文学20
人生は作るものだ。必然の姿などというものはない。歴史というお手本などは生きるためにはお粗末なお手本にすぎないもので、自分の心に聞いてみるのが何よりのお手本なのである。仮面を脱ぐ、裸の自分を見さだめ、そしてそこから踏み切る、型も先例も約束もありはしない、自分だけの独自の道を歩くんだ。自分の一生をこしらえて行くんだ。
人間はこういうものだと諦めて、奥義に閉じ籠り、悟りをひらくのは無難だが、そうはできないのが人間である。「万事たのむべからず」と見込んで出家遁世、よく見える目で自分の人生論を書くというのは落人のやることで、人間は必ず死ぬという事を良く思って書くことはない。
芸術は長く、人生は短いと言う。人間は死ぬ。ただし作品は残る。この時間の長短は人生と芸術との価値を図るものさしとはならないものだ。作家にとって大切なのは言うまでもなく自分の一生であり人生であって、作品ではなかった。芸術などは作家の人生に於いては、たかが商品にすぎず、又は遊びにすぎないもので、そこに作者の多くの時間がかけられ、心労苦吟が賭けられ、時には作者の肉を削り命を奪ふものであっても、作者がそこに没入し得る力となつているものはそれが作者の人生のオモチャであり、他の休養娯楽では補えないものだと俺は思う。
文を綴る事に意味はないが、人生を反映する鏡となるのが文なので、この上ない生き甲斐だと信じていたい。
プラトニック @yamamoto1
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