第17話 単独撃破

「ミレットの魔法は、あと九発撃てるよね?」


「はい。あと九発です」


 ミレットの魔法攻撃回数を確認する。

 MP切れで攻撃手段がなくなる前に撤退を考えないといけない。


 いや、待てよ……。

 俺は昨晩スキルを手に入れた。

 俺が単独でもホーンラビットを倒せるのか確認をしてみよう。


「ミレット。次のホーンラビットは、俺一人で戦っても良いかな?」


「えっ?」


「万一ミレットのMPが切れた時に、俺一人でも戦えるかどうか確認をしたいんだ」


「わかりました。では、次の戦闘ではわたくしは控えています。危なくなったら言って下さいね?」


「うん。早めに助けを求めるよ」


 一階層で死んだ冒険者がいるのかどうかはわからないが、油断大敵だ。

 ダンジョンから撤退するタイミングを決める意味でも、俺一人で戦う経験は必要だろう。


 ダンジョンの通路を歩いていると、ホーンラビットに遭遇した。


 俺はダッシュして、ホーンラビットとの距離を潰す。

 右手に剣、左手に盾。

 今回はちょっと攻撃的に立ち回ってみよう。


 ホーンラビットが突進してくる。

 俺は盾で受け止めるのではなく、盾で吹き飛ばすようにしてみた。


 バン! と大きな音がして、ホーンラビットが吹き飛ぶ。

 少しはダメージが入っただろう。


 俺はホーンラビットに止めを刺そうと近寄るが、ホーンラビットがシュタッ! と起き上がった。


「むっ……」


 俺は突っ込むのを止めて、足を止め盾を構える。

 ホーンラビットは助走なしで、頭から突っ込んできた。


 助走がないので、ホーンラビットの突進は明らかに力がない。

 俺は盾を右から左へ払い、ホーンラビットを壁へ向かって弾き飛ばした。


 ゴムボールのようにホーンラビットが壁にぶつかり、床に落ちる。

 俺は剣を振りかぶりホーンラビットに止めを刺そうとするが、またもシュタッ! とホーンラビットは起き上がった。


(アジリティ……素早さが高い魔物なのかな……)


 俺がホーンラビットを足止めして、ミレットが隙を突いて魔法で攻撃する。

 一人で戦うと、このパターンが正解なのだと、よくわかる。


 なかなか止めを刺せない展開が続く。

 だが、ミレットの方にホーンラビットを行かせるわけにはいかないので、俺は何度もホーンラビットを盾で弾き飛ばしながらチャンスを待った。


 ホーンラビットは少しずつダメージが蓄積したのだろう。

 徐々に動きが悪くなってきた。


 俺はホーンラビットを盾でいなす。

 ホーンラビットが無防備に横面をさらした。


(ここだ!)


 俺は右手に持った剣を真っ直ぐ振り下ろす。

 剣にしっかりとした感触。


「キュウ……!」


 ホーンラビットは、ひと声鳴くと煙になって消え、ドロップ品の魔石が床に落ちた。


「ふう……なんとかなった……」


 最後の一振り。

 スキル【剣術】の補正が入っているのだろう。

 剣は軽く感じ、剣筋はきれいに真っ直ぐだった。

 盾術と剣術を取得して正解だったな。


 ミレットが、駆け寄ってきた。


「ユウト! 凄いですよ! 一人で倒しちゃいましたね!」


「ありがとう。でも、かなり時間がかかったよね。ミレットの魔法が残り五回になったら、出口へ戻るようにしよう」


 俺の提案をミレットが考える。

 ちょっと首を傾げる仕草が可愛い。


「なるほど……。ユウトは慎重ですね?」


「二人の冒険者パーティーだからね。無理は禁物だよ」


「そうですね! まだ新人だから慎重に行きましょう!」


「生き残れ!」


「ブッ!」


 俺はタイソン教官の声真似と顔真似をした。

 ミレットは、吹き出して元気に笑った。


 さて、ダンジョン探索を続けよう。

 目標はレベル2だ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る