第29話 合体攻撃!

「なんだと!?」


「魔王アバドンは、勇者がどれだけミラベルを慕っているか、知っている。だから、イクスコムにミラベルの捕獲を要求しているの」


 イクスコムは、ミラベルを魔王の元へおびき寄せるための、兵隊だったのか。


 魔王アバドンは『勇☆恋』本編でも、ヘイトを一人で集めていた。

 かなりの、絶対悪だったなぁ。

 だからこそ、倒し甲斐があったが。


 対するイクスコムは、他の魔物に比べて殺意はさして高くない。

 ミラベルを連れ出すためなんだろうが、それでも脇が甘い気がする。

 そこが狙い目か。


「魔王とミラベルを融合しない唯一の手段は、先にこちらが合体することよ!」


「でも、合体って、どうやって?」


「念じるだけでいいわ。ベップ、もしかして、変な想像してない?」


「するよ!」


 絶対、そっち系をイメージしちまう!


「違うっての! 精神的な合体なの。ほら、背後霊を思い浮かべてみて」


 ああ、有名な能力モノ系のマンガみたいな感じか。


「意識を共有して、パワーもなにもかも二倍になるわ。じゃあ、がんばってね」


 それだけ言って、ピーディーは去っていった。

  

「よし、ミラベル! 【合体】するぞ!」


「えっ。合体!?」


「オレがお前と、意識を共有する。まあ、やってみればわかる!」

 

「うーん。わかった。【合体】!」


 オレは、ミラベルと手を繋ぐ。

 

 ミラベルの中に、オレの意識が溶け込んでいくのがわかる。


「よし、成功だ」


 オレは、ミラベルと視線も意識もすべて共有しているようだ。


 イメージとしては、TPSに近い。

 それこそ、ゲーム画面越しにミラベルを操作しているというか。


 なるほど、これが合体ってわけだな。

 オレが、ミラベルを自由に操れると。

 

「ミラベル、オレに意識を預けてくれ。オレがお前を導いてやれる!」


「わかった。お願い! あの子を救ってあげて!」


「よっしゃ! 任されたぜ!」


 敵の親玉だろうと、ヒロインだってんなら救ってやろうじゃないの!


「なにをするかと思ったら、背後霊化するなんてね」


 やっぱり、相手にはこっちの状態がわかるのか。


 相手はもしかすると、運営側みたいな視点なんだろう。

 

「なにをやっても、同じことよ! おとなしくミラベルをこちらに明け渡しなさい!」


 イクスコムが、ヒュドラを操りだす。


 あいつの攻撃は、見た目に反して精度が低い。広範囲の攻撃判定に甘えすぎだ。


「ミラベル。ダメージを受けるギリギリの境界を見定めて、遠方から処理をするんだ。ムリに踏み込もうとするな!」


「はい! 【ライトニング・アロー】!」


 ミラベルがステッキから、雷の矢を放つ。

 威力は低いが、的確にイクスコムへダメージを与える。

 相手の集中力を削ぎ落とすには、こちらがチマチマと攻撃してやればいい。


「緩慢だった動きが、正確になっている!?」


 イクスコムが、苛立っている。

 こちらの攻撃が当たらず、自分だけダメージを受けるってのは、かなりのストレスらしい。


「違うね。お前の方が雑になったんだ!」


 こちらが、お前さんの意識を乱しているからな。


「おじさん、すごい。わたしだったら、こんな戦い方はできないよ。突っ込んじゃう」


 オレも、ジャストガードが正解だと思っていた。


 しかし、一発だけならジャストガードは可能であるが、連発は辛い。

 一度ジャストガードすると、硬直が入るからである。

 それで、「ジャスガは、正規の攻略法ではない」と睨んだ。


 となれば、死角からの反撃が、いいのかなと。


 相手の攻撃が当たるギリギリのラインを見極め、インパクトの瞬間にカウンターをぶちかますのだ。


 相手も、ヒュドラを地面に突っ込ませた際に、硬直が入るからである。


 ヒュドラの攻撃は、最大で三連続だ。


 その三発とも、カウンターを仕掛けてみた。


 大正解だったようである。


 オレも背後霊ながら、攻撃に回っていた。


 ミラベル、オレ、ミラベルの順番で、カウンター攻撃を繰り出す。

 


「ときには、ガマンの相撲が必要ってわけだ」


「スモウ?」


「こっちの話だよ。さて、本気の反撃と行きますか!」

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