第11話 癒しのシャワーとジャドウ第二の作戦

美琴は綺麗に長い黒髪をシャンプーとリンスで洗い、細くしなやかな身体に石鹸をつけて汗や汚れを洗い落していく。お湯が彼女の身体にあたり心にたまった悩みも一緒に流してしまう。白い湯気に浴室が包まれて、心地よくなった美琴は身体を拭いてパジャマに着替えてドライヤーで髪を乾かす。サラサラの髪が温風に揺れる。


「いつもは温泉ですけれど、たまにはシャワーもいいものですね……」


ベッドに横になると夢の世界へと旅立つ。明日への英気を養うのだ。

翌日。朝早くから会長室に集まった美琴は不動とジャドウと共に今後の作戦を話し合っていた。


「流動人間さんの居場所はわかりますか?」

「案ずるな。奴は今頃日本に到着しておる」

「何っ、ならば今すぐ往生させてやるっ」


ジャドウの返事を聞くや否や席から立ちあがる不動をジャドウは手で制し。


「慌てるでない。お前が出撃せずとも手は打っている。吾輩たちはのんびりと酒でも飲んでいればよい」

「自信満々だが根拠はなんだ」

「奴はデパートに向かっている。そこでは今日、何が行われるか察しがつくかね?」

「知らぬ」


不動の答えに満足したジャドウは含み笑いをしてから空のワイングラスに酒を注いで、深々と芳醇な香りを吸い込んでから唇を湿らす程度に飲み、話を続けた。


「デパートの中央広場において変身ヒーローショーが行われる。子供が実に楽しむ芝居だ」

「それじゃあ子供たちが危ないじゃないですか!」

「そこに誰がいると思う?」

「誰って――」


言いかけた美琴は不動と顔を見合わせた。彼も同じ答えにたどり着いたらしかった。


「星野天使(くん)!」

「左様。ついでに川村猫衛門(かわむらねこえもん)もいる。スター様と連絡を絶ったのはどうやらコレが目的だったようですな。偶然に巻き込まれれば、さすがの奴も天使としての使命をせずにはいられまい」


星野天使(ほしのてんし)は不動仁王の父違いの弟である。少年だが格闘能力は不動に、耐久力はジャドウに匹敵するほど高く、重要な戦力のひとりだ。

川村猫衛門は全宇宙最強クラスの剣術使いである。スピードにおいては最速を誇る。


「ふたりがいれば心強いかもしれませんが、本当にわたしたちがいかなくても大丈夫でしょうか?」


眉を下げて困った表情を見せる美琴にジャドウは杯を煽って告げる。


「お前の出る幕はまだ早いですな。まずはあの人工生命体を見極めるのが先決。

それに吾輩はいつでも奥の手を用意していますからな。招集をかけるときに備えて、今は十分に休息をとることをおすすめしますな」

「俺は修行をするとしよう」

「それではわたしはレストランに行きますね。お腹を満たしたいです」

「では各々に楽しむとしよう」


こうして朝の作戦会議は終了し、彼らは別れた。

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