサの三人を指しています。他の三人(センリ、カーマ、愛結)が学生なので、大人と子供という区分けにしてみました。

 この三人のうち、最初に性格が定まったのはドクターです。その後マガミとマサの設定が出来てようやくドクターの詳しい設定が決まりました。元々芯の強い女性研究者を作ってみたいという気持ちがあったので、岩戸邸の面子はドクターを中心に組み上がっています。


 この三人で唯一モデルを意識したのはマガミです。元警察官として武骨な態度が目立つ彼ですが、これは実際に警察官であった私の叔父が少し下地になっています。

 とはいえ振り返ってみると、この三人の関係性は私の父と叔父たちに似たなあと思います。

 私の父は三兄弟で、長男である父が家業を継ぎました。家長となった父は人心を集めるのに長け、その代わりとでもいうかのように、実務的なものは全くしない人でした。

 その姿を見て育ったためか、二人の叔父は年長の男性にしては珍しく、家事の手伝いを良くしてくれる人でした。マガミが岩戸邸の家事を担っているのも、家事を手伝ってくれる叔父の姿を私がよく覚えているためです。

 警察官となったのは三男の叔父なのですが、父の下で家業を継いだ次男は、芸術を愛する鷹揚な人でした。いつもにこやかで丁寧な物腰だったのを覚えています。


 岩戸邸で暮らす人々には二つの関係性があります。一つはドクターを中心とした研究チームという関係。そしてもう一つは、家族を失った者が集まって作った“新しい家族”という関係です。

 元々前者の関係だけを考えて作った面々なのですが、センリと彼の兄との関係を考えたときに後者のアイデアを思いつき、それを取り入れることにしました。

 こうした義理の家族という設定を思いついたのも、私自身が育った家庭がずいぶん流動的だったからかもしれません。

 我が家は家業の関係上、血のつながりの有無に関わらず、様々な人が出入りしていました。食卓を囲む人数は頻繁に増減し、人見知りの私はよく緊張しながら食事を摂ったものです。

 それ故、血縁という縛りにこだわりが無かったのかもしれません。むしろ血の繋がりというものを疑ったり、自分が縛られていることに自覚的であったりするようなキャラクターのほうが、私にとっては作りやすかったのです。


 私は、家族というものは一種の神話だと思っています。その集団に馴染むために信じざるを得ない物語の類です。それを容易く受け入れられるのなら話は早いのですが、一度疑うと底の無い穴の中に落ちていくしかありません。

 資本も格差も自由意志も、神と同じ虚構です。そして神と同じように、信じて一途に努力した者のみを救済します。

 私はどうしても、真っすぐ信じることができませんでした。ですので私は、自分のうちに独自の“神”を飼うことに決めたのです。

 作品を作るとはその身に物語を下ろすことだと思います。物語という“神”を信じ、その“神”を書き記すことが天命だと信じるのです。

 こう考えるようになって初めて、私は努力することの楽しさというものを知ることができました。

 【仇花の日常】のキャラクターたちは、私自身の疑問と向かい合う機会を授けてくれた天使です。彼らと、そして共鳴してくださった読者の方々への感謝を忘れず、天に昇るための精進を続けていこうと思います。

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