第7話 ディーノとニーコ  (4日目2)

 ニーコが持ってきた朝食は腹をすかせた男三人であっという間に平らげた。いつもは朝食を食べないというディーノもたくさん食べていたようでニーコにどうしたんだと揶揄われていた。

 

「ところでお前ら昨日はまさかベッドで一緒に寝たとか言うなよ」ニーコは冗談なのか真剣なのか分からない声のトーンで聞いてくる。


「それがさぁ、レイが意外に激しくて驚いたよ」


 ブッーーーーー


 コーヒーを吹きだすニーコを横目にうーんと両腕を上げてディーノが猫のように伸びをした。


 ギリギリしているニーコを無視して「激しかったって、何が?」とレイがキョトンとして言うとディーノが「イビキだよ、他に何があるの? あははは」と愉快そうに笑う。それを聞いたニーコがジト目になってレイを睨んだ。


 ひょっとしたらどうやって寝たのかが心配でわざわざ朝食を買って来たのだろうか。ニーコって以外と可愛いなとレイはブルーグレーの髪をガサガサかいている男前を少し見つめてしまった。きっとディーノもそう思ってるのだろう愛おしそうな目でニーコを見ていた。


「ほんとお前、僕の事好きなのな」とディーノがニーコに笑っていうと


「オレはディーノのオヤジさんからいろいろ頼まれてんだよ」とすねた。


「お目付け役なんてニーコも損な役回りだよね、忙しいのにさ」とディーノは手持無沙汰に自分の髪をいじりながらディーノが言う。長い指でくるくる巻かれた金髪はとても柔らかそうだ。


 ニーコとレイはディーノの横顔にしばし見惚れてしまった後で、お互いに意味なく咳払いをして空っぽのカップを同じように飲もうとしてやめた。


 二人して同じ事をして何だかおかしくて顔を背けながら二人でクスクス笑ってしまった。


 ニーコはブルーグレーの髪を前髪は長めに後ろは短く刈り上げた若さ溢れるイケメンだ、口は悪いけど裏がない好ましい人間だと思う。レイは手に持っている空っぽになったカップをもてあそびながらチラチラとニーコを見た。


 その様子を見ていたディーノはレイからカップを奪ってキッチンに行き、おかわりのカフェオレを持ってきてくれた。さりげなく気遣いができてマメなイケメンはさぞかしモテるだろうなと感心してしまう。


「オレもおかわりー」横で殺気を放っている生き物はあえて見ないようにした。



 その後これからの食事の事を話し合った。基本的には材料があれば朝食はレイが作ると申し出て、昼はレイ一人なので適当に作るかデリバリー、夜は仕事から戻るときにディーノがテイクアウトか材料を買ってくることになった。


 奴隷も同様の分際でなんとも優遇されているように思えたが仕事を手伝う事と掃除洗濯など家事をレイが全てやることで一応決着がついた。これで借金が返せるはずがないけど。


 レイが着ていたスーツは仕立のいいオーダーメードだが爆発のせいで左側が焦げたり穴が空いたりして着られる状態ではなかったので今はディーノの服を借りている。


 二人の身長はほぼ同じなのでサイズ的に違和感はないが少し派手めなのでレイには気恥ずかしかった。ニーコに言わせると全然似合ってないらしい。


 そのうち買い物に出かけられるようになったら一緒に服を買いに行こうとディーノが提案してくれたので、よければこのスーツをオーダーした店にも行ってみたいとお願いしてみた。


 レイが着ていたスーツのタグに刺繍されている店名は有名な仕立て屋さんらしく庶民が気安く入れる店ではないので何かの手がかりが見つかるかもしれないと思ったからだ。

  

 オーダーメイドなら客の記録が残っているはずだ。元の持ち主について何か分かるかもしれない。何もしないでこのままいるよりは動いた方が今後のためだろう。この提案はディーノも最もだと快諾してくれる。


 レイはその後、ディーノのオフィス件自宅に住みPCで調べ物、あとは書類の整理に家事などをしながらこの世界を知るためにいろいろと探ってみた。


 大した情報は得られなかったがそれなりの収穫もあったと思う。ここで生きていくためには知らないといけない事が多すぎる。

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