不義

 愛したい、と言うと、なんとなくキザだ。そこで、俺はあなたが好きだ。と言う。その方が、リアルな重量があるような気がするから。

 要するに英語のラブと同じ結果になるようだけど、しかし、日本語の「好きだ」だけでは力不足な感じがして、「とても好きだ」と力むことになってしまう。

 恋愛というものは常に瞬間の幻で、必ず滅び、冷めるものだ、ということを知っている大人の心は不幸であり、不義だと思う。

 若い人たちは同じことを知っていても、情熱の現実の生命力がそれを知らないが、大人は違う。情熱自体が知っている、恋は幻だということを。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る