第9話:そして結ばれちゃったふたり。

「・・・そうなんだ・・・ちょっと驚き・・・かな」

「でも、苺・・・やっぱり君は面白い」

「あ、ごめんね、デリヘル嬢だったってことが面白いって言ってるんじゃ

ないからね」

「君は僕を、いろいろ驚かせて飽きさせないから・・・」


「今日まで黙っててごめんね・・・隠すつもりはなかったんだよ」

「ただ話すタイミング逃しちゃって・・・」

「ほんとにごめんね、だから私たち別れたほうがいいならそう言ってね」


「あのさ、苺・・・職業っていろいろあるじゃん」


「俺の親父はさ、若い頃ゴミの収集や廃品回収とか人がやりたがらない嫌がる

ことを仕事にして来たんだそうだ・・・汚いとか、不潔とか言われながら、

人から白い目で見られながら、僕たちを育てるためにがんばった・・・」


「でも、そういう仕事をする人がいないと人々の生活が成り立たないだろ?」

「いろんな職業に携わってる人がいるから世の中が回ってるわけだよね?」

「だから、これはいらないだろうって職業なんてないと思うんだ」


「俺はどんな職業の人でも平等じゃなきゃいけないって思ってる」

「偏見を持っちゃいけないって・・・」


「だからデリヘルだってさ、寂しい独身の男性たちが潤ったわけだから」

「それだって立派な職業だって思うよ・・・たとえ他の風俗だってさ」


「だから〜苺が過去にデリヘル嬢やってたって聞いても俺は嫌じゃないし

偏見で見たりしないよ」

「今、やってるよって言われたら、そりゃやめてって言うけどね、僕って

彼氏がいるのにそれはさすがにね・・・」


「だからさ、ちっとも気にしないよ・・・それが俺の本音、答えだよ・・・」

「俺たちが、そんなことで別れるなんて、ありえないでしょ」

「ね・・・回りくどかったかな?」


「まじで?・・・・・・いいんだよ、気を使ってくれなくても」


「だから、気にしないって言ってるだろ?」


「じゃあ、いいのね・・・私でいいのね」


「そうだよ、苺しかいないの、僕には」

「だからこれからも、なにも変わらないから・・・いい?」


「うん、分かった・・・ああ・・・ホッとした」


「それよりさ・・・さっきも言ったけど俺たち付き合い始めてもう一ヶ月じゃん」


「そうだけど・・・?」


「俺たち中学生の恋愛じゃないんだから、いつまでもプラトニックな関係って

不自然だと思うよね? 」


「あ〜さっきの続き?、私が話を止めちゃったから・・・」

「それで?」


「だからさ・・・俺たちもう恋人なんだからさ・・・・そのぉ・・・」

「もう一ヶ月も経ってるわけだし・・・」


「なに?・・・なにが言いたいの?」


「あのさ・・・そのね?」


「もう・・・なに?・・・はっきり言いなさいよ・・・」


「いつまで待てばいいのかなって思って・・・」


「なにを?・・・なにを待つの?」


「エッチ・・・」


「え?・・・エッチ?・・・ああ・・・イッちゃん、もしかして私とエッチ

したいの?」


「それって恋人なら普通の欲求だろ?」


「いつまで待てばって・・・そんなこと私からしようよなんて、いきなり言う

わけないでしょ 」

「そういうのは男性から誘うもんだよ?」

「なに?エッチしたいって私に言えないままずっと我慢してたの?」


「ダメって言われたら、また当分我慢の日が続くだけだと思って・・・」


「あはは・・・私としたかったのにずっと我慢してたの?、おバカさんね」

「私よりイッちゃんのほうが面白いよ・・・もう子どもみたいなんだから・・・」


「そうね・・・でも今日からはもう我慢しなくていいかもよ?」


「え?、それって?」


「イッちゃん・・・来て・・・ハグしてあげる」


「チューもおまけにつけてくれたら、おしっこチビるほど嬉しいかな」


「はいはい、じゃ〜ハグとチューセットでね」


そしてその夜、一吾の希望は苺によって叶えられた。

もう我慢しなくていいんだ。


「君のすべてが見たいから、明かりはつけたままするね」


って一吾は苺に言った。


「薄暗い中でお互いが見えないって楽しくないだろ」


って。


苺は、最初恥ずかしがったが・・・一吾の希望を受け入れた。


一吾も苺もセックスに関しては、はじめての経験じゃなかったが、一吾は苺との

初セックスは、とても新鮮なものだった。


彼にとって、これまでのセックスは愛情のないセックスだった。

心の底からしたいと思った人とのセックスは苺が初めてだったから・・・。


切なさと愛おしさが入り混じった感情・・・一吾は甘えるように苺を求めた。

苺は精一杯の愛情と包容力で一吾を包み込んだ。


一吾にとって夢のような愛の営みは夜のしじまの中に深く溶けていった。


つづく。


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