第2話 ケーキのお城

 お城の門をぬけると、イチゴソースのかかった、ポップコーンのお庭がありました。


 お城に続くビスケットの小道には、イチゴあめ電灯があります。

 りおちゃんが前を通ると、ぴかっと光ってくれるのです。

 ぷっくりしてて、つやつやしてて、ほわんと赤いイチゴが、かわいく光っています。

「なんてかわいいの!」


 道を歩くたびに、あまーい、あまーいポップコーンの匂いが、ぷうううんっ、としてきます。


 後ろを歩くみーくんが言いました。

「いい匂いだみーーーーー。」

 はなを伸ばしたみーくんは、そのまま前のめりに落っこちてしまいました。


 とってーん!


 りおちゃんが振りかえると、ポップコーンまみれになったみーくんがいました。

 おかしくなって、りおちゃんは、ケラケラケラケラ笑います。


「やだ、みーくん、ポップコーンマンになってる!?」


 みーくんは、どすどす、どすどす歩いて行ってしまいました。

 歩くたびに、ポップコーンが、ポロンポロンポロンポロン転げ落ちます。


 ポロン、ポンポン、ファサ! ポロンポロン、ファササ!ポンポンポロロンロン。

 ♪と音楽がきこえるように、ポップコーンがおどります。


 りおちゃんも、それに合わせて、ステップをふみふみ進みました。

 でも、とつぜん、みーくんの背中にぶつかります。


「どうしたの?みーくん。」

「なんだか、お城がこわれそうだみ。」


 近くで見ると、お城はあちらこちらがこわれていました。


 りおちゃんは、「まあ、大変。」と、言いました。


 生クリームの川に行っては、生クリームを桶に入れて、お城に持ち帰りました。


 ぺたぺたぺたぺた、べたべたべたべた。


 こわれた所に、生クリームをぬっては、平らにしました。


「ここには、小さなイチゴの花を飾りたくない?」と、みーくんと相談しては、花を摘んで、イチゴのお城を飾りました。


 みーくんは、体についた生クリームをぺろぺろなめます。


 ペロペロペロペロ、ペロペロペロペロ。


 おいしいのが止まらなくて、みーくんは、スポンジケーキを、ぱくりと食べました。


 パクパクパクパク、パクパクパクパク。


 りおちゃんは、最後さいごにイチゴの花束を作って、お城のてっぺんに飾りました。


 なんてステキなお城でしょう。


 こんなにおいしそうで、ステキなお城は、見たことがありません。


 りおちゃんは、感動かんどうしてながめていました。


 すると突然とつぜん、お城の屋根が、くずれてしまったのです。


「きゃああああああ!」


 屋根がくずれたのと、りおちゃんの叫び声に、イチゴの王子様が出てきました。


「ごめんなさい、王子様。なおそうと思っただけなんです。」と、りおちゃんは言いました。


「ちがうんです。王子様、みーが、スポンジを食べちゃったんです。りおちゃんは、悪くありません。」と、みーくんが言いました。


「大丈夫だよ、二人とも、こんなにきれいに飾ってくれて、ありがとう。」と、王子様は、にっこりほほえみました。

「くずれた屋根はどうしましょう。」


「そうだね。屋根は生クリームでは作れないし、おとなりの、あめちゃんの国のあめ玉姫と、クッキーの国のウエハース王子、大福の国のあんこ姫に助けを求めないと。」と、王子様が言いました。


