''ぽ''

めがね

''ぽ''

「''ぽ''です。」


━━━は?


「正解。座ってよし。」


四時間分の疲れや、昼休みを経て得た満腹感による後遺症を抱え、迎えた五時間目。

雨が降りしきる教室の中、俺は後頭部をいきなり叩かれたような違和感を覚えた。

「聞き間違いか...?」

そう思う他なかった。

社会は苦手で授業もつまらない、先生も好きではない。つまり、関心意欲態度は最低。答えなんて分かるはずもない。

だが、''ぽ''?

さすがに聞き間違えだろ。今日はさすがにだらしなさ過ぎたか?


「おい鈴木!!!」

怒号が飛ぶ。

「は、はい!」

またしても、何も聞いていなかった。

「わかりません...」

「おい鈴木〜、しっかり授業は聴いとけよ?このクラスで単位が危ないのはお前だけなんだから。」

嘲笑に囲まれる。

「すいません...」

「もういい、佐藤、答えてやれ」

「はい、''ぽ''です」


━━━は???


またしても、答は''ぽ''だった。

教室では黒板に対し、後方に位置しているという美点をいかしてスマホを取り出す。

歩、舗、保、補、圃、哺...

これらを新品同然の教科書と照らし合わせる。

「なんなんだよ...」

当然、みつからない。

あれこれと思案している最中、ふと見上げる。

そこには、社会っぽいワードが跋扈している中、明らかに''ぽ''とだけ書かれていた欄があった。

しっかりと、平仮名で''ぽ''だ。

その状況であれば、社会が苦手な俺でさえも異常だと感じた。

周りの人を頼る他にない。

「田中、ここどういうこと?」

まるでお金の話をするかのように、隣人に声をかける。

「どういうことって、''ぽ''だろ。ちゃんと授業聴いとけよ。単位やばいんだろお前」

またしても嘲笑。

もういい、この際、今は諦めよう。幸い、友人には恵まれている方だ。その中に社会が得意なやつがいる。そいつに今度飯でも奢れば何とかなるだろう。

そう思い残し、机に突っ伏した。

と、同時に授業終了を告げる鐘が鳴った。

どうやら、昼休みの後遺症が相当濃かったようで、ノンレム睡眠に成功し、その間が一瞬に感じられた。

ふと、黒板をみると、俺は安堵した。

''ぽ''がない。

どうやら、夢オチというものであったようだ。

板書の心配など、どこかに吹き飛んでいくほどの溜息をついた。

「しかし変な夢だったなぁ」

そう呟きながら、面白い話ができたという、期待感に胸を躍らせていた。

それに続いて、六時間目の教科の確認をする。

「!!!」

俺が唯一と言っていい程に好きな教科。体育であった。

だが、今日は大雨。

いつもならサッカーであるこの時間は、体育委員の誘導により、我々はいつもと違う靴を持ち、体育館へと向かった。

その最中、友人たちと

「卓球かな?」「バレーでもいいな」「いやさすがにバスケだろ」

と、白熱した議論を交わしていた。

そんなこんなで時間が過ぎ、体育館に集められた俺たちは、チャイムの音と同時に、体育座りで集められた。

「この時間は、いつもサッカーをやっていたんだが、今日は生憎の雨だ。そこで、今日は体育館で...」

雨音がこだまする建物内。我々がごくりと唾を飲み込むと同時に先程の議論の結論が告げられた。

友人たちだけでなく、クラス全員が歓喜している。


━━━━━は?????


答は、''ぽ''だった。

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''ぽ'' めがね @megane426

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