第15話:現れたロクデナシ男。

一吾のマンションに香乃かおりのがたびたびが遊びに来るようになって

一吾にお邪魔虫扱いされた。

それでも香乃は一吾を無視して苺と仲良く女どうし意気投合していた。

香乃に苺を取られた一吾は機嫌が悪かった。


そうして一吾と苺が順調よく愛を育んでいたある日、ふたりのマンションに

ひとりの男が訪ねてきた。

平日、一吾が会社に行ってる間は苺は買い物以外は留守番をしていた。


マンション入り口のインターホンが鳴った。

苺は香乃かと思った。


「かおりん?・・・かおりんなの?」


「久しぶり、苺・・・俺・・・」


「うそ!和樹?・・・和樹なの?・・・あんたなにしに来たの?」


それは苺の全財産をパクって他の女とトンズラしたロクデナシ男だった。


「苺・・・めっちゃいいマンションに引っ越してるじゃん」


「なんで、ここが分かったのよ」


「今時、そんなことちょろいもんだよ・・・」

「新しい男できたんだろ?・・・知ってんだぜ?」


「あんたには関係ないでしょ」

「それよりなんで来たの・・・今更用はないでしょ!帰って!!」


「そんなにつれなくしなくていいだろ?」

「仲良くしようぜ・・・俺たちいい仲だったじゃん」

「俺の中じゃ俺たちまだ終わってないって思ってんだけど・・・」


「なに勝手なこと言ってるの・・・私の大事なお金パクって女と逃げたくせに」

「よくここに来れたもんだわ」

「私はもう以前の私じゃない・・・あんたといた頃の私はもういないの」


「へ〜そうなんだ・・・俺にはいつもの苺だって思ってるけどな」

「そんなこと俺はどうでもいいの・・・また仲良くしようよ、いいじゃん」


「よくない!!」


「さっきも言ったけど、おまえ、男ができたんだろ?それも金持ちのボンボン 」

「金持ちの彼氏なんて、すごいじゃん苺」

「うまくやったよな」


「だから、あんたには関係ないって言ってるでしょ・・・帰って・・・」


「その彼、いい金ズルじゃん」


「なに言ってんの・・・バカ男・・・情けない男・・・最低男・・・もう

どこかへ行って二度と私の前に現れないで・・・」


「俺と寄り戻さないか?」


「まだ言ってる・・・いまさらそんなことできる訳ないでしょ?」

「帰れ!!帰らないと不法侵入で警察呼ぶよ」


「分かった、分かった・・・帰るよ・・・帰るけどまた来るからな」


「二度と来るな・・・顔も見たくない」


「じゃ〜な、苺」


ロクデナシ和樹は、いつものようにヘラヘラしながら帰って行った。


思わぬ訪問者に、その日1日苺は気分が悪かった。

まさか、女と逃げたロクデナシ和樹が戻ってくるなんて思いもしなかった。


もちろんいまさら、ロクデナシ和樹を受け入れるつもりはなかったが、

ロクデナシ和樹が自分と一吾の間に、邪魔に入って面倒くさいことになりは

しないかと苺は心配した。


その不安は当たらずとも遠からずだった。


ロクデナシ和樹は、それからしばらくは現れなかったが、でも一吾と

苺が外に夕食を食べに出かけたレストランにいきなり現れた。


よほど暇なのか、苺の後をずっとストーカーしてたんだろう。


ロクデナシ和樹の魂胆は見え見えだった。

金には不自由しない一吾を彼に持った苺を介して、あわよくば金をせびり

倒そうと企んでいた。

どこまでも姑息でロクデナシ男だった。


だから一吾と自分の間にロクデナシ和樹に入ってこられることは苺には

一番、迷惑、イヤなことだった。


和樹は食事をとってる一吾と苺のテーブルにずけずけとやってきて言った。


「どうも〜お邪魔します〜」


「和樹・・・こんなところまで」


「苺の新しい彼氏が見てみたくてさ・・・」


「苺・・・もしかして、この彼がロクデナシ男?」


「ロクデナシ男?」


「そう・・・ごめんねイッちゃん・・・デリカシーなさすぎ」


「大丈夫、気にしないよ・・・」

「今、苺があなたのことを和樹って呼びましたけど、和樹さん」

「どうです、一緒に食事・・・」


「気取りやがって・・・あんた、どうせ親のスネがじってるだけのボンクラ息子

なんだろ?」


「ボンクラ息子だと?」


一吾は手の持っていたフォークとナイフをテーブルに置いた。

「ボンクラ息子」そのセリフは一吾が一番嫌いな言葉だった。


「苺・・・この彼、帰ってもらっていいかな?」


「もちろん・・・もう私には関係ないもん」


「あんた・・・ここで騒ぐと他のお客さんの迷惑になるから表に出よう 」


「嫌だね・・・」


「行こう」

「それとも無理やり外に引っ張り出されたいか?」


一吾の毅然とした態度にロクデナシ和樹は、たじろいだ。


「わ〜ったよ・・・出りゃいいんだろ」


「イッちゃん・・・」


「心配いらないから・・・」


一吾とロクデナシ和樹がレストランの外に出ていこうとしたので苺も、ふたりの

動向が気にかかってあとを付いて行った。


「イッちゃん・・・ほんとにごめんね」


「ちゃんと決着つけるから・・・二度とこいつが苺に付きまとわないように・・・」

「それと人の彼女を呼び捨てにはさせない」


つづく。

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