裏設定など カーマ&クーシー編

 彼女たちにはモデルはおらず、作者が言いたいことをそのまま言ってくれるという点でいえば、作者自身がモデルとなったキャラクターです。

 カーマ(神原聖羅)は暴力的な少女というテーマで製作しました。牛のモチーフを冠することは決まっていたので、肉付けとして“金の子牛”と“カーマデーヌ(インドの牝牛神)”のイメージを使いました。カーマという名前もそれに由来します。

 それらをモチーフにしたが故に色合いが金と白で統一されています。黒ギャル要素は作者の好みです(完結後にレッグウォーマーとブーツを合わせて牛の蹄みたいにすれば……などといろいろ思いついて悔しい気持ちになりました)。

 その色合いが決まったとき、金と言えばクリムトだなと思いました。そこから彼女の芸術愛が始まり、小さな女の子と銃への陶酔も派生しました。金細工職人という役割も、クリムトが絵画と金物細工の融合を目指していたところから来ています。

 ドクターの下に暗い過去の者が集まって新しい家族が作られるという設定は、彼女の生い立ちを考える段階で生まれました。岩戸邸で暮らす六人のうち、一番早く設定が固まったのは彼女かもしれません。

 【仇花の日常】ではセンリの義妹として、センリにいろいろ助言をくれる立ち位置になりました。しかしそれも彼女の異常性に慣れているセンリ相手だからこその役回りであり、続編である【ソリストの協奏】で彼女がどう振舞うかは、ぜひ皆さんご自身の目で確かめていただきたいです(第二部から登場予定です。乞うご期待!)


 クーシーはカーマ以上に私に近いキャラクターです。

 センリ編でも少しお話しましたが、私は情報工学を学び、人が数値として扱われることに若輩の身でありながら疑問を抱きました。その疑いの目を私と共有してくれているのは、作中ではセンリとクーシーのみです(ちなみに、続編に登場するイヅルも似たような考え方をしています)。

 センリは合理性で動くのでその疑問を飲み込んでいますが、クーシーは自身の感性を最優先に考えるので、疑問を持ったまま情報工学を突き詰めることに抵抗があるようです。大学中退をほのめかすクーシーにカーマが諭すところなんかは、作者である私も耳を傷めながら書いていました。

 クーシーという名前は、オランダ語の前置詞vanと合わせて“バンクシー”となるように言葉遊びをした結果です(ヴァンと呼ぶのは英語読みで、オランダ語やドイツ語での読みはファンですが)。また、妖精のような羽に合わせてシー(妖精)の要素を取り入れています。クー(犬)要素は無いのですが、まあ見た目がくう(空)っぽい色合いってことで許してください。

 クーシーの外見は、カーマの最愛のプレイヤーという設定が最初にできていたため、カーマと取り合わせて綺麗な色合いにする意識が先にありました。そして芸術でつなげるため、星を飲み込む濃い青が美しい、ゴッホの「星月夜」を意識した外見になりました。

 出しどころを失った裏設定なのですが、エルフである彼女がドワーフの街であるセペルフォネに身を置く理由は、異邦人として眼差される環境で芸術を突き詰めてみたいという好奇故です。


 カーマとクーシーが符牒としてドイツ語を使うのは、クリムトを始めとしたウィーン体制への憧れによります。ゴッホを意識してオランダ語にするのも考えたのですが、ドイツ語の方が聞き馴染みがあるかと思いこちらにしました。

 最後の最後で出てきた変貌装備【ティターニア】ですが、もっと活躍させてあげたかったなあと思います。カーマの愛用する銃はその名を【ティタノマキア】といい、ティターニアと語源を同じくします。こちらも全然言及できないまま終わってしまいました。

 <変貌せよモーフ妖精女王の目覚めアウェイクン・ティターニア>というスキル名は、瞼に媚薬を塗られたティターニアが目覚めた途端に恋をしたことを指しており、カーマとクーシーの関係に色を付ける役割もあります。


 ちなみに、カーマの異父妹である愛結の苗字は御巫(かんなぎ)です。神と巫女ということで、二人の関係性を表しています。

 クーシーの本名はまだ決めていないのですが、ぼんやり「空知」という文字列が浮かんできたので、これで「そらし」と読ませようかなあ、なんて考えています。苗字は未定ですね。出す場面があるかどうかも分かりません。

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