第28話 ついに魔王を紹介してもらえることになった!
「おぉ、でかしたぞシコル! これは超激レアなお宝だ!」
キモヲッタは《ツルーダのチェキ》を手に取ると興奮で鼻息を荒くした。すっかりご満悦な様子なので、これでやっと魔王を紹介してもらえるはずだ。
「ん? 魔王を早く紹介してくれだと?? まぁそう急かすな。その前にやらなければならない大事な用があるから、ちょっと待っててくれ」
そう言い残すと、キモヲッタはチェキを手に公園内にある多目的トイレの中へと消えていった。
…………。
数分経ってから、賢者のような神妙な面持ちをしたキモヲッタが、チェキをトイレットペーパーで拭いながら出てきた。
ちょ、おーい、そういうことは後でやってくれないか!
しかも、せっかくもらってきたチェキを汚しやがって。どういう使い方したんだよ。だがシコルは、その気持ちはよくわかると言わんばかりに何度も大きく頷いた。
もうやだ、コイツら……。
キモヲッタも用件を済ませてスッキリしたことで、俺たちは改めて魔王の紹介をお願いした。
すると、何やら携帯のようなものを取り出したキモヲッタがどこかへかけ始めた。
ちなみに今更ながら言っておくと、この世界には魔力を使って通話や通信ができるスマホのような道具がある。なので、野暮なツッコミはなしということで。
「あ、もしもし? どーも、つかれーす。どーすか、最近調子は? えぇ、はい、はい……、は? マジすか?? VVIP最前って、マジぱねーっすね! うっわ、どんだけ積んだんすか? はい、はい……、えっぐ! マジすかそれ? わー、ある意味尊敬しますわー。はい……」
えっ、魔王とそんな気軽に連絡取れる間柄なの? ていうか、会話の内容からすると、ただのヲタク同士のやり取りにしか聞こえないんだが。
「……てことで、今からそっちにマジでヤベー奴らが向かいますんで、相手してやってください。……うす。そのことについては後できっちり。……はい、はい。では、しゃーす」
話を終えたキモヲッタは、トイレからペーパーを持ってきて何やら書き殴ると、それを俺に手渡した。
ちょ、トイレットペーパーに書くな!
そしてよく見ると、そこには魔王の住所らしきものが書いてある。本当に合っているのか、これ……。
「魔王にはこれからお前たちが行くと伝えておいた。いいか、くれぐれも失礼のないようにな。怒らせるとマジでヤベーから。それと、手土産も忘れんじゃねーぞ」
何だかヲタクが別のヲタク仲間を紹介するような、そんな軽いノリで魔王を紹介された。
ちなみにキモヲッタ曰く、魔王であるフドーイセイコーという男もやはりドルヲタで、その界隈ではかなり有名な存在らしい。
元々は心優しい氷河期の引きこもりおじさんだったのだが、推していたロリアイドルユニットメス坂69のメンバーがとんでもないメスガキだったことがわかり、すっかり変わってしまったのだそうだ。
極めつけは、その推しメンがイケおじと交際、妊娠が発覚したことで電撃引退してしまったことだった。全財産をその推しメンにつぎ込んでいたフドーイセイコーは、それにより闇落ちして魔王となり、世の中全てのメスガキへの復讐を誓うようになったのだという。
うーん、何一つ共感できる要素も、同情する余地もない……。そして結局のところ、魔王はただのドルヲタを拗らせた氷河期のおっさんということか。
でもこれなら案外、魔王討伐も余裕でどうにかなりそうだ。
そんなわけで俺たちは、ついに魔王のもとへ向かうことになったのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます