約束
「樂間さん。ご飯を食べましょう」
昼休みになると自分の弁当を持った清水が一直線に俺の席までやってきた。その顔は心做しかいつもより固いような気がする。気のせいか?
「そうだな。行くか」
俺も弁当をカバンから取り出し席を立った。そして教室を出る。…今日はどこかからの視線を感じている時間が長く感じた。それもいつもより強い視線だったような気がする。
「どうしたんですか樂間さん。なんとも言えない顔になってますよ?」
「…いや、なんでもない。行くか」
「はい」
俺は深く考えないようにして庭に向かって歩き出した。
「ってことがあってさー。うわっ!旭どうしたの?なんか凄い怖い顔になってるよ?」
「え?き、気のせいじゃないかな?」
「えー?教室の扉を睨みつけてなかった?」
「そ、そんなことしてないよー」
庭についた俺たちは既に定位置と化してきた木漏れ日が当たるベンチに座った。
俺たちはお互い弁当を開けてご飯を食べだした。
いつもならそれなりに会話が弾むはずなのに何故か今日は上手く話せない。何か違和感があるはずなのにその違和感を見つけることが出来ない。
「きょ、今日も相変わらず可愛らしい弁当だな」
俺はなんとか会話をしようと思いそう切り出した。
「ありがとうございます」
だが清水はそういうだけでそこから会話が広がることはなかった。なんだ?何がおかしいんだ?俺はいつも通りだ。これは清水がどこかおかしいのか?
「なぁ清水。何かあったのか?」
俺がそう言うと清水の瞳が一瞬だけ大きくなった。
「…別になんでもありません」
きっと何も無いということはないのだろう。だが本人が話したがっていない。それを無理やり聞き出すというのは違うだろう。
「そうか。ならこの話は終わりだ」
「…聞かないんですか?」
「ん?何も無いんだろ?それなのに何を聞くって言うんだ?」
そう言うと清水は下を向いてしまった。何か気に触ることでも言ってしまったか?そう思っていたら清水がバッと顔を勢いよく上げて俺に肉薄してきた。そして俺の目を見つめてくる。清水の顔はどこか不安げに見えた。
「ら、樂間さん!」
「ど、どうしたんだ?」
かなりの剣幕に俺は少したじろいた。その表情は不安げな表情から何かを決意したような表情に変わっていた。
「こ、今週の土曜日か日曜日、どちらか空いてますか?」
「どっちも特に予定は無いが…それがどうかしたのか?」
「そ、それなら私と一緒に買い物にでも行きませんか?」
買い物って…何か欲しいものでもあるのか?それにわざわざ俺を誘うこともないような気がするが…もしかして本でも買いに行きたいのか?そこで清水の数少ないであろう友達の俺を誘って買いに行きたいということか?
「あぁ、別にいいぞ。日曜日でいいか?」
俺がそう言うと清水は驚いたような表情になった。
「え?そ、それはいいですけど…本当にいいんですか?」
「もちろんだ」
俺も本が好きだからな。今持っている本もそろそろ読み終わる頃だったんだ。清水と一緒に新しい本でも買おう。
「な、なら…」
そこから詳しい待ち合わせ場所や待ち合わせ時間を話し合った。
「ちゃ、ちゃんと行くって言いましたからね!ちゃんと来てくださいよ!」
「分かってるよ。なんだかんだで楽しみだからな」
高校に入ってから初めて友達と遊ぶんだ。楽しみじゃないわけが無い。
「ふ、フフン!そうでしょう!私と遊ぶのが楽しみでしょう!」
もう先程まで感じていた違和感はなかった。いつもと同じように話せている。
「あぁ、楽しみだ」
「そ、そうですか…」
何故か清水の顔が赤くなっていた。どうして赤くなっていたのかは分からない。
あとがき
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幼馴染は難しい! Haru @Haruto0809
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