第五章 敵はヒロイン!? 初の攻略対象との戦闘?

第21話 北の大地の姫騎士

 船を乗り継いで、山岳地帯にある王国に到着した。

 氷を割って大陸を目指すなんて、ロマンがあって最高だったな。

 

 体温調節の魔法で多少はマシと言っても、やや肌寒い。

 息を吐くと、すぐに白くなった。


 このシバルキア地帯は、ドワーフが収めているらしい。


 たしかに街に入ると、強い酒の匂いがあちこちから漂う。


「ベップおじさん、この防具。すごいよ」


 ミラベルが、店のショーウィンドウを指差す。


 たしかに店売りでさえ、オレたちが手に入れてきた防具より性能が上だ。

 明らかに、能力が違いすぎる。 


 強い武器と防具を揃えるなら、ここだろう。


「それにしても、デカいな」


 どの防具も、やたらゴツゴツとしていた。ドワーフが装備するためか。

 トゲのある棍棒や、両手持ちの斧などでが店にある。

 誰が持つんだよ、というゴツい剣まで。


「ベップおじさん。ドワーフさんたちを見ていると、始まりの街を思い出すよね」


「ホントだなぁ。懐かしい」

 

 たしか、「始まりの街」のドワーフおっさんは、ここの出身だったよな。


 手頃な店に、始まりの街にいたおっさんの名前を尋ねてみる。


 たしかにおっさんは、ここから旅に出たらしい。


「どっちかってーと、冒険者だったよ。この地でひたすら鉄を打つより、旅と客商売がスキだったな。あのヤロウ、ようやく腰を落ち着ける場所を見つけたんだな」


 ドワーフの店主が、しみじみと語った。

 

 専門的な知識は持っていたが、彼は純粋な強さより、客との相性を追求していたという。

 たしかにあのおっさんは、客にマッチした装備を目指していた気がする。


「ウチだって負けねえぜ」


「よし。見せてくれ」

 

 ドワーフ製の装備を、見させてもらう。

 

 たしかにどれも、恐ろしく強い。

 しかし、ミラベルが装備するにはゴツすぎる。他の店でも思ったが、女子が着るにはかわいくない。

 ミラベルの身体サイズに合う装備は、たしかにあった。

 といっても、分厚い胸当て程度である。

 ちっともカワイくない。

 そのための、【イリュージョン】なんだろうけど。

 装備したとしても、重量の関係でスピードが犠牲になるんだよなぁ。

 これを、どうしたものか。


 オレたち魔法使い職には、あまり縁がなかったかも。


「見て、おじさん。【バトルハンマー・レベル一五】だって」


 攻撃力だけで言えば、ミラベルが持っている角笛の二倍はある。

 しかし、重量がなあ。

 女の子には、持ちづらいかも。 


 いよいよ、魔法職オンリーではでは辛くなってきたか。


 とはいえ、応用が効く魔法職を手放す気はない。


「もっと、女性が持っても違和感のない装備品はないか?」


「ないよ。今はね」

 

 思わせぶりなセリフを、店主は言う。

 

「女の子向けに作った装備も、昔は揃っていたんだよ」


「マジか。見せてほしいんだが」


「今はムリなんだ」


 ドワーフの店主は、腕を組む。


「どうしたってんだ?」


「実は、ドワーフの女騎士が、魔王の配下になっちまったんだ」


 詳しくは、冒険者ギルドで聞いてくれとのことだ。


 ギルドに入る。


「ようこそ。ギルドへ」


 女性のドワーフから、依頼書を見せてもらった。

 

「デカい仕事なら、巨大オオカミの討伐くらいかね? これより大きな仕事だと、女騎士の討伐ってのがある。でも、みんな逃げ帰ってきたさ」 

 

 女性ドワーフに、事情を聞く。

 

 その女性騎士は腕も立つどころか、鍛冶師としての腕前も相当だった。


 しかし呪われたアイテムを装備させられ、魔王の傀儡になってしまったらしい。


「率先して、魔王討伐に乗り出した英雄だったんだけどねえ」

 


 ここで、クエストログが。




【クエスト:悪堕ちした、雪の姫騎士】


 ヤマト国の攻略を優先したことで、この雪山を納める姫騎士【エデル・ワイス】が、魔王の手に落ちました。

 




「なんだと、くそ!」


 どうして、「ヤマトとシバレリアのどちらを優先するのか」といった選択肢があるのか、と疑問に感じていたけど。


 こういうことだったのか! 


 どちらかを攻略したら、どちらかの国は敵の手に落ちるってわけか!


 何も考えていなかった。


 そうはいっても、シバレリアを優先していたら、ヤマト国のキョーコが悪堕ちしていたわけだし。

 

 

「ベップおじさん、どうしたの?」


「いや、なんでもない」


 オレは、平静を装う。


 ヤマト国とシバレリア、どちらを先に攻略するかは、ミラベルが決めた。

 だが、攻略するか聞いたのはオレだ。


 ここでミラベルに事情を説明したら、彼女は責任を感じてしまうだろう。


 オレはミラベルに、どちらかを選ばせてしまった。

 シバレリアがこうなった責任は、オレにある。


 とにかく、クエストログの続きを読む。


* 



 姫騎士エデルを助ける手立ては、姫騎士を操る魔物【妖術師】を倒すことです。

 しかし、ミラベルが妖術師を相手にしている間、プレイヤーであるあなたがエデルを相手しなければいけません。


 



「よし!」


 救う手立てはある、と。


 しかし、街にモンスターが現れた。

 

 

「大ウルフが現れたぞ!」



 マンモスくらいの大きさを持つウルフが、大量のシロクマを引き連れて街に向かっている。


 あれが、中ボスか。やってやるぜ!

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