第2話アメジストの幸福
預かって欲しいと頼まれたのは紫水晶のブローチ。新人研修で上司が社内政治を駆使し、うちに入れた女性は、石が好きらしく。
僕の石をチラッと見て、ニコッとしたら上司が咳払いするを慌てて、自分の仕事に戻り。
後から石を見せてと見たらアズライトって石だと言い。
探していたがわからないままだった石の名前があっさり。
図らずも彼女から聴いて判明した。
石が好きらしく自分が持つ携帯内のマイアズライト写真を見せてくれたが、確かに色形が似ていて。これだと。
そんな、石のやり取りは。
彼氏がいるって上司の誘いを断った彼女も、最近営業成績が良い僕も、社内では何かと咎められるので。
昼ひっそり休憩中に話をしたりした、最初の出会いから数ヶ月後。
ブローチ、預かってと。
彼氏がいるし、一目でアンティーク調、デザインが凝ったものそして、明らかに女性が身につけるデザイン。
僕に頼まなくても、頼み先はあるだろうに僕にと言うのだ。
「結婚を誓う婚約者さん、いるんですよね?」
したいんですけどと曇りがちな顔で彼女は顔合わせが恐ろしく話が進まない、両家族たちが予定合わさない、譲らない仲が縮まらないと、ため息。
で、ふと、
「預かって貰ってみようかなぁって」
このブローチが来てから噛み合わない、は氣のせいかもしれない。知れないけど。石って不思議な事ありますよねー」
先輩の、そのお守り石みたいにと石を握る僕に彼女は再度声掛けするまで預かってと。
また、上手く前みたいに関係良くなるなら例え彼からの贈り物でも、手放すつもりなんだと、譲らず。なかなか高級そうなケースごとブローチを預かる。その際。
黒に近いほど濃い紫石は冷たく表面に付いた女性の横顔のカメオデザイン部分はやたら美しく上気した頬に見え。
早々に蓋をした。厳重に鞄奥にある、営業用いざと言うとかの隠しポケットスペースに。
なんかね、念を入れたくて。
マンション前もうすぐ高いものを気にしながら歩かなくて済む、当たりで。
お兄さんと声を聴いた。
振り返れず、前に身体が倒れ。
鞄を探る音、なんか外国語を呟いて、足早立ち去る。
一撃で、すぐ立てない痛みが腰に。
何とか身を起こした時には姿なし。
幸い誰かが通るような人通りなく、夜の22時で、通報する人や立ち去る姿見る人なんて、いない時間帯。
僕が申し出たら事件になるだろうが、そもそも。嫌な感じ。見つからないか、自分がもっと大変な事に巻き込まれそうな氣がして。
だとしたら、知らないふりがいい。
消えたのは現金や僕の個人私物じゃなく。
あの、石ブローチだけだったから。
そして、今更だが、後輩の新人の彼が外国人だと言う話を思い出し。
彼女から奪われたかと、勘違い?痴話喧嘩かもしれない、いやそうじゃないか?と。
事件じゃないと思い込むことにして、とりあえずまずは湿布を買いに来た道を戻り空いている最寄りのお店を探し、行く。
事件だとしたら警察?今からなんてとてもじゃ無いが後輩のためだとしても、僕はごめんだってね。いるなら明日とともかく痛む身体を横たえた。明日は金曜。明日は休みじゃ無いのだ。
金曜は私用で休み。
土日は勿論休み、で開けた月曜。
新人後輩の薬指の指輪がなくなっていた。
ブローチを奪われ謝る為に話しかけたのだが。彼女の顔は話をする前に落ち込みきっていた。父に言われ無くしたふりをして愛を確かめてはと押し切られ。最初は捨て、かつ、彼に探させて愛を試せみたいな話を言われたが捨てるなんてとてもじゃ無いが出来ず、苦肉の策で、僕に預かって欲しいとブローチをなくす演出のためにしたが。
今度は彼氏との、仲がギクシャクして。
ブローチについてより、よっぽど大事が起きていた。
そこで。
思いついた。
彼に会いたいと。
そう、いや普通に彼氏は浮気を疑っているんではと。
そりゃそう。
自分より相談する別の奴がいたらそれどころじゃ無いじゃん。だから、あれだけ思い切り殴ってくれたのかも、とか。
そして、姿は見ていないが。
確かに声は聴いた。
カフェで、三人で会い、2人を残し僕は帰宅。彼氏に痛い体にタクシーをと言われたが、頑張って断って帰宅。これ以上は関わりたくなくて。
とは言え。
後日。
彼氏名義で、詫び代として、あの時のブローチが菓子折りと共に届き。
同封の手紙から彼女と彼は今駆け落ち新婚旅行に出たし、未来永劫、品物は無くしたと周囲に周知した。返されてもまた家族仲が拗れるそっと受け取って欲しい、だいたい日本に居ないから返品不可、そして。
同じ男として、彼女を守る為に黙ってくれた、ことについて説明と、感謝する、と言う文章が、プローチケース隠しスペースから。
じつは。
彼氏側の家族も、彼女を試したく盗聴機とかカメラを彼女への贈り物に仕込んでいたらしく。2人の仲を裂くために、何か弱みをとブローチケースにも細工をしていたらしく。
ふとケースを撫で、何の違和感かわからないが深くしまいこんだ、自分の直感が大当たりだったと言う事らしい。
世に出たらまた騒ぎになるから、こっそりしまっていていつかほとぼり冷めた頃に何が作り変える職人を紹介する、あと虫は外した、細工はない、安心してくれとそう結ばれた手紙は。
別の日時に果物、石鹸など違うものを段ボール一箱ずつ計五箱他人名義でわざわざ贈りつけてきたそこに、それぞれ解読ヒント法を乗せ送るなどなかなか厳重で。
なんとなく、切手も消印もあるが誰かが直接郵便で出さず手で配達された気もした。
が。まあ、読めた。
とは言え。手元で安全だろうか、僕は。
だけど。家から持ち出す方がすでに、ブローチの足取りを掴ませるかも、少なくとも、彼氏さんほど厳重に移動など出来ないし。
後輩の幸せは大切だ。
うん。
何があった時、考えるか。うん、うん。
どう見ても。ブローチが入るには見えないケースは、カラクリ箱らしく。
この箱の開け方は記載がない。
開かないし下手したらまた、なんか起きそうなのも嫌、だから実際のところブローチがあるかも確かめられ無い、今だが。
知った上でしらばっくれるのが得意じゃ無いから、まあ、知らないままにしよう。
とりあえず、例の贈り物の箱石鹸に紛らわして置こう、そして。
もし、石鹸無くなったら。
ネットで買うか。
ちなみに。
石鹸使い切り見計らい、新婦となった後輩から石鹸がまたお中元的に沢山送られて。
石鹸を買う必要が無くなり。
石鹸だけやたら高級な、生活、となり。
2人とは長い付き合いになるが、それは、この時の僕は知らない、先の話。
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