第28話 最強の技は……合体!?

 魔法少女ルックのミラベルと、ラストダンジョン【イクスコム城】へ向かう。



 

【最終ミッション:魔王の娘 討伐】


 魔王の娘である、【イクスコム・アバドン】とバトルしていただきます。


 このミッションを終えると、ゲームクリアとなります。


 

 クエストログも、あっさりだ。


 魔王の城に近づくにつれて、空が紫色に染まっていく。

 本家ゲームと、同じ演出だ。

 

 ただ、イクスコム城はお化け屋敷みたいな様相である。

「子どもが考える、恐ろしい化け物の巣」という感じに、アレンジされていた。

 本家魔王城は、もうちょっと本格的である。

 こちらは、テーマパークのアトラクションのようだ。


「ベップおじさん」

 

「ああ。魔王の娘メスガキは、この中にいる」


 扉を開けて中に入ると、すぐに王座に辿り着いた。

 細かい過程をすっ飛ばして、いきなりボス部屋へワープさせられたらしい。

 まあ、城も小さかったし、特に真新しいイベントもなさげだった。

 最強装備も、手に入れているしな。


「よく来たわね。逃げずに、このイクスコムと最後の戦いにくるとは」


「魔王の好きなようには、させないよ!」


 ミラベルが、ステッキを構える。


 対するイクスコムも、黒いドレスアーマーを着込んでいた。

 あれが、彼女の最終装備か。

 各部位に、歴代のボスキャラの特徴を持たせている。


「くらいなさい! 【スパイダーネット】! からの、【ヒュドラ】!」


 クモの糸で足を絡め取って、オロチの炎でこちらを火炙りにしようとした。


「ミラベル、鬼火で対抗!」


「はい!」


 足に絡みついた糸を、鬼火で焼く。

 続いて、オロチの炎をジャストガードで跳ね返した。


「反撃開始だぜ!」


「【ハートビート・キック】!」


 ミラベルが、ハート型のファイアボールを撃ち込む。火球に追いつくほどのダッシュ跳躍をして、ケリを放った。足刀蹴りの状態で、火球と一体になる。

 格闘と火属性魔法の、合せ技だ。


 さらに、


「こいつはどうだ? 【トルネード・スピン】!」


 ミラベルの周囲に竜巻を起こす。


 ハートビートが、回転を始めた。


 キックを止めようとする糸を引き裂き、ヒュドラの身体もズタズタにしていく。


「ぶちかませ、ミラベル!」


「てえええい! えっ!?」


 だが、ミラベル渾身の蹴りも、巨大なカメのシールドによって阻まれた。


「やるわね。防御モードに設定したのに、破壊されるなんて」


 カメの甲羅型シールドが、粉々に砕け散る。

 同時に、イクスコムを包んでいたドレスアーマーも、吹っ飛んだ。

 

 イクスコムは、いつものボンテージ姿に。

 しかし、身を挺した防御によって、イクスコムにダメージは入っていない。


「本番は、これからよ!」


 イクスコムの戦闘スタイルが、変わった。

 ヒュドラに似たオーラを伸ばし、ミラベルやオレに向けて撃ち込んでくる。

 第二形態があるのか。


「それぇ!」


 イクスコムが、怒涛のような攻撃を繰り出してくる。

 見た感じヒュドラに近いが、攻撃力はヒュドラなんて比ではない。

 八回連続攻撃によって、オレたちは防御を余儀なくされた。


 オレが防いだとしても、ミラベルにまで攻撃が振ってきてしまう。


「わあああ!」


 ミラベルの脇腹に、ダメージが入ってしまった。


「ベップおじさん、あの子、めちゃくちゃ強いよ!」


 自分に治癒魔法を施し、ミラベルが立上がる。

 

「攻撃特化の分、防御は紙切れ同然になっているはずだ。やっちまえ!」


「でも! うわ!」


 絶好のチャンスだったのに、ミラベルは攻撃を外してしまった。

 

 ミラベルの攻撃には、ためらいがある。

 攻めきれていない。


「どうしよう。思っているように戦えないよ。あの子だって、魔王の力でこんなことをしているだけだって、わかっちゃった」


 ミラベルは、優しい子だ。本心から悪意を向けられていないとわかると、たちまち戦えなくなるとは。


「そうか。どうすれば……」


 オレのスキルログに、とんでもない技の内容が。


【合体】


【合成魔法】と【アイテム合成】、両方のスキルを会得した者にだけ扱える、究極の技。


 ミラベルと、合体できる。



 おいおいおいおい! 冗談だろ!?


 オレとミラベルが、一つになるなんて。


『なにを、グズグズしているの、ベップ? 早く、ミラベルと一体になるのよ!』


 オレを召喚した妖精「ピーディー」が、再びオレの前に。


「だって、一つになるんだぜ? こんなの、実質結婚みたいなもんじゃないか!」


「ちょっと発想がキモいわね。でも、合体しないとあいつは倒せないわよ。ネタバレすると、あんたたちが合体しないと倒せないような設定なの」


 魔王アバドンが、イクスコムをそう設定したらしい。

 オレの性格を察知して、「どうせできないだろう」と見越したからだ。


 ちくしょう。そのとおりだぜ。魔王のやつ、まるでオレのようなヤロウだ。


「魔王の目的は、ミラベルと【合体すること】よ!」


「子作りするってことか?」

 

「違うわよ! 合体をそういう解釈をしていたの!?」


 オレの発想力は、健全な成人男性なんだよ。

 

「いい? 魔王アバドンの目的は、あの子の身体を乗っ取るつもりなの!」


 勇者に、自分を攻撃させないために。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る