第21話 宅送鳥の便り

 気分が高揚したところで、はい、次に作るのはチーズである。


 とりあえず簡単に出来るカッテージチーズを作ることにしましょうか。


 材料は牛乳、レモン、塩。


 レモンは「神の庭」にありました。名称もレモン。流石だね神の庭。


 鍋に牛乳を入れ、コンロに火を点けて温度が上がりすぎないようにゆっくりとかき混ぜる。


 沸騰する前に火を止めてレモンを入れて暫く放置。


 固形物と水分に分離するのでこれを布で漉す。


 固形物がチーズで水分は乳清。


 乳清はホエーとも呼ばれるタンパク質やミネラル、ビタミンを含む栄養たっぷりの液体なので保存しておく。ドリンクにしても良いし料理に使ってもいいからね。


 とりあえず目的の物が出来た。少し多めに作って保存しておこうかな?


 あっ、そうだ! ダンテさん達に持って行こう。そうしよう。


 ついでにバターとチーズで何か作ってそれも持って行った方が良いだろう。


 そう考えていたら、


 コンコンコン……


 何の音?


 辺りを見回す間もなく寝そべっていたグレンが立ち上がった。


 グレン、本当に猫化しているみたいね。


『カリン、窓に宅送鳥がおるようだぞ』

 グレンが窓の方に顔を向けてその場所を示した。


 ん? 宅送鳥とは?


 疑問に思いながらグレンの言葉に窓の方を見ると黄色い小さな鳥が窓の外でパタパタと羽を羽ばたかせていた。


 両開きの格子の入った窓を開けて小鳥の傍まで行き手をのばすと私の腕に止まった。鳥の頭には赤い色で△を二つ重ねたようなマークがある。この鳥の持ち主のマークだろうか?


 そして、足首を良く見ると小さな筒状の入れ物がくくりつけられてあり、そこに手紙のような物が入っていた。


「あら、手紙?」

 私は筒から手紙を取りだして読み始めた。

 

 ダンテさんからの手紙だった。この世界では鳥を使って伝言をやり取りするのかしら? 伝書鳩のように……。

 そんな事を考えながら読み進めた。


 どうやらセレンさんの妹のドロシーさんが久しぶりにやって来るらしい。ドロシーさんは旦那さんのケリーさんと一緒に行商をしていて、色んな商品を持って度々ダンテさんの所にも訪れるそうだ。


 珍しい商品を持ってくることもあるから私も来ないかとのお誘いの手紙だった。

 

 手紙の返事はこの鳥が運んで来たときと同じように足首の筒に入れるとダンテさんの所に戻っていくそうだ。


 因みにこの鳥、宅送鳥は本物の鳥ではなく魔導具の一種だと言うことだ。(タブレット情報)


 最後にもし来るのなら迎えに行くからグレンに乗ってきてはダメだと書いてあった。きっとドロシーさん達にグレンの事がバレないようにだろう。


 私だってあの時ダンテさんに釘を刺されたのだからグレンのことを言うつもりはない。


 もちろん、グレンに乗って行くつもりだったけど、グレンは認識阻害の魔法を掛ければ他の者を誤魔化すことが出来ると言っていた。だから大丈夫なのに……信用無いなぁ……。


 ちょっとムッとしたけど、これもダンテさんが私のことを心配してくれたんだと気を取り直した。


 ドロシーさん達が来るのは5日後……


 あら、カレンダーがないわ。


 私は前世で予定が入るといつもカレンダーに書き込んでいた。


 うん、カレンダー。必要だわ。後で作ろうかな。


 そう頭の片隅に書き留めて先ずは返事を書くことにした。


 書斎に行くと机の引き出しに予め用意されていたA4より小さめの白い紙と万年筆に似たペンを取りだして「必ず行きます」と返事を書いた。


 ラシフィーヌ様、筆記用具を用意してくれていたのはナイスだわ。


 私はさっきラシフィーヌ様に向かって色々と抜けがあると言ったのをちょっと申し訳無く思った。


 筒の中に手紙を入れると小鳥は、私の頭の上で1周してから飛んでいった。


 あの鳥、便利だわ。私も一羽ほしいわね。あっ、鳥じゃなく魔導具だから一台と言うのかしら?


 そう考えながら宅送鳥を見送り、今後購入したいリストに追加したのだった。



 そうか、セレンさんの妹達が来るのなら多めに何か作って行こう。さて、何がいいかな?


 私はワクワクしながら何を作ろうかと考えを巡らした。

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