第4話:元デリヘル嬢。

一吾の「彼女募集」に応募した苺。


運良く?かどうかは分からないけど、他に誰も応募してこなかったことと

一吾が苺を気に入ったこともあって、とりあえず苺は一吾と付き合う

ことになった。


一吾から断られなかったし、苺もやめますって言う理由もなかった。


苺がひとつ心配なことは一吾の性格と女関係。

だいたいにおいて、お金持ちの御曹司なんて親から甘やかされて、お金で

なんでも解決してきたせいで、虚栄心の塊、プライドが高くて常に上目線。

一吾の根性が腐ってたら、この話はないかなって苺は思ってた。


だいたい恋人募集って・・・高額を払ってまで彼女が欲しいなんて変だよね。

よほど女性に飢えてるとか・・・だけと甘王さんくらいのイケメンで

金持ちなら、女性に不自由はしないでしょって苺は不思議に思った。


ただ一吾は金に執着しない女性と純粋な恋愛がしたかっただけ。

あとメイドさんになってくれるって条件を飲んでくれる女性をいちいち

ナンパして聞いて回るわけにはいかなかったからにすぎない。


実のところ一吾が言ったように付き合って見ないと、はじまらないのが男と女。


一吾は一吾で苺に一目惚れはしたが最初っから自分の下心を見せたくなくて

冷静さを装っていた。

本当はめちゃ綺麗で可愛い苺を見て心穏やかじゃなかった。


こんな美人さんが、あんなダメ元な募集に応募してくるなんて、よっぽど金に

困ってるか、他になにか理由でもあるのかと思った。


お互いに愚にもつかないな探り合い。


仕事を辞めた苺はたしかに生活費に困っていたし高額報酬に惹かれたのも事実。

はやく勤め先を探さないと今、住んでる安マンションを出てかなきゃいけない

羽目になる。


で、とりあえずは苺は就職活動を始めなくちゃいけないので一吾との初デート

は週末に、ということに決まった。


「それじゃ土曜日、今度は直接マンションへ来て?」

「それから、どこか飯でも食べに行こう 」

「おいしい食事にご招待するから・・・どう?」


「いいですけど・・・」


ってことで最初のデートの予定が決まった。

お互いの未来はまだトンネルに入る手前、トンネルをくぐってみないと

先の光は見えない。


その間、苺は就職先を探した。

例の高額報酬にはまだありついていなかったし・・・。

催促するのもみっともないと思ったのでクチをつぐんでいた。


で、見つかった仕事は精密部品を作ってる小さな会社の事務。

デリヘル嬢だった時に比べたら報酬は雲泥の差があったけど、今の苺は

生活ができればそれで充分だった。


なんてったって、これから彼になるかもしれない人が大金持ちだから、

うまく行けば玉の輿かもしれないし・・・。


でも苺にとって、ひとつだけ心配なこともあった。

それは苺がデリヘル嬢をしてたことを一吾が知ったら、どう思うだろう

ってこと。


苺はつい最近まで勤めていた店を辞めたばかり・・・その店というのが

デリバリーヘルス・・・苺は数年間デリヘル嬢をやっていた。

デリシャスって店名の大人の国で出張訪問サービス。


ちなみに売春防止法により店舗型のファッションヘルスや無店舗型の

デリバリーヘルス、デリヘルは基本的に本番はない。

だから苺はロクデナシ元彼以外の男性とのセックスはなかった。


別に悪いことしてた訳じゃないし、犯罪も犯してないけど世の中には、

そういうことを嫌う偏見を持った人もいるのは確かだから・・・。


そのことを最初に一吾に言っておいたほうが、彼を本気で好きに、

なっちゃった後から知られるよりはいいかもしれないと苺は思った。

そうなって、そのことが理由で別れようって言われたら最悪だし・・・。


隠したまま、付き合うって手もあったが、苺はそういう隠し事ができない

女だった。

一吾に対して後ろめたい気持ちではいたくなかった。


そして約束の土曜日、初デートの日がやって来た。

舞子は支持されたとおり、スマホを片手に一吾のマンションを訪れた。


苺が尋ねたマンション・・・見上げるほどの高級高層マンションだった。

バロン・ド・メゾン・50階建・大規模免震タワーマンション。


「わ〜すごお〜〜〜」


こんなのがど田舎に?


つづく。



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