第202話 閑話:とある少女の物語29
レオナを伴って魔女に割り当てられている控室に戻ると、当然のように事の顛末を把握していた魔女が仁王立ちで待ち構えていた。
突然転がり込んできた成果に、魔女はさぞ喜んでいるかと思ったのだけれど――――
「やり過ぎだ!この馬鹿者!!」
「えー……」
どうやら、魔女は私の仕事がお気に召さなかったらしい。
着替えのためにレオナが外しているから、私が一人で魔女のお小言を引き受ける羽目になってしまう。
「完璧とはいわないけど、十分な仕事をしたはずよ?」
「ああ、全くそのとおり、上出来だったとも!誘導も、挑発も、お前自身の評判を使った話運びも、よくもあそこまで丁寧な仕事ができたものだと感心していたくらいだ!お前とオリオール卿との話が済んだ、その瞬間まではな!!」
ここまでうるさい魔女も珍しい。
真面目に話を聞いているという姿勢を見せるため、ソファーに寝そべっていた私は体を起こしてソファーにもたれかかった。
「なぜ、あそこで終わらせることができない!!どう考えても紅茶は余計だっただろう!!」
「私の性格を考えれば、あの結果になるのは必然よ。それに、今回の一件だけ見れば余計なことかもしれないけれど、今回の評判も今後に活用すれば、長期的に見てマイナスにはならないわ」
「だが、物事には限度がある!」
「そうね。でも、成果は十分稼いだでしょう。少なくとも、パーティが始まる前の段階でお師匠様が私に期待していた成果よりは、ずっと大きいはずだけど?」
「それは、そうだが……!もう少しだけ丁寧に対処していれば、オリオール卿の勢力を丸ごと取り込めたかもしれんというのに……」
要は、獲ったと思った獲物に逃げられて悔しいということか。
「私はムチ担当。アメは取り扱ってないわ」
「……なんとかならないか?」
「贅沢を言うのね。贅沢は敵よ……ふわぁ……」
大きく溜息を吐く魔女を横目に大あくびして、再びソファーに転がった。
ダンスが終わったパーティ会場では今頃夕食が振舞われているだろうけれど、私はお菓子だけで十分お腹が膨れてしまって、もう食べる気にはならない。
「焼き菓子ばかり食べ過ぎだ。少しは自重しろ」
お腹をさする私を一瞥して呆れ顔の魔女。
けれど、少し待ってほしい。
「……よく見てるわね?」
「当然だ」
「…………この首飾り、監視機能はないのよね?」
「パーティ会場に忍ばせる協力者の5人や10人、用意していて当然だ」
ないとは言わなかった魔女の顔をじっくりと観察する。
しかし、長年宮廷内で魑魅魍魎と渡り合ってきた――というか魑魅魍魎そのものである――魔女の顔色から、答えがわかるはずもない。
(まあ、こんなことでボロは出さないか……)
問い詰めてもはぐらかすに決まっているのだから、聞くだけ無駄だ。
それより眠い。
私だけ先に魔女の執務室まで引き上げようと思ったけれど、それすら億劫になるほど強烈な眠気が私を襲う。
「少し休む……。引き上げるとき起こして……」
「子供か、まったく……」
用意させた毛布にくるまってソファーに横になる。
魔女が何か言っていたけれど、私の頭がそれを認識することはなかった。
暖かい部屋で毛布にくるまってソファーに横になれば、眠ってしまうのは自然の摂理。
私も世界の理には逆らえず、気づけば深い眠りに落ちていた。
それからどれくらいの時間が経ったのかはわからないけれど、私を眠りの世界から引きずり出そうとする者がいた。
「リリー姉さま、起きてください」
レオナに優しく肩を揺すられ、意識が少しずつ覚醒していく。
