第7話 流動人間あらわる!
アメリカは大都会ニューヨークの排水溝からどろりとした金色の液体があふれた。
液体はみるみる間に変化を遂げていき、筋肉質の人型となった。
顔には目も鼻も口もない。
大男が全身タイツを着込んだような異様な風体だが、彼は気にする感覚を持たない。
男の仮の名は流動人間。アメリカの研究所が開発した人工生命体である。
当初は生物兵器として各国へ売り渡す目論見があったのだが、その試作品第一号が装置を破壊して脱出。
新たな同種を生み出せないようにと設計図やパソコンも含めて徹底的に破壊してから研究所から脱走したというのが、この生物の恐るべき知能の高さを物語っている。
彼は再び液状型になると俊敏に移動し、夜の金門橋へ。
そこで再び人型になる。
突然にあらわれた奇怪な男に人々が面食らう。
と、男は腕を伸ばして暴れ始めた。
道路を走る車を鞭のようにしなる腕で殴打し横転させたり、ガラスを割ったり、アスファルトを持ち上げ、波打たせて車を次々に衝突させていくという大事故を発生させていく。
流動人間に目的などはない。仮にあるとするならば自らの力を誇示することのみだ。
異常事態に人々はパニックに陥り、蜘蛛の子を散らすように去っていく。
星の瞬く夜に黄金に輝く怪人は無残になった車を相手に腰に手をあて仁王立ち。
「警察だ。動くな!」
拳銃を向ける警官の声に反応して振り向いた流動人間は警告を無視したと判断され、発砲を受けた。が、元より不安定な肉体に銃弾などは効果がない。
水に銃弾を放っても波紋が広がるだけで何ら損傷はないのと同じである。
流動人間はプルプルと身体を震わせたかと思うと両腕を何倍にも巨大化させ、掌で警官隊を圧してしまった。
応援に駆け付けたパトカーも口から吐き出す水流に成す術もなく破壊されていく。
橋の真ん中で警官も民間人も絶望しかけた刹那、彼らの前に希望があらわれた。
長い黒髪に白を基調とした忍者装束を着こなした長身の若い女性、闇野美琴(やみのみこと)。
腰までかかる茶髪に端正ながらも凶悪な顔立ち。特に猛禽類を彷彿とさせる鋭く威圧的な眼力が特徴的な半裸の巨漢、不動仁王(ふどうにおう)。
白髪をオールバックにした老紳士のジャドウ=グレイは長身痩躯の身体に白の軍服を着ている。
闇夜に照らされジャドウと美琴の白が際立つ。
絶体絶命の危機にスター流が駆け付けたのだ。
ジャドウは立派な口髭を一撫でし、鞘からサーベルを引き抜くと月明りに照らした。
「偉大なるスター様の命により、下らぬ化け物を冥府へ案内するとしよう。
悪をもって人を救いに導く吾輩、ジャドウ=グレイが直々に」
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