第29話 攫われたレイ
ホテルの駐車場で車を待機させていた桃木は暇を持て余して猫と遊んでいた。
ドタドタという重い響きが足元に伝わって誰かが重い荷物を運んでいるのが何となく分かる。その振動に反応したのか猫が逃げてしまったので立ち上がって足音の方向を見ると、丸岡と仲間らしきギャングがドレスの女二人をミニバンの後部座席に押し込んでいるところだった。
黒髪にあのドレス。明らかにウララだった。
「お嬢!」
バンッとミニバンのドアが閉まる音ともに車が発車する。桃木はベンツに乗り込んでミニバンの後を追った。
* * * *
パーティー会場のフロアから出たレオナルドたちは休憩室として開放されていた部屋の一室に入ってドアを閉めた。
「さて、どこから話してもらいましょうか」とレオナルドが口火をきる。
「まぁ待て、まだパーティーは途中だ。鷹東怜の肉を欲しがっている獣に餌をばら撒いてやったからな。本物が狙われないように俺に協力した方がいいぜ」
「なっ、お前は何だ、どこまで知ってるんだ」とディーノが拳を握って男に突っかかった。
「そんなに怒ったら色男が台無しだぞ。あの日の熱烈なキスは見てるだけでイキそうだったのに」
「あのドローンは君か」とレオナルドが冷静にいう。
「あれは直ぐに打ち落とされて役に立たなかったけどな。流石マルコーニの兵隊さんは腕が違うよ」と呆れたように言う男にディーノはイライラした。
何が目的か分からないこの男に二人は次の言葉を探してしばし沈黙したがスマホの着信音で事態が変わった。
「君の大事なフィアンセが拉致られたようだよ、目的はウララの方だろうけど」とあっさり言った。
「どういうことだっ」
ハッとしてレイの姿を探すがいるはずがない。ウララを追っていってしまったのだ。
「お前の仕業か、レイはどこだ」
ディーノは我慢できずに男に殴りかかろうとしたがレオナルドに止められる
「ディーノ、君らしくないよ、冷静になって」
「ふー、怖い怖い。鷹東怜が心配なら俺の言う事を信じて黙ってついてくるんだな。詳しい話は車の中でする」
「レイが鷹東怜だと知っているのか」
「もちろんだ」真剣なまなざしで言う男にレオナルドは少し考えたがディーノは直ぐに行動した。
「分かった、一緒に行こう」と男の腕をつかんだ。
「ディーノ、危険だ」
「レイが拉致られた、助けに行く、それだけだ。レオナルドは残ってくれ。まだここで何が起こるか分からないから」
男は腕を掴まれたまま両手を上げて首をかしげレオナルドに「そういう事らしい」と言って空いた腕の方で後ろ手に手を振った。
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