第16話 C3−P0 優理と会議

 夜、ようやく部屋の姿見に優理が映し出された。


「どうしたのお姉ちゃん」


「ゆ〜り〜。この先どうなっちゃうの〜」


「しばらくシリアスムードだよ。ていうか、ついに残機0か……」


「マウは救われるの?」


「ん? マウ?」


「うん。マウ」


「……え、サレナじゃなくて?」


「サレナとは……特になにもなかったよ。スクリオにナンパされたけど」


「チョット待って、過去ログ確認する」


 優理がコントローラーをいじりだした。

 アドベンチャーゲームなら、主人公がどんな会話をしたのか遡って確認することができる。


「う、うそ……」


「どうしたの?」


「マウが仲間と一緒に騎士と戦うイベントは、いまのお姉ちゃんなら発生しないはずなんだよ」


「へ?」


「マウの好感度が5以上かつ、好感度の高さが2番目の状態で、別のキャラとのデート中に発生するの。普通だったら」


 確かにおかしい。

 マウの好感度は8で、誰よりも高い。2つ目の条件に当てはまっていない。


「まさか、隠された生存ルート!?」


「んー、でもこのイベント自体は既に確認されているものだからねえ。このあと好感度順位でマウを一位にすると、マウエンディングの6番目に突入するはず」


「え、じゃあなんだろう。バグかな?」


「たぶんね。こっちで調べてみるよ」


 ただのバグだったらがっかりだなあ。

 もしかして、なんて期待しちゃったよ。


 あのマウのイベントのあと、マウが一番好感度が高い状態にするとエンド6に入る、か。

 もともと一番高いのだから、このまま何もせずともエンド6になるのかな。


「エンディング6って、どんなの?」


「んー、割とあっさり死んで終わり」


「えぇ……」


「残念だけど、キスすらできないよ」


 せめてファーストキスくらい体験してから死にたいよ。


「救いは……」


「ないこともないよ。スクリオを説得すればマウが組織から抜けるイベントに繋がって、エンディングも変わる」


 本当に!? なんでスクリオなんだろう。関係があるのかな。


「組織から抜けたとしても?」


「姉ちゃんは絶対に死ぬ」


「絶対とか言わないでよ……」


「そだね。もういっそさ、これまで攻略していないキャラに集中してみたら?」


 冷たいなー。

 しょうがないか、優理にとってマウは、ゲームのキャラクターでしかないんだから。


「これ以上キャラ増やしたくないよ〜」


「うーん、じゃあスクリオは?」


「スクリオ先輩?」


「実はさ、スクリオって攻略情報が少ないキャラなんだよね」


「そうなの?」


「好感度が上がりにくいんだよ」


「チャラいのに!?」


「……ネタバレしていい?」


「何をいまさら」


 そりゃ何にも知らないまっさらな状態でプレイしたいけれど、状況が状況だし、情報は貰えるに越したことはない。


「実はスクリオ、民主化組織『アルファ』のスパイ」


「そうなの!?」


 なるほど、だからスクリオを説得したらマウが組織から抜けるイベントになるのか。


「サレナとの街デートで登場したのはそういう理由なんだよ。サレナに近づいてるわけ。チャラいのもすべて演技。心に仮面を被った冷徹なキャラ。頑張って好感度を上げようとしても、迎えるルートで判明しているのは……彼に殺されるたった1個のエンディングのみ」


 そうだったんだ……。

 あんな軽そうな性格しておいて、実は闇を抱えている系だったんだ。

 待てよ? もしやスクリオ先輩がアルファのスパイなら、マウとも繋がりがあるのか?

 それにサレナに近づいたって……まさか殺すつもり?


 攻略情報が少ないキャラ、スクリオ先輩。

 マウのこともあるし、接近してみる価値はあるかも。

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