「わかりました、王子様。りおが、おねがいに行ってきます。」


 そう言って、りおちゃんとみーくんは、おみやげのイチゴをたくさんんで、でかけました。



 りおちゃんとみーくんは、飴ちゃんの国にやってきました。


 白と赤の飴を伸ばして、二つあみにしたステキな柱が、そこここに立っています。

 つややかな街路樹も、おそらく飴でしょう。

 カラフルなタイルの道路も飴に違いありません。


 その奥に、立派なお城がありました。


 飴細工あめざいくのお城です。


 何とみごとな鳥の飾りでしょうか。

 きらきらと七色に輝くお城です。



「イチゴの国のつかいとは、あなたですか?」と、あめ玉姫が声をかけました。


 りおちゃんは、おみやげのイチゴをさしだすと、「イチゴのお城の屋根がこわれてしまったのです。どうか、なおすのを手伝ってください。」と、言いました。


「それは大変、すぐにお手伝いにまいりましょう。」


 そう言うと、あめ玉姫は、荷馬車にばしゃにたくさんの飴をつんで、イチゴの国にむかいました。



 りおちゃんとみーくんは、クッキーの国にやってきました。


 そぼくなクッキーづくりの街並まちなみが広がっています。


 お城もそぼくなつくりになっていました。クリーム色がベースですが、ピンクや黄色のアイシングで、かわいく飾られていました。


「イチゴの国のつかいとは、あなたですか?」と、ウエハース王子が声をかけました。


 りおちゃんは、おみやげのイチゴをさしだすと、「イチゴのお城の屋根がこわれてしまったのです。どうか、なおすのを手伝ってください。」と、言いました。


「それは大変、すぐにお手伝いにまいりましょう。」


 そう言うと、ウエハース王子は、荷馬車にばしゃにたくさんのクッキーをつんで、イチゴの国にむかいました。



 りおちゃんとみーくんは、大福の国にやってきました。


 丸いお家がたくさんあります。緑の丸い木や、丸いお花がさいています。

 まんまるだけの国のように、丸くて小さくてかわいらしい国でした。


 お城も丸くて真っ白です。


「イチゴの国のつかいとは、あなたですか?」と、あんこ姫が声をかけました。


 りおちゃんは、おみやげのイチゴをさしだすと「イチゴのお城の屋根がこわれてしまったのです。どうか、なおすのを手伝ってください。」と、言いました。


「それは大変、すぐにお手伝いにまいりましょう。」


 そう言うと、あんこ姫は、荷馬車にばしゃにあんことおもちをつんで、イチゴの国にむかいました。



 イチゴの国に着くと、みんなは、うーん、と腕組うでぐみをしながら考えます。


 そして、あめ玉姫が言いました。

「スポンジケーキの柱は弱そうです。まず、飴のスティックで丈夫な柱を作りましょう。」


 そして、ウエハース王子が言いました。

「スポンジケーキのかべは弱そうです。まず、内側からクッキーの壁を作りましょう。」


 ですが、あんこ姫は何も言いませんでした。


 飴の柱とクッキーの壁が完成すると、あめ玉姫が言いました。

「では、今度は飴をぬっていきます。」


 ウエハース王子が続けました。

「では、その上に、クッキーの屋根をはりつけます。」


 ですが、あんこ姫は何も言いませんでした。


 りおちゃんは、クッキーの屋根にたっぷりの生クリームをのせ、イチゴの飾りをつけました。


         おおおおおおおおお! 

          パチパチパチパチ!


 みんな、手をたたいてよろこびました。


 ひとりうかない顔をしているのは、あんこ姫です。


 イチゴの王子様が言いました。


「みなさん、本当にありがとう。お茶会の用意ができました。中へどうぞ。」


 お城の中も、生クリームでいっぱいです。


 テーブルには、イチゴの花とイチゴの実のブーケが飾られ、それぞれに、イチゴのショートケーキと紅茶がおかれていました。


 三段になったトレーには、イチゴジャムのスコーンとイチゴのマカロン、イチゴクリームのサンドイッチもあります。


「それでは皆さん、今日は本当にありがとう!」と、イチゴの王子様があいさつすると、楽しい楽しいお茶会が始まりました。


 ひとり楽しくない顔をしているのは、あんこ姫です。


 あめ玉姫が、紅茶を飲もうとすると、ポトンと生クリームが紅茶の中に入りました。

「あら?自動じどうで生クリームが入るようになっているのですか?」


 次に、ウエハース王子のスコーンの上に、ポトンと生クリームが落ちてきました。

「本当だ。自動で生クリームが落ちるようになっているようだね。」


 すると、今度は雨のように生クリームがふってきました。


「わああああああああ!」


 みんなはあわてて外に出ました。


 生クリームの重みと水分で、クッキーは、すっかりやわらかくなって、落っこちてしまったのです。


 またまた屋根がなくなって、ぽっかり穴が開いています。


 あらあら大変。

 このあと、お城は、どうなってしまうのでしょう・・・。 

                              ―つづく                                         

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る