第66話 坑道の戦闘

 俺たちは、鉱山フィールドの出口へ向かって走り出した。

 俺は走りながら指示を飛ばす。


「アンのお父さんたちが先頭で! ミレットは中盤で魔法を使って援護! 殿は俺とアン!」


「いや! それは――!」


 アンのお父さんが何か反論しようとしているが、ここは俺に従ってもらいたい。

 俺はアンのお父さんの言葉を遮ぎる。


「おじさんたちは、疲労もあるでしょう? それに先頭だからって安全ってわけじゃないですよ!」


 コボルトの遠吠えは、今も続いている。

 前方にコボルトの集団が現れるかもしれない。

 そうなったら、アンのお父さんたちが戦って血路を開くのだ。


「わかった! 前へ出る!」


 アンのお父さんたちが、前に出て走り始めた。


 俺たちはいくつかの砂山を越えて、一本道の坑道に入った。

 坑道を抜けた先に出口がある。


 背後からコボルトが吠える。


「ウォオオオ!」

「ウォオオオ!」


 ちらっと振り向くと、コボルトが三匹追いかけてきていた。


「アン! ここで三匹減らす!」


「了解!」


 俺とアンは、狭い坑道の中で全力疾走から急ブレーキをかけ反転する。

 壁ギリギリを走り、追走してきたコボルトに襲いかかる。


 三匹のコボルトは、手にツルハシやスコップを持っている。

 直撃するとヤバそうだ。


 ツルハシを持ったコボルトが、思い切りツルハシを振り下ろした。


「フッ!」


 俺はツルハシをかわし、コボルトの懐に飛び込む。

 体のすぐそばをツルハシが唸りながら通過していくのを感じながら、前方のコボルトにショートソードを突き立てた。


「キャウン!」


 コボルトが短い悲鳴を上げながら崩れ落ちる。

 俺は体を回転させながらショートソードを引き抜き、回転の勢いのままアンと戦うコボルトにショートソードをぶち当てる。


 アンと戦っていたコボルトは驚き目を開く。

 回転で勢いのついたショートソードは、突然横合いからコボルトを襲い脇腹を深く傷つけた。


「キャン!」


 悲鳴とともにスコップを落とし、横腹を押さえて沈み込むコボルト。

 アンは隙を見逃さなかった。


「エイ!」


 アンのショートソードが、がら空きの喉に突き立てられた。

 コボルトの喉からヒューと空気が漏れる音がし、坑道の壁に不気味に反響する。


 俺は低い態勢から左足のふくらはぎに力を込めて、グンと前へ体を押し進める。

 ツルハシを持ったコボルトが事態に対応出来ず呆気にとられていた。


 低く速く移動した俺は、ショートソードを左から右へコンパクトに振り抜いた。


 コボルトの太ももにザックリと深く傷が入り、コボルトが坑道の床に倒れる。

 すかさずアンが駆け寄り、コボルトの首にショートソードを突き立てた。


 コボルト三匹は消えた。


 だが、ほっとするヒマはない。

 俺とアンは、アンのお父さんたちに追いつこうと坑道を走る。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る