第二章 冒険の始まり(二日目)

第16話 ダンジョン探索

 ――翌日!


 朝起きて冒険者ギルドへ行くと、既に沢山の人がいた。

 出発する冒険者パーティーもいる。


 冒険者ギルドのロビーに入ると、既にミレットが来ていた。

 ミレットの隣には、金属製の甲冑を着た女騎士が立っている。

 昨日と同じ人だ。

 護衛かな?


 ミレットはロビーの大きな掲示板に貼付けてあるメモ書きを見ていた。

 俺はミレットに声を掛けた。


「おはよう! 遅くなってごめんね!」


 ミレットが振り向きニコッと笑う。


「わたくしも今来たところだから大丈夫です」


「何を見ていたの?」


「依頼を色々見ていました」


 ミレットによれば、この掲示板に貼付けてあるメモは、冒険者への依頼なのだ。


 薬草を集めてきて欲しい。

 特定の魔物のドロップ品を集めてきて欲しい。

 隣の城塞都市まで護衛して欲しい。


 などなど様々な依頼が貼付けてあるそうだ。


「俺たちに出来そうな依頼はある?」


「いえ。どれも八等級以上の冒険者でないと受けられません。わたくしたち新人は十等級冒険者ですから、まだ、無理ですね」


 昨日、研修で説明を受けた。

 冒険者のランクは、冒険者ギルドへの貢献度や強さで決まる。

 冒険者ギルドへ、どんどん獲物を売却すれば貢献度が上がり、同時にレベルアップをして強さを上げていけば良いのだ。


「じゃあ、しばらくはダンジョンで魔物のドロップ品集めだね」


「そうですね」


「よし! じゃあ、今日もよろしくお願いします!」


 俺は元気よくミレットに頭を下げた。


「こちらこそ。よろしくお願いします」


 ミレットはクスクス笑いながら、俺に礼を返す。


 護衛の女騎士と別れて、俺たちはダンジョンへ向かった。


 新人からベテランまで沢山の人がダンジョンへ向かう。

 途中の分かれ道で、新人は右へ進み初心者に向いた難易度の低いダンジョンへ向かう。


 幸いなことにジャイルとは出会わなかった。

 ミレットが気にしていたみたいだから良かったよ。


 俺たちは、初心者ダンジョンの一階層に入った。

 ミレットが腰にぶら下げたポーチから、四つ折りにした紙を取り出して広げた。


「ええっと……」


 ミレットが眉根を寄せて考えている。


「どうしたの?」


「わたくし……地図は苦手なのです……」


 意外だ……。

 ミレットにも苦手なことがあるんだ……。


「じゃあ、俺が見るよ」


 ミレットから地図を受け取る。


「これは、一階層の地図?」


「そうです。わたくしの護衛騎士のシンシアが書いてくれたのです。ほら、先ほど冒険者ギルドで会ったのがシンシアです。彼女は元冒険者なのです」


 へえ。それはありがたい話だ。

 色々と教えてもらえそう。


「シンシアによれば、まずはレベル2になることを目標にすると良いそうですわ」


「わかった。じゃあ、この地図を頼りに進んで行こう。今日の目標はレベルアップだね!」


「はい! そう致しましょう!」


 俺が先頭に立ちダンジョンの通路を進む。

 ダンジョンの中は不思議と明るい。

 通路のの天井がほんのりと光っているのだ。

 通路は真っ直ぐなので視界も効く。


 俺は右手に地図、左手に盾を持つ。

 俺たちの他にも新人冒険者パーティーがいる。

 中には地図を持っている子もいるが、脇道にそれていった。

 獲物を探しに行ったのだろう。


 俺は地図に従って、二階層へ下りる階段を目指す。

 五分も歩かずにホーンラビットと遭遇した。


「前へ出る! 魔法よろしく!」


「はいっ!」


 ミレットにひと声かけて俺は駆け出す。

 地図をショルダーバッグに突っこみ、空いた右手で剣を抜く。


 ホーンラビットもこちらに気が付いて、ピョンピョンと跳ねて来た。

 ホーンラビットは、直線的な動きの上に、俺が距離を潰しているので、それほど速度は出ていない。


 俺は余裕を持って盾でホーンラビットの突進を受け止めた。


(おや?)


 盾の扱いが非常に楽だ。

 スキル【盾術】を取得したせいだろうか?


 突進してくるホーンラビットを盾で防ぎ、時計回りに動く。


 これでミレットからホーンラビットが見やすくなる。

 ミレットが狙いを外す確率は減る。


「撃ちます!」


 ミレットから声が掛かった!

 俺は右に飛んで、ミレットの射線から退避する。


「ファイヤーボール!」


 ミレットの杖の先からソフトボール大の火の玉が発射された。


 ゴウ!


 ファイヤーボールは、唸りを上げてホーンラビットに襲いかかった。

 ミレットが放ったファイヤーボールが、ホーンラビットの頭部に直撃し、ホーンラビットは煙になって消えた。


 ホーンラビットが消えた後に、小さな魔石がドロップした。

 俺はドロップした魔石を拾い上げ、ミレットに声をかける。


「さすがミレット! 一発でやっつけたね!」


「ユウトが引きつけてくれたからですわ!」


 二人で微笑み合う。

 初戦から良い感じだ。


 これで俺の討伐ポイントは3。ミレットは6だ。

 レベル2にレベルアップするには、討伐ポイントが10必要だと新人研修で聞いた。


 そうすると、俺は後ホーンラビットを七体。ミレットは四体だ。


「よし! 引き続き探索するよ!」


「了解です!」


 俺とミレットはダンジョンの奥へと進んだ。

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