媚/美

 媚態は徳性であり、俺の勤労ですらある。そこから当然の所得をする。陽気な楽しい日々毎日の活気の為のものだから。その生活に於いて美しいもの、便利なもの、楽しいものを求めるのは人間の自然であり、それを拒み歪むべき理由はないと信じている。職場、学校でよくある勤倹精神だの困苦欠乏に耐える精神などというものが俺は嫌い。働くのは遊ぶためだと考えていて、上からの注意喚起には見向きもできないと思う。また、俺には家庭とか、貞操というものがない。それを守ることが美徳であり、それを破ることが罪悪だという観念もない。俺の欲するのは豪奢な陽気な日々で、陰鬱な生活に堪えられないだけ。


ーーーーーーーーーーーー


 日本では美しいものは風景で、庭などに愛情を傾けるのであるが、人間の通常の欲求が歪められ、人間的であるよりも諦観自体がすでに第二の本性と化した日本人が、人間自体の美よりも風景に愛情を托したのは当然であったに相違ない。しかし、人間にとって、人間以上に美しいものがある筈はない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る