安らかな眠りを妨げられたことを不満に思ったけれど、寝ぼけた頭が自分の状況を思い出す頃には、レオナが私を起こそうとしている理由に思い至った。
「ん……もう帰る時間?」
毛布の温もりを手放すのが惜しくて、毛布を肩まで被ったまま体を起こす。
てっきり魔女や姉弟子が帰り支度をしているかと思いきや、部屋の中にいるのは私とレオナだけだった。
パーティ中に爆睡したことを呆れられて、置いていかれたのだろうか。
そう思ったけれど、レオナの言葉はそんな私の予想を否定するものだった。
「いえ、実はリリー姉さまにお客様が……」
「私に……?誰?」
「セルトン伯爵家のシモン様です」
「そう……」
相手の名前を確認した私はそのままゆっくりと体を倒し、毛布を頭まで被った。
「リリー姉さま、寝ないでください」
「……私は寝てるから帰れって伝えて」
「私の立場でそんなこと言えません」
「……なら私がそう言ってたって伝えて」
「それ、リリー姉さまが起きてることまで伝わっちゃいます」
「いっそ伝わった方が素直に帰ってくれるかも」
私を揺り起こそうとするレオナの手つきに先ほどまでの優しさはない。
必然、少しずつ眠気が醒めていってしまう。
「シモン様は、ドレスデン様からリリー姉さまがこの部屋にいると聞いたそうです。このまま追い返すと後で面倒なことになりますよ」
「あの魔女、また余計なことを……」
魔女は私が抱く彼への想いを知っているから、私に男を押し付けないことを確約している。
しかし、内心は自派閥の貴族に嫁いでほしいと考えているのは間違いない。
こういった社交の場での交流にかこつけて、歳の近い男を私に引き会わせようと常々目論んでおり、セルトン伯爵家のシモンもそうして私に会いに来た男の一人だった。
(大抵は一度塩対応すれば諦めるんだけど……)
ぐいぐいと遠慮なく毛布を引っ張り始めたレオナに根負けし、再び体を起こす。
レオナが持ってきた小さな鏡を覗き込むと、寝ぼけた顔の女が映っていた。
櫛を片手にソファーの背後に回ったレオナが、ブツブツと呟きながら私の髪を梳かしてくれる。
「うう、ドレスにシワが……、せめて髪だけでも整えて………………。リリー姉さま、お客様を呼びますからね」
「はあ、わかったわ……」
私は観念し、テーブルに残っていたぬるい水でのどを潤した。
鏡を見ながら自分自身が恥ずかしくない程度にドレスを整え、ソファーに座って迷惑な来客を待ち受ける。
レオナの宣言どおり、お客はすぐに現れた。
優しげな雰囲気を漂わせる金髪の少年が付き人の少女を伴って入室し、笑顔を見せる。
「リリー様、突然お邪魔してしまい申し訳ありません」
「本当よ、人が寝てるときに訪ねてくるものじゃないわ」
「パーティ会場でリリー様のお美しい姿を見かけて、ついこうしてお話をしたくなってしまいました。どうかご容赦ください」
私の嫌味を受けても鉄壁の笑顔はビクともしない。
一方、付き人の少女の方は、主人を馬鹿にされてムッとした様子が垣間見えるだけ多少の可愛げがあった。
もちろん誰かさんのように私の非礼を咎める暴挙には出ず、私の対面に腰を下ろした主人の背後で姿勢正しく控えている。
「失礼します」
「ありがとう」
お茶とお菓子をテーブルに並べるレオナに向けて、シモンが礼を言った。
私がレオナを可愛がっていることやレオナが本来は付き人でないことを知っているからこその行動ではなく、自然に口から出た言葉のように聞こえた。
このような場では使用人をいないものとして振舞う貴族が多い中、珍しいタイプの貴族だと思う。
私もレオナに礼を言い、客が茶菓に手を付けやすいよう私も一口だけ味わってから、向かいに座るシモンに視線を向ける。
