第15話 スキル取得

 俺はスラム街の家に帰ってきた。

 母親は仕事からまだ帰っていない。


 今のうちにスキルをとってしまおう!


「ステータス! オープン!」


 俺はステータスボードを呼び出して、スキル【レベル1】をタップした。


「おお!」


 思わず声が出てしまった。

 取得可能スキルが表示されているのだ。



 ◆―― ステータス ――◆


【取得可能スキル】


 討伐ポイント1を消費して、以下のスキルが取得可能です。


 ・剣術

 ・盾術

 ・気配探知

 ・火属性魔法


 ◆―――――――――――◆



 今日、研修で見たスキルだ。

 どうやら俺が認識したスキルを取得できるらしい。


 スキルを取得するのに必要な討伐ポイントは1。

 俺は今討伐ポイントを5持っている。

 なら全てとってしまうか?


(いや……火属性魔法は止めておこう……)


 明日、俺が火属性魔法を突然使えるようになったら、いくらなんでもおかしい。

 俺のスキル【レベル1】のことがバレてしまう。


 そう考えると剣術は取得OKだろう。

 今日の研修でタイソン教官から、『剣術スキルを得られるだろう』と太鼓判を押してもらった。

 剣術スキルは取得したとしても不自然さはない。


 盾術はどうだろうか?


 今日の戦闘での役割分担は、俺が前衛でミレットが後衛だ。

 盾術は欲しいスキルだ。


(他の人に戦闘を見られなければバレないかな……? ミレットには、練習したと言おう)


 俺は盾術取得を決める。


 気配察知は、新人冒険者の中で持っている子がいた。

 魔物の気配を察知出来るのだから、かなり有用なスキルに思える。


(まあ、これもバレにくそうなスキルだから取得しよう!)


 俺は討伐ポイントを使って、【剣術】、【盾術】、【気配察知】の三スキルを取得することにした。


 ステータスボードを操作して、討伐ポイントを消費する。


 ステータスボードが変化した!



 ◆―― ステータス ――◆


【名前】 ユウト


【レベル】1


【スキル】レベル1 剣術 盾術 気配察知


【討伐ポイント】2


 ◆―――――――――――◆



「おお! なかなか良い感じだ!」


 やっぱりスキルが並んでいると強くなった気がする。

 これは……明日からの冒険者活動に期待!



「ただいま~」


「お母さん! お帰りなさい!」


 サオリママが帰ってきた。

 俺はサオリママに買ってきたパンを差し出した。


「まあ、美味しそうなパンね! どうしたの?」


「これ、今日の獲物を売ったお金で買ってきたんだ! 一緒に食べよう!」


「ありがとう。ごちそうになるわ」


 サオリママがスープを作ってくれた。

 二人でパンをスープに浸して食べた。


 俺が買ってきたのは、一つ百ゴールドの安いパンだ。

 固くて、そんなに美味しいパンじゃない。


 けれど、サオリママは心底嬉しそうに、俺が買ったパンを食べてくれた。


 俺もサオリママも、とても幸せな気持ちだった。

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