第15話 ジャドウの土下座!
「夜中から朝方までお前が戦い続け奴を太陽の下へと誘い出すのだ。そうすれば跡形もなく消滅させることができ、世界は救われる。吾輩は不死身であれど力がない。
不動が相手をすれば流動人間以上の被害が街に及ぶ。お前にしかできぬ仕事だ。
スター様にもできぬ。
あの方は時空操作ができるが、時間を停止しては意味がないし、朝方まで時間を進めれば異様な速さに奴が気づかぬはずがない。あくまでも戦いに集中させ被害を最小限に抑えることこそが肝心なのだ」
「……無理です。わたしにはできません……ロディさんもジャドウさんも不動さんも川村くんも星野くんにもできなかったのに、どうしてわたしにできるのでしょう? 自信がありません。それに、ジャドウさんのやり方は嫌いです。いくら流動人間さんの戦術を見極めるためとはいえ、仲間を犠牲にするなんて酷すぎますっ」
美琴の非難にジャドウはわざとらしくため息を吐き出すと、深々と頭を下げる。
「美琴よ。吾輩が気に入らぬのは構わぬ。作戦が気に入らぬというのも結構。しかし、流動人間の討伐にはどうしてもお前の力が必要なのだ。川村と星野を黙って犠牲にしたことに関しては本当に申し訳ないと思っているのだよ。この通りだ」
頭を下げるだけではなく土下座までして頼み込むジャドウには美琴だけではなく不動も呆然としていた。
普段、スター以外には尊大な彼がここまで低姿勢になるのは珍しい。
素直に謝罪され虚を突かれた美琴はあわあわとしながらも立ち上がるように言って微笑む。
「そこまで言うのでしたらわたしもやれるだけのことはやってみたいと思います。
川村くんと星野くんの件を謝ってくれたのですから、わたしはそれだけでいいのです」
「美琴よ! ありがたい! 心の底から感謝する。ありがとう!」
「いえ。それほどでもありません。
お礼を言われるのは流動人間さんに勝ってからです」
「うむ……それもそうであったな。では、重い期待かもしれぬが頼んだぞ」
「はいっ!」
元気よく頷く美琴に背を向け、ジャドウはポツリと言った。
「夜までには時間がある。少し外を散歩してはいかがかな?」
「そうですね。素敵な出会いもあるかもしれませんし、行ってきます!」
いつもの微笑を浮かべて美琴は医務室を出て行った。
それを見送ってから不動はジャドウの背を一瞥する。
額からは冷たい汗が流れ、苦い表情をしている。
「俺には決してできぬ芸当だな」
「お褒めにあずかり光栄ですな」
背を向けたジャドウの顔には悪魔の如き凶悪な笑みが広がっていた。
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