「さてと……、休んでいるところわざわざ起きてあげたんだから、面白い話を聞かせてくれるんでしょう?」
「もちろん、そのつもりですよ。そうですね、まずは……リリー様が帝都を離れている間にこんなことがあったのですが――――」
私が面倒に思いながらもこうしてシモンと会っている理由は3つある。
ひとつは魔女への配慮。
シモンの父であるセルトン伯爵は魔女が所属する派閥の重鎮であり、魔女も多少の配慮を必要とする相手だ。
そんな相手から息子と私との仲を取り持つよう頼まれれば、魔女とてゼロ回答は難しい。
私にシモンと恋仲になることを強要できないなら、二人が会う機会を設定するというのは魔女にとって妥当な落としどころなのだろう。
それを私も理解しているから、こうして会うだけは会っているというわけだ。
もうひとつは私自身のため。
婚約者がいないのはシモンだけではない。
私のことをよく知らない者が見れば、私の隣が空いているように見えてしまう。
何も手を打たなければ私に婚約を申し込もうとする男が列をなして押し寄せることになり、それをいちいち断る手間は煩わしいことこの上ない。
だからこうして時々シモンと会うことで、婚約はしていなくとも関係が良好であり、私が婚約を前向きに考えているように見せかけている。
自派閥の重鎮の嫡男であるシモンなら虫よけとしての効果も十分だった。
そして、最後のひとつは――――
「へえ、そんなことがねえ……」
「それはもう素敵な光景でしたよ。リリー様が帝都にいらしたらお誘いできたのに、本当に残念です」
「それは確かに、一度見てみたいわ」
単純に、シモンの話が面白いのだ。
貴族の少年にありがちな自慢話が少ないところ。
私の反応を見て、私が興味を持った話を掘り下げていくところ。
私を口説きに来ているということを忘れるくらい、下心が見えないところ。
色恋に結びつけず、友人と話すような気持ちで会えば楽しいひとときを過ごすことができる。
いや、彼のことがなければ、もしかしたら色恋的な意味でも心が動いたかもしれない。
けれど、だからこそ――――
「シモン。いい加減、私のことは諦めたらどう?」
「…………」
これ以上、この関係を維持することは躊躇われた。
シモンは私と同い年で、たしか次の春で貴族学校を卒業することになるはずだ。
同年代は大半がすでに婚約者を選んでおり、婚約者がいない者は一握りだと聞く。
このままシモンが私以外に目を向けないままなら、私を諦めたときにロクな相手が残っていないなんてことになりかねない。
私が私自身のために使い捨てるには、シモンは人がよすぎるのだ。
「リリー様、そんなつれないことをおっしゃらずに――――」
「貴族学校で、少し上手くいかないことがあったというのは知ってるわ。けれど、最初に会ったときに伝えたはずよ。私には想い人がいて、あなたと婚約するつもりがないということを」
「はい……。もちろん、覚えています」
気さくな微笑みを引っ込めて真剣な顔をするシモンに、私は丁寧に語り掛けた。
優しく、気遣いができて、容姿も家柄も良い。
そんな優良物件のシモンに婚約者がいないのは、シモンがモテる故に起きたいざこざが原因だったと聞いている。
ありがちと言えばありがちな、男子の取り合い。
学生時代のほろ苦い思い出――――で済まなかったのは、シモンを取り合った二人の少女がどちらも上位貴族の令嬢だったからだ。
どちらを選んでも角が立つと考えたシモンは、やむを得ずどちらも選ばないことにしたものの、何があったか、シモンの行動は少女たちのプライドをいたく傷つけたらしい。
