第26話 アイテム合成と、温泉イベント
なんと、エデルがミラベルに交際を申し込んできた。
マジか。そっちのケもあったとは。
「姫よ、お考え直しを。そもそもあなたの美少女好きが、この手の混乱を招いたと」
「わかっている。だからわたしは、夫も妻も大事にする姫騎士を目指したのだ」
エデルは、かなりクセのあるヒロインだったようだ。
さて。ミラベルは、どう出るだろう?
お姫様から求婚されるなんて、めったに起きないイベントだしなあ。
「ごめんなさい」
ミラベルは、きっぱりと断った。
王族相手でも、ミラベルは考えを曲げない。
そりゃあそうだ。魔王討伐に出た勇者の手助けを、人知れずやっているんだ。
恋愛にうつつをぬかしているヒマは……。
「わたし、ベップおじさんが好きなんだ!」
おお、ありがたい!
「おじさんのお嫁さんになるから、エデルちゃんのお嫁さんにはなれません」
胸がジーンと、熱くなる。
かつてミラベルが、ここまでストレートに愛を語ってくれたことがあっただろうか。
戦闘のパーティとしか、思われていないんじゃないかって、何度も考えた。
しかし、ミラベルはオレに好意を持ってくれていたのだ。
だがこれで、オレは斬首ってことになったりしないよな?
「わかった。ではせめて、一緒にシバレリアの街を見て回ってくれないか? 街の近況なども知りたいし、キミを連れて歩きたい」
「それくらいなら、いいよ」
おっ。やはりクエストログが出てきたな。
*
【デートイベント】
エデル王女と、街を回りましょう。
一晩かけて街を歩き、被害状況などを調べます。
夜は、社交界デビューもしましょう。
*
さすが王族とのイベントともなると、社交界などもあるのか。
みんなで銀狼の背に乗って、シバレリアまで戻る。
エデルの案内のもと、街を回ることになった。
ドワーフたちは器用で、街が多少ぶっ壊されても自力で修繕している。
「ベップ、ミラベル。ありがとう。お礼として、二人に【アイテム合成】を教えよう」
待ってました。
二つの武器を持って、エデルが説明をする。
オレの眼の前に、鍛冶用のログが出てきた。
厳密には、鍛冶に使うセットが目の前に突然出てきた感じである。
「アイテムには、属性や特性がある。それを抜き出して、別のアイテムに移すイメージを」
オレはアイテムのログが勝手に出てくるから、属性・特性を移動させるだけでいい。
鍛冶のログにセットして、武器を叩く。
特性を抽出したい武器を、破壊した。オレの場合は、店売りの杖である。
武器の破片から、小さな青い石が出てくる。
「それが、要素だ。では次に、石を別の武器に移す」
この場合、石と武器の上に置き、一緒に叩けばいいらしい。
「できた」
オレは、ソードオフと杖を合成させて、より強い魔法弾を撃てるようにする。
こういうのって、ゲームだと成功率とかがあるんだよなあ。
だが【勇☆恋】は、絶対に成功するみたいだ。
どこまでも、親切設計である。
しかし、ミラベルって、どうやって想像するんだろう?
「大丈夫か、ミラベル?」
「平気。すぐにわかったよ」
野生の勘みたいな感じで、ミラベルはスイスイっとアイテム合成を覚えてしまった。
「おじさん、見てこれ」
ミラベルは、角笛とハンマーを合成させていた。
他にも、金属ヨロイをキグルミと組み合わせる。
オーバーオールを着たキグルミが、完成した。
「かわいさが激増ししたな!」
「わーい」
ミラベルが、アイテム合成の成功に歓喜する。
その後、社交界に招かれた。
オレはダンスホールの隅で、ミラベルの着替えを待つ。
白いタキシードを、何度も確認した。
貴族の軍服風のエデルに手を引かれ、ミラベルがダンスホールの階段から降りてくる。
「おおお、キレイだ。ミラベル」
髪を整え、ドレスに身を包んだミラベルが。
天使どころか、女神とさえ思える。
「ベップおじさんも、めちゃかっこいいよぉ」
ドレス姿のミラベルと、ダンスを踊った。
オーケストラに合わせて踊るなんて初めてだったが、どうにかうまく踊ることができたようだ。
こんな民間人が踊っていいものかと思っていたが、国を救った英雄として、オレたちは歓迎された。
ダンスを終えて、エデルがオレたちを城の裏手に連れ出す。
「城の中に、温泉がある。そこに連れて行ってやろう」
「温泉かー。いいなー」
異世界にも、温泉みたいな場所があるんだなぁ。
「あああ。生き返るなあ」
さすが異世界の温泉ともなると、温かいだけではない。
魔力がみるみる、回復していく。
ずっと戦い詰めだったので、わずかな傷や痛みなどが残っていたようだ。
身体が癒やされ、肩こりも解消されていった。
「おじさん……」
「うわ!」
なんと、バスタオル一枚のミラベルが隣に!
「ここって、男湯だよな!?」
看板を見て、たしかに男湯だと確認したはずだが。
「えっとね。ここは王族専用のお風呂らしくて、男女兼用なんだって」
更衣室だけ、男女に分かれているらしい。
「エデルは、一緒じゃないのか?」
「向こうに入っている」
「そうか」
なにかしゃべってないと、気まずいんだが。
ミラベルの全身は、湯気でうまく見えなかった。
これはむしろ、ありがたい。
もし全身がバッチリ見えるようなら、オレは理性を保てるかどうか。
ミラベルが、オレのすぐ側に浸かった。
肩がピトッと、くっついている。
「エデルちゃんから聞いたんだけど、もう魔王の城は目の前なんだって」
「うむ……」
もう、このエンドコンテンツも終わりなんだな……。
(第五章 完)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます