第16話:もう大丈夫だから・・・。

一吾と苺が夕食を食べに来ていたレストランにロクデナシ和樹がやってきた。

客に迷惑がかかると思った一吾は、ロクデナシ和樹を促してレストランの

外にでた。

ふたりの動向が気になった苺も、ふたりについて外に出た。


「なんだよ、なんか文句あるのか?、ボンクラ息子」


「人が楽しく食事してる席に、ずかずか乗り込んできて失礼って思わないか? 」


「いいじゃねえかよ・・・俺の彼女に会いに来てなにが悪いんだよ」


「彼女?・・・苺はもうおもえの彼女じゃない」

「苺は僕の彼女だ・・・おまえに苺の彼氏だって名乗る資格はないよ」

「苺につきまとうのはやめろ!!そうじゃないと許さない」


「なにが許さないだよ・・・いちいちウザい野郎だな」


「ロクデナシ和樹、ここで約束しろ、苺に付きまとわないって」


「おまえになんか、言われたくねえわ」


ふたりのやりとりを苺は、ハラハラしながら見ていた。

レストランの前を歩いてた人たちも何事?みたいに立ち止まって一吾と

ロクデナシ和樹の様子を面白半分で見ていた。


「ボンクラ息子、お前こそ舐めた真似すると痛い目見るぞ」


そういうとロクデナシ和樹は、服のポケットからナイフを取り出した。

取り出したナイフを一吾の前でこれ見よがしに振り回した。


「まるでチンピラだな・・・」

「自信がないやつほど、そういうものに頼るんだ・・・」

「悪いことは言わないから今のうちにひっこめろ、おまえこそ痛い目を見るぞ」


「やかましい・・・怖いか、これが・・・」


「お前のために言ってるんだよ、ロクデナシ和樹」


「やかましい!!」


そう口走るとロクデナシ和樹は一吾目がけでナイフを振り下ろした。


一吾は襲ってきたロクデナシ和樹の動きを、さして動くこともなく、右に少し

動いただけで難なくよけた。


よけるが早いか、ロクデナシ和樹の手首を掴むのが早いか、一吾はロクデナシ和樹

の手首を掴んだまま手前にひねり込んだ。

和樹が持っていたナイフが簡単に地面に落ちた。


「いててててて・・・・いたい、いたい・・・痛いって・・・」

「こら、離せ・・・離せよ・・・頼む、頼むから・・・離してくれ」


「和樹くん・・・こっちの手でナイフを持ってたんだから、こっちが

利腕だよね ・・・」

「もし手首が折れたら、どうする?」

「オナニーもできなくなるよ・・・困るよね」


「あのさ、提案・・・手首、折られたくなかったら俺と苺の前で誓え」

「二度と苺には付きまといません、近づきませんって・・・」

「誓わないと手首が折れるぞ」


「分かった・・・分かったから」

「二度と苺にはつきまとわねえ・・・・それでいいんだろ?」


「苺さん、だろ?」


「分かった、苺さんには二度と近寄りません」


「絶対、守れよ・・・もし守れなかったら手首だけじゃすまくなるぞ」

「分かったな・・・・」


「分かった」


和樹が苺に近づかないって誓ったから一吾は和樹を放してやった。


和樹は負け惜しみの悪口雑言吐きながら逃げて行った。

合気道をやっていた日菜太に素人の和樹が敵うはずはなかった。


その一部始終を見ていた通りすがりの野次馬から拍手が上がった。


「苺・・・もう大丈夫だよ」


「イッちゃん・・・イッちゃん・・・私・・・」


「苺、どうしたの?」

「泣かなくていいんだよ・・・ちゃんと片付いたんだから」


「私、心配で・・・どうなっちゃうのかと思って・・・」


「うん・・・びっくりしたよね・・・でももう大丈夫だからね」


「よかったイッちゃんに怪我がなくて・・・」


「言ってなかったけど、僕は子供の頃から合気道を習ってたからね」


一吾は、泣きじゃくってる苺を優しく抱きしめた。


「もう大丈夫だから・・・泣かないで?」


そしたらまた野次馬から冷やかしの声があがった。


「さて、じゃ〜レストランに食事代払ってマンションへ帰ろう?、疲れたろ?」


一吾は今夜はお酒を飲むつもりでいたからミニはマンションに置いてきていた。

だからタクシーを拾って苺と一緒にマンションへ帰った。


でもって、そんな、ハラハラするアクシデントがあった後は、燃えないわけ

ないんだ。


ふたりの気持ちは、ひとつ。

マンションの玄関を入るや否や、待ちきれないようキスからはじまった。

ベッドまでなんか行ってられないって感じで・・・。


結局、ふたりはソファーの上で、燃えまくった。

苺は何回「もっと」って言葉を言ったんだろう。

そのたび一吾は、苺のために頑張ったわけで、結局苺は何度昇天したかも

分からず放心状態のまま一吾に抱っこされてベッドまで連れて行かれた。

そして、そのまま一吾に添い寝してもらって朝まで爆睡した。


あくる朝、目を覚ました苺は、今日まで生きてきて一番心地いい目覚めだと

思った。

昨日の余韻を引きずったままの苺は、この朝もまた一吾を求めた。


つづく。

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