第7話:オーベルジュだよ、苺ちゃん。

「ホテルって?・・・」


「ホテルはホテルだよ」


「あのイッっちゃんとお会いしてまだ二回目ですよ・・・」

「それでホテルって早くないですか?」


「え?・・・・ダメなの?」


「私、そういうつもりで応募したわけじゃないですから」


「それはないでしょ?苺ちゃん」


「イッちゃん・・・募集の中にこういう項目も含まれてたんですか?

最初っから私の体が目的だったんですか?」


「体?・・・なに言ってんの?」


「もし、そういうことなら私、辞退させていただきます」


「辞退って・・・ん?・・・・」

「あ〜そうか・・・なるほど・・・」

「・・・・・くっ・・くっ・・・あはは、くっくっくっ・・・」


「なにが可笑しいんですか・・・」


「ごめん、ごめん苺ちゃん、君めっちゃはやとちりしてる・・・」


「はやとちり?」


「あのさ、俺の言い方も悪かったけど・・・オーベルジュだよ」


「え?オーベルジュ?」


「オーベルジュってのは郊外にあって食事がメインのホテル付きのレストラン

のことだよ」

「今から、そこに苺ちゃんを連れて昼食を食べに行こうと思ってるんだけど・・・」


「え?・・・ホテルにエッチしに行くんじゃ?」


「エッチ?・・・あはは・・・なに言ってるの苺ちゃん」

「苺ちゃん面白すぎ・・・ますます気に入ったな・・・」

「俺、どんどん苺ちゃんのことが好きになっていくよ・・・」

「どうにかしてよ・・・もう、今すぐ君を抱きしめたい」


「我慢できないよ、抱きしめてもいい?」


そう言うと苺が承諾する前に日一吾は彼女を抱きしめた。


「あ、ああの・・・ちょっと・・・」


「ごめん、衝動を止められなかったんだ・・・いきなり抱いたりしてごめん」


「・・・いいけど・・・」


「心くすぐるボケかまされると愛しくてたまらなくなるんだ」


「あのね、これから苺ちゃんを連れて行くところ、さっきも言ったけど、

オーベルジュってホテル付きのレストラン」


(オーベルジュ?、ホテルじゃないの?・・・詳しく知らないんだけど・・・)

(ホテルにエッチしに行くんじゃないんだ・・・)


苺は一人で騒いで、はやとちりした自分がめちゃ恥ずかしかった。


って、ことでふたりしてマンションに帰って駐車場に停めてある一吾の車で

レストランに向かうことにした。

駐車場に停めてあった一吾の車は・・・?


苺はてっきりポルシェとかフェラーリが停めてあるんじゃないかって思って

たら、ミニって?


「ミニ?・・・ですか?」


「ポルシェとかフェラーリが出てくると思った?」

「あ、いえ・・・」

「いいよ・・・苺ちゃんの顔が意外ねって顔してるもん」

「あ、いえ・・・私、ミニ大好きですよ」


苺は一吾がいかにも金持ってんど〜って見栄っ張りな男じゃなくてホッとした。


「僕はね、車にはそれほど興味ないんだけど今日みたいな日には必要だからね・・・」


(そうだよね、車に興味なくても持ってないとね)


一吾は車の助手席に苺を乗せて郊外の「レボショワール」 というフランス料理のオーベルジュに昼食を食べにいった。

苺が見たレボショワールは蔦の絡まった、感じのいいレストランだった。


一吾にエスコートされてレストランのテーブルについた苺は、珍しそうに

店内を見渡した。


「イッちゃん・・・なんだか高そうなレストランなんですけど・・・」

「いいんでしょうか?」


「苺ちゃん、今日は記念すべき初デートみたいなもんからね、そのお祝い」

「好きなもの注文していいからね」


苺はメニューを見た・・・でも全部フランス語で書かれていてチンプンカンプン。


「あの、私、こんな高級レストラン入ったことないからメニュー見ても分かんない

んですけど・・」


「じゃ僕に任せてくれる?」


そうい言って一吾はギャルソンを呼ぶとテキパキ料理とワインを注文した。


「すごいね、イッちゃん・・・」


「苺ちゃんも来るようになったらすぐに覚えるよ」


しばらくすると苺の見たことない料理がテーブルに次々出てきた。

年代物の美味しいワインも・・・


苺は食べたことない料理にテンション爆あがり、運ばれてくる料理パクパク

ワインガブガブ。


一吾にまた笑われた。


「ごめんなさい・・・私、下品だった?」


「俺はね、ご飯を美味しそう〜に食べる人好きだよ」

「ほんとに苺ちゃんは面白い」

「そんなに綺麗なのに、ぜんぜん気取ってないし・・・そのままって気がする」

「君といると飽きないわ・・・」


「私、なにもしてませんけど・・・」


「いいの・・・君はそれで、そのままでいいんだよ」


「あ〜お腹いっぱい・・・美味しかったです」


苺は、デザートも含め全食平らげた。

まるでご飯を食べさせてない子供みたいに。


「それはよかった・・・じゃ〜もういいね・・・出ようか?」


一吾にそう言われて苺は席から立ち上がろうとして、ふらっとよろめいた。


「苺ちゃん、大丈夫?」


「なんか・・・ワイン飲みすぎたみたい」


「そう・・・じゃあ少し休憩して帰ろうか・・・」

「僕、部屋予約してくるから」


「あ、私、大丈夫ですから・・・」


苺が言い終わらないうちに一吾はフロントに部屋をオーダーしに行って

しまった。


「え?・・・休憩ってまさか・・・ホテル?」


しばらくして一吾が苺の元に帰ってきた。


「部屋取れたから・・・」


「あの、休憩だけですよね、お泊まりとかにはなならいですよね?」


「まあ、場合によってはね、苺ちゃん次第・・・」


「やっぱりそうなるの?」


これでも貞操観念はある・・・もし、万が一なにかあっても苺は、かたくなに一吾を拒むするつもり・・・でいたけど、いざとなったら拒む自信はなかった。


つづく。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る