その結果、可愛さ余って憎さ100倍を地で行く恐ろしい報復がシモンを襲った。
シモンに直接的に危害を加えたわけではない。
ただ、シモンに近づくと校内で大きな影響力を持つ上位貴族家の令嬢に目を付けられるという事実が、瞬く間に学校中に広まったのだ。
セルトン伯爵家が望むのは当然ながら上位貴族との縁談だった。
しかし、上位貴族だからこそ、縁談はそれなりの数が舞い込んでくる。
家同士の結びつきが重視される貴族同士の縁談で、上位貴族家をふたつも敵に回すかもしれない話はどうしたって敬遠されてしまい、貴族学校卒業を目前に控えてもシモンの婚約者は見つかっていないというわけだ。
けれど――――
「相手を無理に上位貴族家の令嬢に限定しなければ、あなた自身の魅力で見つけられる縁もあるんじゃない?」
相手を下級貴族の令嬢まで広げれば、見つからないわけではない。
セルトン伯爵家は十分に強い影響力を持っているから、相手は何が何でも上位貴族家の令嬢でなければならないということもなく、下級貴族家ならセルトン伯爵家との結びつきを求めてシモンの方に天秤が傾く家もあるはずだ。
下級貴族家の一部は、子女に自由恋愛をさせているなんていう話もあることだし、シモンのスペックならそういった令嬢の一人くらい何とかなるだろう。
私に無意味なアプローチを続けるよりは、よほど建設的だ。
「私のことを心配していただき、ありがとうございます」
面倒だから言っているわけではないということが、しっかりと伝わったのだろう。
シモンは神妙な顔で頭を下げ、中々顔を上げなかった。
しかし――――
「ですが、婚約者選びは人生でたった一度の重要な選択です。だから、悔いが残らないよう全力を尽くしたいのです」
シモンは、そう言って微笑んだ。
私は深く溜息を吐き、仕方なしに笑った。
どうやら私の言葉では、シモンの心を動かすことができなかったようだ。
「はあ……。その笑顔を見せて口説いてやれば、女の一人や二人、あっさり落ちるでしょうに……」
「それが10人でも20人でも、大した意味はありませんよ。落としたい女性は、たった一人だけですから」
「流石にそこまで言われると、悪い気はしないわね」
「そういう言葉は、もう少し嬉しそうな顔で言っていただきたいものです」
なるほど、たしかにお菓子の皿を見つめながら言うセリフではなかった。
シモンと顔を見合わせて、クスクスと笑う。
「愛想笑いは得意よ?」
「できれば、本心からの笑顔でお願いします」
「あら、それを引き出すのはあなたの役目じゃない?」
「なるほど、それはそのとおりですね」
実際のところ、シモンに向ける笑顔が作り笑顔ではなくなってから、すでに結構な時が流れている。
あまり期待をさせると悪いから、なるべくその気がないという態度を貫いてはいるものの、シモンとの会話が楽しいからついつい笑ってしまうのだ。
(ああ、レオナが喜んじゃってる……)
レオナは以前からシモンと私をくっつけようとしている節があった。
良い雰囲気の会話を嬉しそうに聞いているところ申し訳ないけれど、あとで誤解を正しておかなければ。
レオナ目線の誤った報告が魔女の耳に入ったら、魔女も本気になりかねない。
そういう意味ではシモンの付き人も要注意だ。
私はさりげなくシモンの背後に控える彼女に視線を向ける。
彼女の報告がセルトン伯爵の耳に入ってしまえば、レオナの誤解を解いても同じ結果になりかね――――
(うん……?)
自分の主人の縁談が好調にも見える状況を喜んでいるかと思った。
しかし、彼女の表情は動かない。
表情が変わらないように努力しているようにすら見えた。
(どういうこと?)
