第32話 救出
椅子に縛られて目隠しをされているレイは口も閉じられているのでウララに声をかけてやることも出来ずましてやどんな目に遭っているのかも分からない。ただ自分とは離れた場所にいて暴漢二人に脅されいるのは声の方向で何となく分かる。
いつも間にか母性というかウララに情が湧いたレイは兄として男としてこのままじゃ立つ瀬がない、なんとか助けてやらなければと焦っていた。
「この黒髪の女ども顔が似てねぇか? どうも日本人っていうのは皆同じに見えるな」
ミッキーはどうやらレイとウララを見比べていたようだ。
「ふん、見分けがつかないのは観察力がないからだ」と丸岡らしき男が興味なさそうに言う。
「そうか、それにしたってこっちの大きい女は俺好みでたまんねぇぜ」
ミッキーは我慢しろと言われているのも忘れてレイの足を撫で始めた。慌てたレイは足をばたつかせて抵抗すると「こいつ、マジで足癖悪いな、見た目とは大違いだ」とミッキーが一気にレイの股間まで手を突っ込んだ。
「?」
「!」
驚いたのは両方だがミッキーが何か言うよりも先にレイは椅子ごと立ち上がりその場で闇雲に回転して椅子をまんまとミッキーにぶち当てた。縛りから外れた椅子と人がガン、ドン、と鈍い音をだして倒れたようだ。ただ、そのすぐ後にガチャっという嫌な音が聞こえた。
バンッ
発砲音がしてレイは自分が撃たれたのだと思った。
「レイ!」ディーノの声が聞こえた、幻聴だろうか。
「レイ、大丈夫か僕だよ」 へたり込んでいたレイにディーノが駆け寄って抱きしめる。
「ディーノ」とだけ一言いうとレイは気が抜けてそのままディーノにもたれかかった。大好きな人の匂いと心地いい体温に包まれてこのまま寝てしまいたいと思う。ディーノはレイの目隠しと口を塞いでいたものを優しく取っておでこにキスをした。
途端にレイは目が覚めた。お姫様かよ。
「グリズリー! 何でお前が俺を撃つんだ」
腕を撃たれたミッキーが吠えている。丸岡は鷹東怜に拘束され、ウララは若い男に助けられている。ウララは「モモ、モモ」と呼びながら男の胸で泣いていた。二人は知り合いなのだろう。良かったとほっとしたレイだがあることに気が付いた。
「俺があそこにいる」
レイは丸岡を拘束している男を指さした。
「やぁ、初めまして。会いたかったよ、鷹東怜さん」
その言葉聞いて丸岡とウララが驚いた。
「どういうことだ」
「こういう事」と特殊マスクを顔から外した男がにっこり笑う。
「お前は誰だ」と丸岡が拘束から逃れようともがくが「今ちょっと言えないから後にしてくれ、名前はJで」とその場にいる皆に対して言ったが聞いてない一人がまた吠えた。
「グリズリー、てめぇ無視してんじゃねぇ、 G.P. と敵対してタダで済むと思うな」
「ああ、 G.P. のアジトはバルドファミリーが壊滅させたみたいだね、いやあイカサマだけじゃなくて売上金まで盗もうとしたんじゃ仕方ないなぁ」
クククとJは口元に手をやって笑った。
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