第10話:苺の失態。

一度、結ばれてしまえば、あとは関が切れた河川みたいに水が溢れ出す。

一吾と苺は週末会うたびに、当然のようにお互いを求めあった。

一週間が待ちきれないように・・・。


それが恋するものどうしの愛の確認と欲求の解消。


で、そんな日々の中、ちょっとした事件が勃発した。

事件というほどのことでもないか。


それは苺が勤める会社と取引先の会社との懇親会でのこと。

従業員はなるべく参加するようとの上司からの半強制。


意外と酒がいける苺は、一も二もなく懇親会に参加することにした。

マンションにいて一吾とラブラブするのは、少しあおずけしてたまにはハメを

はずしたかった。


その日は昼過ぎからずっと雨が降っていて寒くてうっとおしい日だった。


ごたぶんに洩れず、苺は出てくるビールや酒を試飲するみたいに飲み倒した。

懇親会は宴もたけなわ。

取引先の男子とは初対面だったが、舞子はひときわ可愛いかったため若い男

どもの餌食になった。


勧められるままに酒を飲んで、上機嫌。

気持ちよくなってるところに持ってきて、その中の若い男が苺に絡んできた。

でもって、些細なことで苺はその男と揉めて喧嘩になった。

酒が入って、気が大きくなってる苺は、頭にきたあげくビールの空瓶で

若い男の頭を思い切り殴ってしまった。


殴った男の頭から鮮血が・・・・。

頭って少し切れても、血が大量に溢れ出るんだよね。


さすがに苺も若い男の頭から、溢れ出た血を見てビビって酔いが少し冷めた。

持っていたハンカチで、すぐに男の頭に当てたけど血はなかなか止まらない。

流れ出た血で男の顔は真っ赤に染まっていた。


「ごめんなさい・・・ごめんなさい」

「早く手当しなきゃ・・・そうだ病院・・・」


結局、若い男はそのまま同僚につれられて病院へ行った。

責任を感じた苺も、一緒に病院について行った。

もう懇親会どころじゃなかった。


病院の待合室で苺は落ち込んでいた・・・お酒はダメだね・・・。

そうだね、お酒は人格を変えるからね・・・。

酒の上での失態、トラブルってよくあること。


苺は思い出していた。

苺の親戚のおじさんが、自治会の旅行で観光地へ行った時、旅館の飲み会で、

客どうしが揉めて殴り合いの喧嘩になったのを義憤にかられた、おじさんが

喧嘩を止めようとして、一方の男が持ってたナイフで腹を刺されて

亡くなったことを・・・。

せっかくの楽しい旅行が悲惨なことになった。


喧嘩を止めに入らなかったら、おじさんは死なずに済んだはずのに、おじさんは

まったくの無駄死にだった。

それも酒の上での出来事だった。


苺はそのことを思い出していた。

そしてさらに思った・・・お酒はもう飲まないと・・・。


つづく。

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