第6話 腹が減っては戦はできぬ。
テーブルにおかれた三角形の巨大おにぎりを一瞥し、ジャドウはぎゅっと唇をかみしめた。
彼は普段食べ物は一切口にせず、もっぱら酒ばかり飲んでいる。
美琴が作った握り飯を食べる理由がどうしても見当たらない。
そこで、不動に差し出す。
「お前の方が燃費は悪いであろう。吾輩は腹は減っておらぬのでな、食べてよいぞ」
「握り飯ひとつ食べることができんとはガキに堕ちたものだな」
片頬を上げたニヒルな笑いをこぼす不動にジャドウは憤慨した。
表情こそ平静そのものに見えるが内面は怒りのマグマが噴き出している。
両腕を震わせながらもおにぎりを掴む。
不動は自分より劣るものを年齢や性別地位に関係なく全て「ガキ」と呼んで見下す癖がある。
彼から名前を呼ばれることはスター流において一種のステータスにもなっているのだが、ここにきてガキ呼ばわりされるのはジャドウとしては我慢ができない。
意地でも完食しなければ。
豪快にかぶりつき頬をリスのように膨らませてむしゃむしゃ。
「ジャドウさん。おいしいですか?」
「米の炊き方も海苔の巻き方も見事。さすがは毎日作っているだけのことはある」
「ありがとうございますっ」
にこっと笑って軽く頭を下げる。顔立ちが整った美琴の笑みは高校生男子ならば惚れているところだが、ジャドウは眉ひとつ動かすこともなく食事を続けるのだった。
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