第6話 ロリアマ王にわからせた!
くぱぁの扉を抜けた先は、ヤダーハンから遥か北東の大陸にあるロリアマという王国だった。
俺たちはまず、くぱぁの扉がある祠近くのロリアマ城へ行き国王に謁見した。
「お主ら本当に勇者パーティーなのか? どう見てもただの氷河期のおっさんではないか。それと、そこのババアに用はない。見苦しいからさっさとつまみ出せ」
ゲーミングチェアのような玉座に踏ん反り返るロリアマ王はひどく尊大な態度で、俺たちのことを本当に勇者なのか疑っているようだ。
ていうか、お前も見たところ俺たちと同じような氷河期世代じゃねーか。
しかも、身なりこそゴージャスな衣服を纏っているものの、風呂にもしばらく入っていないような不潔さが滲み出ている。
この謁見の間にしたって、足の踏み場がないほどエロ本やエロゲ、ゴミなどが散乱していて、ただの引きこもり部屋にしか見えない。
「最近、勇者を騙る不逞の輩が多くてな。そこでだ。ヤルタダという盗賊が余の秘蔵しておる《メスガキのわからせブルーレイ》を盗みおってな。それを取り返してきたら、お主らを勇者だと認めよう」
なるほど、ロリアマ王はやはりこっち側の人間というわけか。それならば話は早い。
俺たちはロリアマ王の依頼を引き受けてヤルタダ探しに向かった。
あちこち聞いて情報収集をして回ったところ(いずれもメスガキでわからせ済み)、どうやらヤルタダはロリアマ城から西へ行ったティンポーニの塔をねじろにしているらしい。
早速ティンポーニの塔へ行って最上階まで登ってみると、そこにはまたいかにもな部屋があった。
またこのパターンか……。ドアに耳を当ててみると、室内からメスガキとみられる喘ぎ声のようなものが聞こえてくる。
ヤルタダめ、中で盗んだブルーレイを観てオカズにしてやがるな。
俺は引きこもりおじさんのマナーとして、いきなりドアを開けるようなことはせず、数分間だけ待ってやった。
そして、室内が静かになったのを確認して勢いよく中へ踏み込んだ。
「だ、誰だ、あんたら!? ノックもなしに入ってくるなっての! くそっ、かーちゃんにだって見られたことないのに!」
二回戦目に向けてベストシーンを探している最中だったヤルタダが、見苦しいほどにうろたえながら叫んだ。
「お前が今オカズにしているそれは、ロリアマ王から盗んだ《メスガキのわからせブルーレイ》だろう? 悪いことは言わん、大人しく返してもらおうか」
「ふんっ、俺が盗んだっていう証拠でもあるっていうのかよ? こいつはおれのブルーレイだ!」
ヤルタダは悪びれもせずにそんなことをのたまった。まぁ小悪党ってのはたいていそう言うよな。
「そうか。それならそれで別にいいのだが、お前は一つ大事なことを忘れているようだ」
「はぁ? 大事なことだと??」
「そういう画像を所持しているのは単純所持という立派な犯罪だってことだ!」
「な、何だって!?」
ヤルタダの顔が見る見る青ざめてガタガタと震えだした。
「い、いや、こ、これは俺の物じゃない! これはロリアマの王様の物だ! だ、だから俺は何も悪くない!」
語るに落ちるとはまさにこのことだな。ってうか、俺は何も悪くないって、お前、王様からブルーレイを盗んでるからそれはそれでアウトだからね。
こうして俺たちは、ヤルタダから《メスガキのわからせブルーレイ》を取り返した。
ヤルタダについては、聞くところによると俺たちと同じように日本からこっちへ転生させられた氷河期世代だということで、今回は武士の情けで見逃してやった。
「おぉ、ブルーレイを取り戻してきてくれたのか! どうやらお主らはまことの勇者パーティーのようだな! 礼としてこのブルーレイを焼いてやってもよいぞ!」
「いえ、けっこうです。俺はそんなブルーレイなんかより、リアルでメスガキをわからせていくスタイルなんで」
俺はドヤ顔でロリアマ王に言ってやった。
「何じゃと!? リアルでメスガキをわからせる……だと??」
ロリアマ王はゲーミングチェア風の玉座からずり落ちるほどに衝撃を受けたようだった。
「それと陛下、ひとつご忠告を。そのブルーレイ、持ってるだけで犯罪ですよ」
「い、いや、こ、これは、その……、この前散歩の途中に河原でたまたま拾ったもので、べ、別に余のものというわけではなくてだな、ごにょごにょ……」
見苦しいまでに動揺したロリアマ王が口ごもりながら言い訳をしてきた。
お前、それ秘蔵言うてたやん。ていうか、言い訳が道端でエロ本拾ったような中学生のガキ過ぎる。
この件について、俺はロリアマ王から口止め料として、毎月まとまった額の金を口座に振り込ませることで手を打つことにしたのだった。
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