第24話 塀の外
ジャックはレオナルド・マルコーニの住む邸宅の近くまで来て口をあんぐり開けていた。
「なんだ、この警備は。どんだけ防犯カメラつけてるんだ」独り言ちたあと、作戦を変えることにした。
配送員でも中まで入れてくることはないだろう。門扉で受け渡して終わりだ。中身が空っぽだったりしたらその場であの世行きかもな。
邸宅の周囲を配送車で怪しまれないようにぐるぐると周りいいものを見つけた。高い木に擬態させた携帯電話基地だ。
電気工事に化けてあのてっぺんに上って中を覗けば様子が少しは分かるかもしれない。ジャックはスコープを持ってかなり高い携帯電話基地に登る事にした。
地上30mの高さは思った以上に風が強くかなり危険だったが登り切ってしまうとほどほどの広さがあり余裕で座る事ができた。邸宅まで距離があるし木製の針葉樹の葉を模した塊が容易に人の姿を隠してくれるだろう。
早速スコープで敷地を探っていたジャックは庭園に人影をみつけた。
金髪の青年と黒髪の女性だった。
「へぇ、これは絵になる美男美女だ」
敷地の人影は二人だけだったので次に3階建ての建物の方を観察すると窓越しに何人かと屋上には数人のライフルを持った男がいた。屋上の四方に陣取って見張りをしている。
そのうちの一人が庭園に向かってライフルを向けたので何かあったのかとジャックは銃口の先を追った。
するとそこには先ほどの金髪と黒髪の女が抱き合ってキスをしているのが見える。
「おいおい、仕事しろよ兵隊さん」と苦笑いしながら「あのイケメンやるなぁ、どっちも美味しそう」と二人のキスを最後まで見ていた。日が暮れてきたので改めて次の日に登ることにしてその日は退散した。
翌日はスコープとドローンとタブレットを持って登る。
玄関周りには特に動きはなく、屋上にはいつも通りに私兵がライフルを持って監視してるがここには気が付いていないようだ。景観を損なわないように作られた携帯電話基地は高く聳える針葉樹に紛れて見ごとに擬態しているからだ。
この日は午前中からスコープで覗いていたが昨日の黒髪の美女はいなかった。代わりに現れたのは写真で確認していたレオナルド・マルコーニと昨日の金髪イケメンだ。なにやら親密そうに話している。
ここからでは勿論なにを話しているかは分からない。せめて近くで写真でも撮れないかいとドローンを飛ばすことにした。
真上に上げたドローンを徐々に高度を下げて邸宅に近づけていく。塀もかなり高いのでそこのギリギリに合わせて滞空すればなんとかいけるかもしれない。
タブレットを膝において映し出される画面と肉眼で調整していたが上手く近くまでいけた。と思ったらなんとドローンめがけて射撃してきた。あんな小さいものを2発目で当てるとは。流石だな。
これ以上は無理だと判断したジャックは金髪イケメンの後をつけるのが早いと判断し、そのあとは配送ドライバーに化けて近くで待機することにした。
その日の午後遅くマルコーニの邸宅から一台のスポーツカーが出てきた。二人乗りのそれには金髪の男と黒髪の男が乗っている。黒髪の男は鷹東怜だ。
「見つけた」
ジャックは尾行を気取られないようにかなり後ろからつかず離れずついて行く。
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