第2話:彼女募集に応募してきた女。

「いちご?」


「どうかしました?」


「いやいや、偶然だね・・・僕の名前も、いちごって言うんだ・・・」


「そうなんですね・・・」


「あのそれで、じゃ〜明日、ちょうど会社休みだから、会えるかな?」


「大丈夫です・・・どうすれば?」


「ん〜じゃ猪口駅の横のパンダのオブジェの前でってのはどうかな?」

「分かりました・・・お時間は?」


「あまり早いのもなんだから、コーヒブレイクで10時でどうですか?」


「分かりました、パンダの前に10時ですね」


まあ、とりあえ約束は取れた。

だけど、一吾はあまり期待してなかった・・・会ってげっそりきたら嫌だな

って思った。

一瞬断ろうかと思ったけど、他に応募してくる物好きがいないから・・・。


そして土曜日の10時・・・パンダの前にひとりの女性が・・・。


「まじで?・・ウソ」


なんでウソって思ったか・・・それは一吾が想像してた女性と違っていたからだ。


「見た目だけで言うと、めちゃいいじゃん」


パンダの前には、その女性しかいないから、彼女に間違いないだろう?


「おまたせしました・・・僕、彼女を募集した「甘王 一吾あまおう いちごです」

「はじめまして・・・」


「おはようございます、「幸乃果 苺さちのか いちご」です」


「いちご同士ですね」


会ったばかりなのにお互い顔を見合わせて笑った。

その笑顔がまた可愛かったんだ。


「え〜と、じゃとりえず、この先のカフェで今後のことについお話しま

しょうか?」


彼女、髪はブラウン系で肩まであって小さな顔によく似合っていた。

顔立ちは文句のつけようがない・・・なんとなく日本人離れしててキュート

でチャーミング。

だから一吾はちょっとドキドキした。


(この子がメイドの衣装着て僕の前に現れたりしたら・・・)

一吾の気持はもう先走っていた。


身長はたぶん一吾よりは低そうだから160センチくらいか・・・。


(でも、彼女クラスの女なら男は放っておかないだろうから僕の彼女に

応募して来なくても男に不自由はしないだろうに)


でも後で分かったことなんだが、つい数ヶ月ほど前、苺は付き合ってた

ロクデナシ彼氏と別れたばかりだったのだ。


ロクデナシ彼氏は酒好き、ギャンブル好き、女好き、借金まみれ、最低男と

来たもんで、さんざん彼女に貢がせて彼女を振り回したあげく彼女の貯金を

全額降ろして他の女とトンズラした。


苺もそんなロクデナシな彼氏のことが、つい放っておけず面倒を見てきた。

でも屈辱的仕打ちで彼に逃げられた彼女は、それ以来、男なんか信用できなく

なって半ば人間不信に落ちいっていた。


なのに、なんで一吾の彼女募集に応募したのか?

もう彼氏なんかには興味がないはずなんだけど・・・そこはそれ、やっぱり

お金かな?・・・彼氏うんぬんより生活を優先しなきゃいけないし。

今の彼女が信用できるのは男じゃないってことか。


人を信じられないという点では、一吾も同じかもしれない。


一吾は彼女が多少ブスでも性格さえよかったら我慢しようと思っていた。

でも思った以上どころじゃないくらい、性格はともかくとして見た目は

めちゃいいい女だ。


で、駅から歩いて五分たらず・・・僕と彼女はカフェ「マルガリータ」に

入った。

一息つく間もなく、すぐにウェイトレスが来たから、僕はコーヒーを注文した。

彼女はミルクティーを注文した。


「で、さっそくだけど僕の彼女になってくれるって本当?」


「そのつもりですけど・・・」


「《付き合ってくださる方、高額報酬・高額ボーナス》ってのに釣られてきた?」


「あ〜いや、そういうつもりじゃ」


「いいですよ・・・正直に言ってもらって・・・」


「ごめんなさい・・・そうです・・・高額報酬に惹かれてきました」

「やっぱりダメですよね、そう言うの・・・」


「正直な人ですね」


つづく。


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