第26話 ファイアおじさんにわからせの素晴らしさをわからせた!

 長い間世界各地を巡ってメスガキにまつわる様々なアイテムを手に入れた俺たちは、再びヒョーガキランドのタワマンに住むファイアおじさんの元を訪れた。


 しかし、以前に来た時とは異なりタワマンは廃墟のようになっている。


 エントランスから中へはいると、電源が死んでいるようでエレベーターも止まっており、俺たちは非常階段を使ってファイアおじさんの住む最上階まで上るハメになった。


 すると、3階まで上ったところで早くもヤライソが脱落。続いて、10階付近でシコルも根を上げる。ババアの根性を見せたトヨーコも、20階あたりでついに力尽きた。まぁババアにしてはよく頑張ったと思うぞ。


 俺はというと、レベルやステータスがカンストしていることもあり、最上階まで呼吸一つ乱さずに上りきった。何なら、今からメスガキのわからせ3セットを余裕でこなせるくらいの体力も残っている。


 実際、俺のお目当てはファイアおじさんというよりも、あいつが侍らせていたメスガキどもだといってもいいからな。


 そうした逸る気持ちを抑えつつ、ファイアおじさんの部屋の前に立ちインターホンを押してみる。が、しばらくしても反応がない。


 ドアノブに手をかけると鍵はかかっていなかったので、俺は恐る恐る中へと入ってみる。やはり電気は通っていないため室内は薄暗く、人の気配もない。


 そしてファイアおじさんがいた部屋に行ってみると中は荒れ果て、メスガキはおろかあのおじさんの姿も見当たらなかった。


 んだよ、メスガキをわからせることだけを楽しみにわざわざここまで来たってのに……。


 と、そう思った瞬間――。


「おぉ! キミはあの時の勇者じゃないか! 待ちわびて……ぐぉふうっ!!」

 背後からいきなり話しかけられた俺は、反射的に回し蹴りを繰り出してしまった。


 話しかけてきたのはファイアおじさんで、首や手足、胴体がありえない方向に曲がった状態で壁に叩きつけられている。


 ヤバっ、死んじゃった!? まぁ無職の氷河期おじさんが一人死んだところで別にどうでもいいのだが、こいつからは色々と聞き出さなければならないからな。


 そこで俺は、ファイアおじさんに『サオオル』という復活魔法をかけて生き返らせてやった。


 復活魔法にはHPが全回復して生き返る『サオイク』というのもあるのだが、このおっさんにそれを使うのはMPがもったいないので、生き返ってもHPが1しかない『サオオル』で十分だろう。


「あれ? 僕は一体どうしていたんだ?? そうだ、確か株や仮想通貨が大暴落して、うっ、ううう……」


 生き返ったファイアおじさんに、この状況とこれまで何があったのか詳しく聞いてみた。


 それによると、少し前に起きたコーマンショックにより投資していた株や仮想通貨、土地などが大暴落して全財産を溶かしたのだという。それどころか、信用取引による莫大な追証が払えず、このタワマンも差し押さえられたのだそうだ。


 侍らせていたメスガキたちもみんな去ってしまい、絶望したファイアおじさんは最上階からダイブでもしようかと思っていたところへ俺が訪ねてきたということらしい。


 あれ? そういうことなら生き返らせない方が良かったか??


「ううっ、僕は、僕は金もメスガキも全てを失ってしまった……。僕にはもう何もないし、このまま生きていてもしょうがない。でも死ぬならせめて、せめてもう一度わからせの喜びを味わってから死にたいんだよう! うわあああああん!」


 ファイアおじさんは、まるで出荷される前の豚のように悲痛な泣き声をあげた。その声は俺の心に地味に刺さるものがある。


 俺としても慰めや励ましの言葉の一つでもかけてやりたいところだが、きっとそんなものはこいつにとって無意味だろう。


 今の俺にできることがあるとすれば――。


 床に突っ伏して泣きわめくファイアおじさんの前に、俺は世界各地を巡って集めてきたメスガキにまつわるアイテムの数々を置いてやった。


「ふぁっ!? こ、これは!」


 鼻息を荒くしたファイアおじさんは、ジュポングの女王ハメコがが着ていた《メスガキの羽衣》を羽織り、ベッショリーナからもらったサイン入りおパンツを被ると、メスガキ姉妹の《メスガキのお宝》に頬ずりしたり、メスガキ原住民の土産メスガキのまんげきょうを覗き込んではフガフガと身悶えた。


「ス~ハ~、ス~ハ~、素晴らしい! 何て素晴らしいんだ! これが、これがメスガキの匂い、メスガキの素晴らしさなんですね!」


 どうやらファイアおじさんは、長い間忘れていたメスガキの素晴らしさを再確認できたようだ。


「ありがとう、勇者コドージ。君は僕に本当に大切なものが何なのかを気づかせてくれた。約束通り、魔王のことを知る僕の友人を紹介しよう」


 こうして俺は、ファイアおじさんから魔王を知る重要人物キモヲッタ・ド・ルヲッタを紹介してもらうことになった。


「と、ところで勇者コドージ。せっかくメスガキの素晴らしさを思い出せたわけだし、早速メスガキをわからせたいのだけども……」


 ファイアおじさんは、でっぷりと肥え太った胴体をくねらせながら照れくさそうに言ってきた。


 メスガキをわからせたいと言われても、ここにはもう侍らせていたメスガキはいない。俺としてもそれを期待していただけにがっかりしているところなのだ。


 そこへ、ヘロヘロになりながらも階段を上りきったトヨーコがやって来た。汗まみれでケバケバしいメイクや昭和を思わせる髪型もぐちゃぐちゃになり見るも無惨な姿だ。


 だがここで、俺はふとあることを思いついた。


「トヨーコ、ババアなのによくここまで来れたな。その根性を褒めてやろう。ご褒美といっては何だがちょっとこっちに来てくれ……」


 俺はトヨーコを物陰へと誘い出すと、何かの時のためにと一つだけ隠し持っていたメスガキ草を彼女に使った。


「おぉ! そのメスガキは初めて見るけど君のパーティーの仲間かい?」


 メスガキになったトヨーコを見てファイアおじさんが目を血走らせる。


 ぶっちゃけ、トヨーコの姿は確かに若返ったものの、使ったメスガキ草が長期保存により劣化していたせいなのか、散々パパ活してくたびれたJDのようで全くわからせ欲をそそらない。


 だが、メスガキの素晴らしさを再確認したばかりのファイアおじさんにとっては、そんなトヨーコですら地上に舞い降りた天使のように見えるのだろう。


「こ、このメスガキ、僕がわからせてもいいかな!?」

「あ、あぁ、お前の好きなようにしたらいい」

「おぉ、ありがとう! では遠慮なくわからせちゃいますね! ムフーッ!!」

「ちょ、やめて! あ、あたしはメスガキじゃないわ! っていうか、やるならちゃんとお金払って……、い、いやあああああ!!」


 階段を上りきってくたびれたトヨーコには、もはやファイアおじさんを拒むだけの体力は残っておらず、されるがままになっている。まぁこいつはメスガキじゃないけど、わからせの肩慣らしとしてはちょうどいいだろう。


 ファイアおじさんがひとしきりわからせを堪能したのを見届け、俺たちはタワマンをあとにしたのだった。


 あれ? 結局のところ、俺って今回メスガキをわからせてないよね??

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