第23話 引きこもる氷河期おじさんを更生してやった!
メスシティをあとにした俺たちは、陸伝いに南下して南シャブリカ大陸にあるテマンオチ王国へとやってきた。
その王都の広場に何やら人だかりができており、一人の氷河期おじさんの葬儀が行われているのだという。
「まぁ葬式っていっても本当に死んだわけじゃなくて、社会的に死んだだけど♡」
「どうしてそうなったって?♡ そりゃ女王様はお前らみたいな氷河期おじさんが大嫌いだからだよ♡」
「お前ら氷河期のクソざこみたいだけど絶対に女王様を怒らせんなよ♡」
王都の住民の話によると(いずれもメスガキでわからせ済み)、この国の女王はエロザマス2世といい、以前は心優しいメスガキだったようなのだが、それがいつしか急変して残虐になり、女王の悪口を言った氷河期おじさんは社会的に抹殺されてしまうのだという。
さらに、この国の英雄であるクサイモンというおじさんも、女王が理不尽に煽り散らかしたせいで精神的に追い詰められて、自宅に引きこもってしまったらしい。
それしきのことで引きこもるってどんだけメンタル弱いんだよと思いつつも、かつては俺も引きこもりだったこともありクサイモンには同情を禁じ得ない。それに、このままメスガキに対してずっとトラウマを抱いたままでいて欲しくはない。
そこで俺たちは、クサイモンの説得を試みることにした。
王都の外れにあるクサイモンの自宅を訪ねてみると、年老いた母親が出てきて息子をどうにかしてくれと泣きついてきた。
二階にあるクサイモンの部屋まで案内されると、ドアの前にはお盆に載った食事が置かれたままになっている。あぁ、これはガチなやつだな。
「ねぇクサちゃん、いるんでしょ? お友達が来てくれたわよ。だからここを開けてちょうだい!」
「っせーな! 友達だぁ? 俺にはそんなのいねーよ、クソがぁ!」
中からそんな怒声が返ってきた。友達がいないっていう言葉が地味に心に突き刺さるな。ていうか、クサちゃんに草生えるわ。
「クサちゃん、お願いだからここを開けて!」
「るせーっつってんだろーがぁ! このババア!」
あぁ、何だかデジャブだな、このやり取り……。
俺の経験上、ドア越しから何を語りかけられても無駄なのだ。むしろ、しつこくされればされるほど返って反発してしまう。
「お母さん、ここは私に任せてください」
泣きながらドアを叩いて呼びかける母親をどけると、俺は容赦なくドアを蹴破った。まさに俺が母ちゃんにやられた手法そのままだ。
「な、何しやがる!? 勝手に人の部屋に入ってきやがって、誰だテメーは??」
全裸でお取り込み中だったクサイモンが慌てて服を着ながら怒声を上げる。その容姿は俺らと同類のいかにもな氷河期おじさんだ。
「たかがメスガキに煽られたくらいで、部屋にこもってメスガキのわからせ動画をオカズにこの体たらくとは情けないものだな」
「だ、黙れ! あのメスガキ女王から臭いだのハゲだの、クソざこだのどうせ何もできやしないだの、散々煽られた俺の気持ちが貴様にわかるか!」
「ははは、その程度の煽りで引きこもるなど笑止。お前にこの国の英雄を名乗る資格などない」
「うるさいうるさい! 俺はもう引きこもって、メスガキのわからせ動画を観ながら一人でやっていくと決めたんだ! だからもうほっといてくれ!」
「それは勝手だが、さっきお前がオカズにしていたわからせ動画、観たところそれはお前が個人撮影したもののようだが?」
「ふんっ、だったらどうだってんだ?」
「それは性的姿態等撮影罪だ。おまけに、メスガキならそういう動画を所持しているだけでもアウトだぞ」
「な、何……だと!?」
「それだけではない。不同意性交に児童ポルノ禁止法も追加の数え役満、フルコンボだ」
クサイモンの顔が見る見る青ざめてガタガタと震えだした。まぁそういう反応になるのも無理はない。ていうかさ、お前も前世で氷河期おじさんやってたのならそれくらい常識でしょうよ。
「お前だって臭い飯は食いたくないだろう? なら俺の言うとおりにしろ。決して悪いようにはしない」
「……わ、わかったよ。言うとおりにすりゃいいんだろ、言うとおりにすりゃ」
急にしおらしくなったクサイモンはおずおずと部屋から出てきた。
「よし、行くぞ!」
「えっ? 行くってどこへ??」
「どこへって決まってるだろう、メスガキ女王のところへだ!」
メスガキから煽られたらわからせる。これが真の氷河期おじさんってもんだ!
でもその前にパンツを穿け。ていうか、臭いからまずは風呂に入ってこい。
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