第5話 美琴はそれでもジャドウを信じる
スター流の創設者であるスター=アーナツメルツは何か事件や敵が現れると指示を出したあとはすぐにコンツェルンを離れ、どこかへと姿を消してしまう。
自分ではいっさい戦おうとせず優雅に暮らしているばかりの姿勢は弟子たちからも不満が噴出しているものの、昔からずっと変わらないのであきらめているメンバーが大半である。
最古参メンバーである不動が指摘し続けているものの、スターは変化なし。
師匠の言い分も一定の理があるだけに、はぐらかされた感覚が強い。
不動は歯を食いしばり窓に睨みを利かせてから、美琴に振り返った。
「今はガキ共の平和を守ることが最優先だ。美琴、俺たちだけで行くとしよう」
「そう、ですね……」
美琴の目が泳ぎ、彼女の視界が捉えたのはジャドウだ。
「ジャドウさん。今回こそはさすがに力を貸していただけますよね?」
期待と不安の混じった質問を投げかけるとジャドウはしわだらけの顔で不敵に笑った。
「左様」
立派な白髭を撫で、冷たく黒い瞳で美琴を見下ろしているジャドウ。
美琴はこの男に幾度も裏切られ続けてきた。大切な局面で敵に回って場を乱す。
全てはスターのためにと唱えて泥をかぶり続ける老紳士の姿に美琴は同情していた。
ムースもヨハネスも川村も星野もカイザーもいない。
頼りにできるの不動とジャドウだけなのだ。
特にジャドウは流派きっての知恵者なのだ。
スターからの指示だから裏切るとは考えにくいが、万が一ということもありうることだ。
しかし、それでも――美琴は彼が力になってくれると信じてしまうのだ。
彼女は会長室を出たところでふたりに振り返って。
「まずはご飯にしましょう。腹が減っては戦はできぬと言いますし。
おいしいおにぎりを作りますね」
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