セルトン伯爵家は、私とシモンの仲が進むことを望んでいないということか。
いや、それなら魔女経由で何か話があってもいいはずだ。
頭に浮かんだ疑問が気になってしまい、シモンと和やかに会話を続けながらも、時折その背後に視線を送る。
注意深く付き人を観察して、得られた情報の意味を考えて――――ようやく私はある可能性に思い至った。
「シモン、ちょっと待ってもらえる?」
「…………?」
突然会話を遮られ、戸惑っている雰囲気のシモンを放置して黙考する。
たっぷり時間をかけて考えて、その結果を確信に変えるために口を開いた。
「シモン」
「はい、なんでしょう?」
「いいわ、婚約してあげる」
できるだけ自然な笑顔で、シモンを真っすぐに見つめて告げた。
シモンは少しの間だけキョトンとした顔をして、そして柔らかく微笑んだ。
「できれば、本心からの言葉でお願いします」
「あら、それを引き出すのはあなたの役目じゃない?」
「それは、もちろんそうなのですが……」
「それに……本心だったら困るでしょう?」
敢えて笑顔を消し、探りを入れてみる。
「何をおっしゃるのです?リリー様の本心を聞くために、こうしてあなたの下を訪ねているのですから、困ることなど……」
「そう……」
突如として豹変した私の雰囲気に負けることなくノータイムで切り返したところに、シモンの本気が見える。
ただ、数年間も口説きに通っている相手に本気を疑われたら、怒るのが自然ではないだろうか。
ムッとした態度も出さずに変わらない表情で会話を続けるなど、むしろ本気を疑われても仕方がない態度だ。
「ああ、なるほど」
その態度さえ、シモンの中では計算の内ということか。
これまで私が見てきたシモンの様子が、ひとつの目的の下にピタリと整合した。
疑問が解決したことで満足した私は、上機嫌でお菓子を口に運び、紅茶を飲み干す。
「あの、リリー姉さま……?」
「ああ、驚かせてごめんなさい。婚約は冗談よ」
「ええ、冗談!?そ、そんなあ……ひどいです、あんまりです」
快哉を叫んでもおかしくないくらい嬉しそうな顔をしていたレオナの表情が絶望に染まる。
そんなレオナを、当事者であるシモンは困ったような笑顔で見つめていた。
そして、この場に居る最後の一人は――――
「あなたはシモンのためを思うなら、そんな顔をしちゃダメでしょう?」
「え……」
突然、私に話しかけられて動揺するシモンの付き人――――たしか、名前はジュリエットと言ったと思う。
彼女は心底ホッとしたように大きく息を吐いていた。
ただし、私が諾と告げたタイミングではなく、冗談だと告げたタイミングで。
「本当なら、自分の主人を馬鹿にするなってムッとするところよ?まるで、私がシモンと婚約しないことを喜ぶような態度をして、どういうことかしら?」
「わ、私、そんなこと……」
思い出してみれば、シモンが私のところを訪ねるときはいつも彼女を伴っていた。
彼女はあくまで付き人であって客ではなく、私と会話する機会など皆無。
急に詰問調で話しかけられたら、冷静に対応することは難しい。
混乱から立ち直れない付き人を庇うように、シモンが口を挟んだ。
「リリー様、突然どうされたのですか?ジュリエットが何か気に障ることをしてしまったでしょうか?」
流石のシモンにも焦りが見えた。
何とかここから挽回しようと、湧きあがる焦燥を必死に押し隠して会話を繋ぐ。
けれど、もう茶番は終わりだ。
「気に障ることをしたのは、ジュリエットではないはずだけど」
「…………」
その言葉に、シモンは黙して項垂れた。
シモンがどう出るか。
お菓子を片手にゆっくりと待っている。
しばらくしてシモンは無言で立ち上がり、ソファーの横に跪くと深く頭を下げた。
「申し訳ございません。深くお詫びを申し上げます」
「え、ええっ!?」
レオナが素っ頓狂な声をあげた。
状況を把握できておらず、私とシモンの様子を交互に窺っておろおろするばかりだ。
(ああ、そっちも驚くの……?)
意外だったのはジュリエットも驚いているということ。
この反応は、つまり彼女もシモンの内心を知らされていなかったということだ。
それはどうなのだと思わなくもないけれど、腹芸が苦手そうだから万が一を考えればやむを得ない。
少なくともシモンは、そう判断したのだろう。
「リリー姉さま、なんで落ち着いてるんですか!?」
「レオナは少し落ち着きなさい」
「む、無理です!」
お茶なんか飲んでいる場合かと私を責める視線を、ゆったりと受け流す。
しかし、このままだとレオナが落ち着かないので説明は必要だった。
「レオナ」
「はい……」
私はレオナとジュリエットがシモンの行動の理由を理解できるように、端的に告げた。
「シモンは、私と婚約する気は最初からなかったってことよ」
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